(特にクリニックや比較的規模の小さな病院での内視鏡検査を想定した場合)
日本消化器内視鏡学会、2020年4月16日(第1版)
新型コロナウイルスが大きな問題となっている現況での消化器内視鏡診療にあたっては、第一線専門施設では本学会の提言を含めて種々のガイドラインや各施設内の指針に準じて万全の体制で臨まれていると存じます。一方、一般のクリニックや比較的規模の小さな病院では対策に苦慮されているとのお話を多く耳にします。このような状況に鑑み、日本消化器内視鏡学会では、そのような先生方への情報提供として「新型コロナウイルス感染症に関する消化器内視鏡診療についてのQ&A」を作成いたしました。なお、この内容は一般のクリニックや小規模病院のみならず、幅広いご施設で参考としていただけるものと考えております。
なお、このQ&Aは本学会が示したひとつの目安であり、それぞれの施設の対応を制限するものではありません。この指針を参考にしていただき、各地域の感染状況や方針、各施設の状況に応じて具体的に適切な対応策を決めていただくことが重要です。
2020年4月16日
一般社団法人日本消化器内視鏡学会
理事長 井上 晴洋
医療安全委員会 委員長 入澤 篤志
副委員長 古田 隆久
I. はじめに
II. 新型コロナウイルス感染症に関する消化器内視鏡診療についての Q&A
CQ2. すでに検査予約済みの内視鏡検査の実施に関しての対応
CQ9. 患者が来院した際に、新型コロナ感染症に対して事前に問診すべき項目
CQ10. 予約患者に対して、事前にCQ9の質問を事前に行うことは推奨できるか
CQ12. 新型コロナウイルス感染の可能性が低いと判断された時の対応
CQ13. 問診にて感染リスクが低いと判断された患者の検査当日の同意取得
CQ14. 感染が疑わしいと考えられた患者への検査当日の同意取得
CQ18. 内視鏡検査実施するするスタッフとしての基本的な考え方
CQ22. 内視鏡検査室の人流れ、人員について工夫すべきこと
CQ23. 感染確定・疑い患者に対する緊急内視鏡検査を施行する場合の対応
CQ24. 検査の付き添いの家族への検査室への入室で注意すべきこと
CQ25. 感染確定・疑い患者に対する緊急内視鏡検査施行後における術者の留意点
CQ26. 感染確定・疑い患者に対する緊急内視鏡検査施行後における患者対応の留意点
CQ27. 感染確定・疑い患者に対する緊急内視鏡検査施行後の内視鏡機器の取り扱い
CQ29. 検査終了後の処置具(critical器具)の洗浄・消毒
CQ30. 感染確定・疑い患者に対する緊急内視鏡検査施行後の検査室への処置
CQ31. 感染確定・疑い患者に使用したスコープ以外の機器の取り扱い
CQ32. 消毒用のアルコールが入手困難な場合のアルコールフラッシュの代替方法
CQ34. 感染確定・疑い患者に対する経験の浅い内視鏡医による施行の是非
今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に関して、消化器内視鏡診療の実施については、国・厚労省の方針や各施設の状況等を考慮した対応が求められています。2020年4月8日には新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づく緊急事態宣言が発令され、依然として厳しい状況が続いています。
日本消化器内視鏡学会は現在のCOVID-19の状況に鑑みた内視鏡診療について、『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への消化器内視鏡診療についての提言』を発表し、2020年3月25日の第一版発表以降、本邦における状況に鑑みたアップデートを行ってまいりました。現在では第三版となっております(4月10日更新)。
このたび、本学会からの提言に基づいて、消化器内視鏡に関わる先生方および関連するスタッフの方々にむけた、具体的な対応案を作成いたしました。特に一般のクリニックや比較的規模の小さな病院での内視鏡検査を施行している先生方にむけてQ&Aの形でご提示いたします。「クリニックや小規模の病院」と申しましても観察のみの内視鏡検査から、ポリープ切除や止血操作の治療内視鏡を施行する施設もありますので、各御施設の実態を勘案してご判断ください。各御施設において十分な感染対策が困難な場合には、実施可能で感染対策がとれている施設にご紹介されることが肝要と考えます。
なお、この内容は、一般のクリニックや比較的規模の小さな病院のみならず、幅広いご施設でご参考としていただけるものとして作成しております。
