藤城 光弘(名古屋大学大学院医学系研究科 病態内科学講座 消化器内科学分野)
田邊 聡(北里大学)
松田 浩二(静岡医療センター)
2021年11月7日(日) 9:00~11:30
生田神社会館3階 菊の間
〒650-0011 兵庫県神戸市中央区下山手通1丁目2−1
会場参加/会場LIVE配信とのハイブリッド開催(予定)
現在のコロナパンデミックは、我々の生活様式を一変させたのみならず、消化器内視鏡診療に多大な影響をもたらしている。エアロゾルを産生する手技とされる内視鏡においては、日本消化器内視鏡学会などからの提言も含め、感染防止対策として様々な試みがおこなわれている。そのため、今回のテーマは、コロナ禍における周術期管理の創意工夫とし、周術期管理を基軸として、日常診療における考え方や創意工夫に関しての演題を募集し、情報を共有して明日からの診療に役立つ活発な議論を期待したい。 さらにこのテーマ以外でも広い領域から内視鏡周術期関連の応募も歓迎する。
参加登録はこちらから
内視鏡検査・周術期管理の標準化に向けた研究会/日本製薬株式会社 / EAファーマ株式会社
〒113-8655
住所 東京都文京区本郷7-3-1
東京大学医学部附属病院 光学医療診療部
(担当者氏名)中井 陽介、大木 大輔、永尾 清香、波多野 稔子
Tel 03-3815-5411、内線30681
Fax 03-5800-9015
E-mail jgesperiendo@gmail.com
藤城 光弘(東京大学医学系研究科 消化器内科学)
司会: 田邉 聡(北里大学医学部 新世紀医療開発センター)
松田 浩二(静岡医療センター 消化器内科)
演題区分:治療内視鏡
〇伊藤 純貴1)、高田 善久2)、坂戸 恵1)、廣瀨 崇2)、角嶋 直美2)、中山俊平1)、大岩 成明1)、古川 和宏2)、川添知佳1)、中村 正直2)、川嶋啓揮1)、藤城 光弘2)
1) 名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部、2) 名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科
演題区分:上部
〇林 智之, 宮澤 正樹, 鷹取 元, 飯田 宗穂, 北村 和哉, 関 晃裕, 山田 真也, 寺島 健志, 金子 周一
金沢大学附属病院消化器内科(システム生物学)
演題区分:上部
〇霜田 佳彦1),大野 正芳1),久保 茉理奈1) ,西村 友佑1) ,田中 一光1),井上 雅貴1),木脇 佐代子1),清水 勇一2),山本 桂子2),小野 尚子3),
坂本 直哉1)
1) 北海道大学大学院医学研究科 消化器内科学、2) 北海道大学病院 光学医療診療部、3) 北海道大学病院 消化器内科
演題分野(上部)
〇小原英幹1), 西山典子1),2), 藤原新太郎1),正木勉1)
1) 香川大学医学部 消化器・神経内科、2) 西山脳神経外科病院 消化器内科
演題分野:上部、下部、治療内視鏡
〇松崎一平1)、榎原 毅2)
1) 医療法人山下病院消化器内科、2) 名古屋市立大学大学院医学系研究科環境労働衛生学分野
演題分野:上部
〇常見麻芙1)、松崎一平2)、服部昌志2)
1)医療法人山下病院看護部、2)医療法人山下病院消化器内科
演題区分:全般
〇大木大輔、永尾清香、小峯弓子、白田龍之介、中井陽介
東京大学医学部附属病院 光学医療診療部
演題区分:上部
〇小橋亮一郎1)2),引地拓人1), 中村 純1)2) , 橋本 陽1)2), 髙住美香2), 加藤恒孝2), 柳田拓実2), 鈴木 玲2), 杉本 充2), 佐藤雄紀2), 入江大樹2), 大久保義徳1)2), 高木忠之2), 大平弘正2)
1) 福島県立医科大学附属病院 内視鏡診療部、2) 福島県立医科大学医学部 消化器内科学講座
<休憩5分>
「ポストパンデミック時代のハイリスク症例対応内視鏡室の考察
ー新施設運用開始直後でのパンデミックの経験を踏まえてー」
司会: 田邉 聡(北里大学医学部 新世紀医療開発センター)
講演: 炭山 和毅先生(東京慈恵会医科大学 内視鏡医学講座)
「麻酔科医からみた、非麻酔科医による内視鏡でのプロポフォール鎮静のあり方(仮)」
司会: 松田 浩二(静岡医療センター 消化器内科)
講演: 小澤 章子先生(静岡医療センター 統括診療部長)
