2024年10月29日
最近、⼀部のメディアにおいて、消化器内視鏡クリニックを舞台とし、消化器内視鏡施行時の鎮静目的で使用されるプロポフォールを、娯楽目的の使用とも取れる演出がなされた番組が配信されました。非常に問題のある内容と考えます。
この件につきましては、日本麻酔科学会からもプロポフォールの不適切使用に対する厳重な注意喚起が発信されています。日本消化器内視鏡学会と致しましても、本来は安全かつ効果的な内視鏡診療のために用いられるプロポフォールが、このような形で使用されたことに深く憂慮しております。本年公表しました「消化器内視鏡関連の偶発症に関する第7回全国調査報告2019〜2021年までの3年間」では、鎮静薬による呼吸抑制や血圧低下などの偶発症の発生が他の偶発症に比して多いことも示されており、消化器内視鏡診療における鎮静については、厳格に実施されるべきものです。
本学会による「内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン(第2版)」は、鎮静薬使用にあたっての安全性の確保、鎮静薬使用の有用性および適切な鎮静薬の選択について現時点でのエビデンスを基に示しており、プロポフォールに関しては2つのクリニカルクエスチョン(CQ)で解説しています。ここでは、非麻酔科医による使用は、米国麻酔科学会(ASA)の全身状態分類システムにおけるASA-PS 分類Ⅰ(健康)またはⅡ(軽度の全身疾患)の患者さんに限れば、気道確保に十分修練を積んだ医師による使用は可能としています。しかしながら、プロポフォールによる鎮静が内視鏡室で非麻酔科医によって安全に行えるかどうかは、現時点での日本の医療現場、教育体制および現状の医療制度、医療政策では明言はできない、とも記しています。すなわち、⼈⼯呼吸管理が可能な環境で使⽤されることが求められます。また、本学会が発行している「消化器内視鏡ハンドブック(改訂第3版)」においては、「プロポフォールを使用した鎮静には内視鏡施行医とは別に、麻酔技術に習熟した医師が専任で鎮静管理を行うことが必要」と明記しています。
日本消化器内視鏡学会の会員の皆様、そして、消化器内視鏡診療に携わられている医師、関係各位の皆様におかれましては、ガイドラインに従って適切に鎮静薬を管理・使用し、いかなる場合にも不適切な使⽤は行わないよう強く要請いたします。
2024年10月
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
理事長 田中 信治
医療安全委員会担当理事 入澤 篤志