CQ1. 新規の内視鏡検査の予約に際して留意すべき点はありますか? |
Ans. 無症候性の感染者の報告も相次いでいますので、 緊急性の無い内視鏡検査は延期を考慮することを推奨します1–4。特に緊急事態宣言が発令された都府県においては、感染拡大を防ぎ、医療従事者を守るためにも強く推奨いたします。なお、新型コロナウイルス感染は地域での差が見られており、その地域ごとの状況に応じての対処が必要なのは言うまでもありません。
CQ2. すでに検査予約済みの内視鏡検査に関してはどのように対応すべきでしょうか? |
Ans. CQ1と同様に、緊急性のない消化器内視鏡検査・治療に関しては延期を考慮することを推奨します2,3。被検者に電話や郵便等で連絡し、事情を説明し来院を控えるよう指示することが肝要と考えます。
CQ3. 延期してよい内視鏡検査にはどのようなものがありますか? |
Ans. 以下の検査は延期を考慮すべきであると考えられます5。
CQ4. 延期できない内視鏡検査にはどのようなものがありますか? |
Ans. 以下の場合は延期すべきではないと考えます1,3,5。
これらの検査・治療の多くはクリニックで施行する頻度は低いと考えられますので、実施可能で感染対策がとれている施設に紹介されることが肝要と考えます。その際にはしっかりと新型コロナウイルス感染症に関する問診をとっていただいて、その内容を紹介先にお伝えいただけると病診連携がスムーズに運ぶと思います。
CQ5. 検査の前に患者に対応するスタッフ(受付等)でも防護策は必要でしょうか? |
Ans. 受付のスタッフもマスクと手袋を着用し、可能であれば、フェースシールドまたはゴーグル(アイシールド付きマスクも可)をすべきと考えます。目、口、鼻の防護が肝要です。コンビニエンスストアやスーパーマーケットのレジなどでみられるビニールカーテンの設置も有用かもしれません。
CQ6. 患者待合での注意事項について教えてください。 |
Ans. 以下を参考にしてください。
CQ7. 待合室の環境管理での注意事項について教えてください。 |
Ans. 以下の点に注意してください。
CQ8. 内視鏡検査で来院した患者に伝えるべき事はありますか? |
Ans. 以下の内容をお伝えください。
CQ9. 患者が来院した際に、新型コロナウイルス感染症に対して事前に問診すべき項目とその時の注意点を教えてください。 |
Ans. 問診票での質問項目としては下記の項目を含めることを推奨します。
1.患者の状態に関する項目
①のどの痛み、咳や痰などの風邪の症状はありますか?
②2週間以内に、37.5℃以上の発熱がありましたか?
③疲れやすい、倦怠感などの症状はありますか?
④味覚や嗅覚に異常を感じますか?
⑤4−5日続く下痢等の消化器症状はありましたか?
⑥現在の体温は?
2.感染リスクに関する項目
①2週間以内に感染者が急増している地域(特に緊急事態宣言対象都府県)を訪問したり、そちらから来られた方と接触したことがありましたか?
②2週間以内に「新型コロナウイルス感染者やその疑いがある人」、または、「そのような人と接触した人」との接触がありましたか?
③2週間以内に海外に渡航されましたか?
④2週間以内に「海外から帰国された方」や、「そうした方と接触した人」との接触がありましたか?
⑤2週間以内に、ライブハウス等の人の多いお店や接待を伴う外食店に行かれたことがありましたか?
内視鏡検査前に、当日に検温することが肝要です。問診や体温測定の結果、すべての項目で該当しなければ感染の可能性が低いと判断してください。1項目でも該当する場合は感染が否定できないと考え、各施設の規則に従って対応してください。
なお、直接問診する場合には、1m以上の距離をあけて、マスクやフェイスシールド等を着用するなど個人防護をした状態でお願いします6。
CQ10. 予約患者に対して、来院前にCQ9の質問を事前に行う事は推奨できますか? |
Ans. 来院前に問診にて感染リスクがわかれば、感染リスクのある患者の来院を防ぐことができます。この観点から、可能であれば来院前に電話等によりCQ9で示した問診を行い、感染のリスクが疑われた場合は、検査の延期をご検討ください6。延期できない場合には、実施可能で感染対策がとれている施設に紹介することご検討ください。自院で実施される場合には自院の感染防護策を確認するとともに、患者さんには内視鏡検査をうける当日までの毎日、体温と各種症状の記録をつけていただくことを推奨します。新規の予約時には体温を含む症状の日誌( 参考1_新型コロナウイルス感染症 内視鏡検査前症状日誌 (案))を渡し,それを検査日に持参してもらってください。
