2019年4月17日
今年が第2回目となるESGE Days 2019が、4月4日から6日、チェコのプラハで開催された。第1回目(ブタペスト)の参加者数は約1,800名であったが、今回は97カ国から約2,700名と急増、日本からの参加者は42名と、アジアでは韓国に次いで2位であった。近い将来、5,000名規模の参加者が集まる国際的な消化器内視鏡学会に発展していくものと推測している。実際にこれまで2011年から8年続けてきたUEGW期間中のESGE-JGES joint symposiumは、2021年からESGE Daysに完全移行することが決まった。昨年同様に今年もESGE-JGES、APSDE-JGES joint symposiumが行われ、活発な議論がなされた。また2日間にわたりメインホールとプラハ市内の病院との中継でライブが行われ、井上晴洋先生、斎藤豊先生が大活躍されていた。
ここでは、今年の主なトピックスをいくつか紹介したい。
昭和大学横浜市北部病院消化器センターの森悠一先生が、ESGE Innovation of the year awardを授賞された。ESGE Innovation of the year awardとは、1年間で最もイノベーションを起こした内視鏡関連医療機器の開発研究者に贈られる賞である。森悠一先生らが研究開発に関与したEndoBRAIN(製造:サイバネットシステム株式会社・販売:オリンパス株式会社)が開発研究の対象である。EndoBRAINは人工知能(AI)を利用して大腸ポリープの病理診断をリアルタイムで予測する診断支援システムであり、2018年12月に薬事承認を取得、2019年3月から発売されており、世界初の薬事承認を取得したAI内視鏡医療機器という点が高く評価され、受賞に至った。受賞記念講演は「EndoBRAIN -Artificial intelligence system that supports optical biopsy of colorectal polyps」という演題で行われた(写真1)。
また、国立がん研究センター中央病院内視鏡科の阿部清一郎先生は昨年に続いて、2年連続Endoscopy Best Reviewer賞受賞の快挙を達成された(写真2)。Endoscopy誌では毎年5名のBest reviewer賞が選出されるが、2年連続の受賞は通算2人目であり、2回以上の受賞は日本人のみならずアジア人初の偉業であった。なお、阿部清一郎先生は、すでにGIE, Video GIE, DENなどからもReviewer awardを受賞されている。
今年は、Endoscopy発刊50周年という記念すべき年であり、記念講演と特別なレセプションが行われた。とくに治療内視鏡学における権威でドイツHamburg大学Eppendorf病院内視鏡科でご活躍されていたNib Soehendra先生が講演され、最後にはstanding ovationで会場からの拍手が止むことがないほどであった。Soehendra先生の御功績は内視鏡的胆道ドレナージ、ヒストアクリルを用いた静脈瘤硬化療法など数々の治療内視鏡手技を開発されたことはもちろん、世界中、特にアジアから数多くの内視鏡医を受け入れて指導され、現在世界で活躍する多くの内視鏡医を育て上げられたことにある。日本との縁も深い先生でもあり、私自身も感銘深く講演を拝聴していた(写真3)。
なお、来年のESGE Daysは2020年4月23日~25日、ダブリンで開催される。
文責:田尻久雄
(写真1) (写真2)
(写真3)Nib Soehendra教授(中央)