CQ11. 問診や体温測定で新型コロナウイルスの感染が否定できませんでした。どのように対応すべきでしょうか? |
Ans. 以下の対応を推奨します。
CQ12. 問診や体温測定で新型コロナウイルス感染者の可能性が低いと判断されました。どのように対応すべきでしょうか? |
Ans. 内視鏡検査室や待合室にいる間にウイルスに曝露する可能性があることを伝えた上で、本人の希望がある場合には検査を行ってください。なお、患者の状態や検査内容によっては他施設への紹介をご検討ください6。
CQ13. 問診にて感染リスクが低いと判断された患者の検査当日の同意取得は通常どおりの対応で宜しいでしょうか? |
Ans. 無症候者でも感染例がいることが報告されております。通常の内視鏡検査は可能と考えますが、同意を取る際には、マスクを着用し可能な限りの距離を保ってください。なお、地域や施設の状況に応じて、内視鏡検査室や待合室にいる間にウイルスに曝露する可能性についての同意をいただくこともご検討ください。
CQ14. 感染が疑わしいと考えられた患者からの検査当日の同意の取り方について教えてください。 |
Ans. 感染が疑わしいとされた患者で検査を施行すると判断した場合、同意書のサインには使い捨てのペンを使用して、マスク、フェースシールドと手袋を着用したスタッフが対応する必要があります1。
CQ15. 内視鏡検査前の前処置に関して注意点を教えてください。 |
Ans. 以下の点にご注意ください。
CQ16. 感染リスクの低い患者での前処置での防護策はどうしたらよいでしょうか? |
Ans. 無症候の感染者もいることが知られており、スタッフは専用スクラブ、サージカルマスク、ガウン、手袋、フェイスシールドまたはゴーグル(アイシールド付きマスクも可)、さらにキャップを着用することを推奨します。
CQ17. 感染リスクが疑われている患者に対する前処置はどのようにすべきでしょうか? |
Ans. 前処置室への患者出入においては、各患者の手指消毒などをしっかりと行うことを推奨します。また、前処置を行う際にはCQ16の防護に加えて、N95のマスクを使用するなど、前処置における感染の危険性を十分考慮ください。内視鏡の必要性を判断し、他施設への紹介もご検討ください。なお、咳嗽誘発、エアロゾル発生を防止する観点から、スプレータイプでの咽頭麻酔は行わず、ゼリー・ビスカス等での対処がよいと思います。
CQ18. 内視鏡検査を実施するスタッフとしての基本的な考え方を教えてください。 |
Ans. やむを得ず内視鏡検査を実施する場合では、誰もがこのウイルスを保有している可能性があるとして対応してください。感染しないための個人防護策、感染させないための対策等々に対して、各施設のルールを遵守してください。特に目、鼻、口の防護が重要です。内視鏡室に入るスタッフの人数は最小限としてください2,6,8。このことは、防護具不足対策にも繋がります。
内視鏡検査に関わる全スタッフが各施設でのCOVID-19対策の取り決めついて十分に理解している必要があります9。
CQ19. 内視鏡検査はなぜ感染リスクを高めるのでしょうか? |
Ans. 新型コロナウイルスは気道分泌物および糞便から分離されます。そして、飛沫やエアロゾルを介しての感染が考えられます。内視鏡検査時には、上部消化管内視鏡では患者の咳き込みや嘔吐反射の際に、また、下部消化管検査ではガス排出時などに、ウイルスを含む⾶沫やエアロゾルが拡散し、これらを介した感染が起こりえます10。その他、ウイルスが付着した手や手袋等から直接あるいは間接的に⽬、⿐、⼝の粘膜に付着する事もあり得ます。検査後のスコープや使用したその他の機器も感染源となり得ます。また、検査室に設置してある電子カルテ等のキーボードも感染源になる可能性もあります。
CQ20. 内視鏡検査スタッフの個人防護策について具体的に教えてください。 |
Ans. 新型コロナウイルス感染症では⾶沫感染予防策と接触感染予防策を講じる必要があります。以下の点をご考慮ください5,8,11。
CQ21. 内視鏡検査スタッフの健康管理としてすべきことがあれば教えてください。 |
Ans. 以下の内容を推奨します。
CQ22. 内視鏡検査室の人の流れ、人員について工夫すべき事があれば教えてください。 |
Ans. 内視鏡検査室への人の出入を最小限にすることに努め、また、感染例や感染の可能性の高い症例に対するマニュアル(患者の待合での場所、リカバリー室での場所、患者の動線等々)を作成しておくことが肝要です6。特に、感染リスクの高い患者の動線については、予め施設内で決めておくことが必要です(ゾーニングの推奨)。また、検査に関わるスタッフも最小限にすることを推奨します。
CQ23. 感染が疑われる患者や感染確定患者の緊急内視鏡検査を施行する場合にはどのように対応すべきでしょうか? |
Ans. 以下の対応を推奨します。
CQ24. 検査の付き添いの家族への検査室への入室に関してはどうしたらよいでしょうか? |
Ans. 付き添い者も術者と同等レベルの個人防護策を講じる必要がありますが、個人防護具には限りがあります。また、付き添い者も感染リスクを負うことになりかねません9。別室でのモニターがあれば、それを活用したり検査後の画像を紹介するなど施設の状況に応じた対応をお願いします。どうしてもという場合でも1名を限度とすべきです。付き添い関しては、検査終了後のリカバリー室での感染リスクにも配慮してください。
CQ25. 感染が疑われる患者や感染確定患者での緊急内視鏡検査の施行後の術者が留意すべきことについて教えてください。 |
Ans. 検査後も引き続き感染予防対策を講じていくことが必要です。術者・スタッフの個⼈防護具は、検査室を出る際に破棄します。なお、防護具を破棄する際にはウイルス飛散などの可能性について十分に留意し、破棄後は肘までの手指洗浄を徹底してください。スコープや再利用する機器は本学会ガイドライン14に従った洗浄をお願いします。
感染確定患者の検査後は、個人防護策を徹底していれば曝露リスクは低リスクと判定されますが、その日は業務から外れてください。認識されない曝露があるかもしれないからです。以降は、自己モニタリングは必須であり、毎日の体温測定、症状の評価を行い無症状であることを確認してからその日の業務を始めてください13。
CQ26. 感染が疑われる患者や感染確定患者での緊急内視鏡検査後の患者への対応で注意すべき点について教えてください。 |
Ans. 検査終了後には患者にもマスクを着用させます。特に経口的な検査を行った場合では、咳嗽の頻度も高く、検査後の飛沫感染を予防するためにマスクを必ず着用させてください。また、感染が疑われる患者がリカバリー部屋を用いる場合は、必ず他の患者と隔離される別の部屋をご用意ください5。
CQ27. 感染が疑われる患者や感染確定患者での緊急内視鏡検査後の内視鏡機器の取り扱いについて注意すべき点について教えてください。 |
Ans. 検査終了後の内視鏡の運搬や洗浄に関しても十分な感染予防策をとることが重要です。スコープ類など洗浄にかけるものは、可能な限り密閉容器での運搬を推奨します。それが難しい場合は、台車にオイフのようなディスポーザブルシーツを敷き、その上にスコープを置き、さらにスコープの上にもディスポーザブルシーツをかけて周囲への汚染を最小限にすることをに努めてください。また、洗浄を担当するスタッフも、飛散による汚染、感染防止のため、術者同様に長袖ガウン、マスク、ゴーグル(もしくはフェイスシールド)、キャップ、二重手袋、シューズカバーを着用して、直接、口、目、鼻のみならず、肌への飛散がないようにしてください。洗浄終了後にスコープを取り出すときには、汚染されていないエプロンに交換していることが望ましいと考えます。洗浄も手慣れたスタッフが施行することが必要です7。
CQ28. 感染が疑われる患者や感染確定患者での緊急内視鏡検査後のスコープの洗浄方法は何か特殊な方法がありますか? |
Ans. スコープの洗浄は本学会のガイドラインに従って洗浄、消毒していただければ問題ありません14(「消化器内視鏡の洗浄・消毒標準化にむけたガイドライン」)。洗浄履歴をきちんとつけることが肝要です。
CQ29. 感染が疑われる患者や感染確定患者での緊急内視鏡検査後の処置具等のcritical器具の洗浄方法は何か特殊な方法がありますか? |
Ans. 処置具はディスポーザブル製品を用いることを推奨しますが、再使用可能製品を使用する場合は,再使用可能製品メーカーの取扱い説明書に従った十分な洗浄・滅菌が必要であると考えます14。
具体的な方法の一案として、あるクリニックでの運用方法をご紹介いたします15。使用した器具は、使用後直ぐに蛋白分解酵素を溶解した水にしっかりと浸します。その後、鉗子ではカップなどをブラシで洗浄します。そして超音波洗浄機に30分かけます。流水ですすぎ、潤滑・防錆剤(スティンミルクs200など)に浸します。ガーゼで水分を拭き取り、滅菌パックにいれて、オートクレーブ等の滅菌処置を行います。
CQ30. 感染疑い、あるいは確定患者での緊急内視鏡検査後の検査室はどのような処置が必要でしょうか? |
Ans. 内視鏡検査後は、ウイルスが飛沫しエアロゾル感染が起こりやすい状況となっていると考えるべきで、検査終了後には、検査室の扉は開放せずに十分な時間をかけて換気を行ってください。その後、室内を通常清掃し、部屋全体をアルコール等で清拭し消毒を行うことを推奨します5,6。また、先述のように、検査室内の電子カルテキーボードの消毒も徹底してください。
CQ31. 内視鏡検査の際に使用した、スコープ以外の機器の取り扱いについて教えてください。 |
Ans. 鉗子等のディスポのデバイス類は、検査の各部屋に備え付けの感染性廃棄容器に入れてください。そうした容器を開ける際にも注意が必要です。Critical器具で再利用される場合はCQ29を参考にしてください。それ以外のnon-criticalなもので再利用する物品に関しても本学会のガイドライン14に従い、洗浄後アルコール等での消毒をすることを推奨します。患者に触れた聴診器や体温計、⾎圧計等、パルスオキシメータ等の器材は、アルコールや抗ウイルス作⽤のある消毒剤含有のクロスでの清拭消毒を⾏います。検査台のシーツ、枕カバー、トロリー使用の紙シーツ類は毎回交換してください。シーツ類は感染汚染物として取り扱ってください。
CQ32. 消毒用のアルコールが入手困難となってしまいました。スコープの洗浄過程でのアルコールフラッシュができなくなりそうです。何かよい方法はありますでしょうか? |
Ans. 以下の内容を推奨いたします。
CQ33. 感染のリスクの少ない患者の検査をしたところ、後日感染していることが判明しました。どのように対応したら宜しいでしょうか? |
Ans. 個人防護策および検査後の手指洗浄が徹底されていれば、低リスクと判定されます。ただし、認識されない曝露の可能性は否定できないため、自己モニタリングが必須であり、毎日の体温測定、症状の評価を行い無症状であることを確認してからその日の業務を始めてください。
個人防護策に不備があった場合(フェースシールド、マスク、袖付きガウンのいずれかが未着用で、目・鼻・口や手指腕等のいずれかの防護が不完全であった場合)、高リスクと判定されますので、内視鏡検査施行時の状況を含めて保健所に報告し、消毒の方法や範囲、濃厚接触者への対応、業務継続の可否など事後措置について指示を仰いでください。最後の曝露後から14日間は業務から外れる必要があります。積極的な体温測定や症状のチェック等のモニタリグンを受けなくてはなりません。曝露後濃厚接触した個人(他の医療スタッフ)がいれば同様の対応が必要です13。また、内視鏡室の消毒も不十分であれば、徹底して行う必要があります。
CQ34. 経験の浅い内視鏡医が感染疑いあるいは確定患者に対して検査をしてもよいでしょうか? |
Ans. 施行医の技術が未熟な場合には、経口的な検査では、挿入がスムーズにいかず、被検者の誤嚥や反射的な咳嗽を誘発しやすく、飛沫感染のリスクを高めます。下部消化管内視鏡検査においても送気量が多くなりがちであり、排ガスの頻度も増加し、結果として飛沫感染のリスクが高くなります9。全体的な検査時間が長くなることも予想され、全ての面で感染リスクが上昇するため検査をさせないことを推奨します16。
CQ35. 患者毎にエプロン等を交換していると在庫が直ぐに無くなってしまいます。本当に全例での感染防護具の交換が毎回必要でしょうか? |
Ans. 基本的には必要と考えます。それは、防護具が感染源になるためです。但し、現状では個人防護具がどの施設でも潤沢に使用できるとは限りませんので、以下をご参考としてください。
CQ36. N95マスクは供給に限りがあるため、再利用も可能と言われています。どのようにすればよいでしょうか? |
Ans. 内視鏡検査はエアロゾルが発生しやすくN95マスクを用いることが望ましいため、使用頻度も高いと考えます。使い捨てが好ましいですが、現状ではN95マスクの供給の見通しが立たないことから破棄せずに再利用に努めることが提示されました12。以下の方法が提示されております。
CQ37. 防護具不足に対する工夫はなにかありますか? |
Ans. 下記のようなことが報告されています。
参考1_新型コロナウイルス感染症 内視鏡検査前症状日誌 (案)
参考2_アルコールフラッシュを行うことができない場合の対応方法オリンパス社製スコープ用
参考3_アルコールフラッシュを行うことができない場合の対応方法富士フイルム社製スコープ用
参考4_アルコールフラッシュを行うことができない場合の対応方法 HOYA社製(PENTAX)スコープ用