藤城 光弘(東京大学医学系研究科 消化器内科学)
*この研究会には資格申請・更新の際の業績として、参加点数2点(関連学会分として)が付与されます。
演題区分:治療内視鏡
〇伊藤 純貴1)、高田 善久2)、坂戸 恵1)、廣瀨 崇2)、角嶋 直美2)、中山俊平1)、大岩 成明1)、古川 和宏2)、川添知佳1)、中村 正直2)、川嶋啓揮1)、藤城 光弘2)
1) 名古屋大学医学部附属病院 光学医療診療部、2) 名古屋大学大学院医学系研究科 消化器内科
【背景・目的】表在性十二指腸腫瘍(SDET)に対するwater pressure method 法を用いたESD (WP-ESD)は消化管管腔内を生理食塩水で満たし、水圧を用いて視野を展開する。
WP-ESDは一括切除率が高く偶発症も少ない手法であるが、術中に便失禁や嘔吐を来すことがある。偶発症低減のために、原因となる因子を同定することを目的とした。
【方法】対象は当院でSDETに対しWP-ESD を施行し、体内に入った生食量を計算しえた43例。ESD術中・術後の偶発症発生率、術中の便失禁または嘔吐の発生を誘発する因子に
ついて、従来のESDを行った83病変と比較した。
【結果】従来ESD群において、病変径中央値は12mm、切除時間中央値は62分であった。完全一括切除(R0切除)は64例(77%)で、術中穿孔12例(14%)、遅発性穿孔2例(2%)、遅発性
出血を7例(8%)に認めた。術中便失禁例はなく、嘔吐4例(5%)、誤嚥性肺炎を1例認めた。
WP-ESD群において、病変径中央値は20mm、切除時間中央値は55分であった。R0切除は41例(95%)で、術中穿孔を3例(7%)で認めた。遅発性穿孔や後出血は認めなかった。術中
便失禁12例(28%)、嘔吐6例(14%)、誤嚥性肺炎を1例で認めた。R0切除率はWP-ESDで有意に高く(p<0.001)、重篤な偶発症は認めなかった。
術中便失禁の有意な因子として、単変量解析では女性、平坦隆起型病変、腫瘍径、体内に入った生食量、切除時間が抽出された。生食注入速度を生食量/切除時間と定義すると、多
変量解析では注入速度≧17ml/minが有意な因子であった(p=0.005)。
【結論】SDETに対するWP-ESDの治療成績は良好で、嘔吐や誤嚥性肺炎は従来ESDと差を認めなかった。便失禁はWP-ESDに特有の偶発症であり、その周術期管理は患者の尊厳を
守るために重要であると考えられた。
演題区分:上部
〇林 智之, 宮澤 正樹, 鷹取 元, 飯田 宗穂, 北村 和哉, 関 晃裕, 山田 真也, 寺島 健志, 金子 周一
金沢大学附属病院消化器内科
【目的】近年、上部消化管内視鏡検査時において咽頭観察の重要性が強調されつつある。前処置としてリドカインによる咽頭麻酔が行われてきたが、アナフィラキシー様反応や中
毒が報告されている。このため鎮静下において、咽頭麻酔を行わない群と行う群とで、被検者の苦痛度のみならず、咽頭観察のクオリティの比較検討を行う臨床試験を計画するに
至った。
【方法】本臨床試験は、同意取得後、A群(非施行群)とB群(施行群)とにランダムに振り分ける。B群にのみ咽頭麻酔を行い、検査医は咽頭麻酔を行ったかどうか把握をしていない状
態で検査を行う(単盲検)。咽頭観察は、観察能・検査時間を評価できるように規定された10ヶ所の撮影を行う。Primary endpointは、両群間の咽頭観察成功率の差とし、指定され
た部位を指定時間内に撮影することを成功条件とした。
【成績】患者背景に両群間で有意差を認めなかった。咽頭観察成功率はA群72.0%、B群84.0%で、A群の非劣性は証明できなかった(p=0.707)。また、平均咽頭観察可能部位数はA
群8.33、B群8.86で、有意にA群で低値で(p=0.006)、観察時間はA群67.2秒、B群58.2秒で、有意にA群で長かった(p=0.001)。また、A群:B群とし、VASで評価した苦痛(1.21:0.68、
p=0.004)、咽頭反射回数(3.83:2.11、p<0.001)とA群で有意に高値であった。鎮静度別でのサブグループ解析では、Ramsay score5以上の症例では咽頭観察成功率において両群間
で有意差を認めなかった。部位毎の観察率では、特に下咽頭においてA群の観察率が低かった。
【結論】ミダゾラムにて鎮静を行った場合の上部消化管内視鏡検査において、咽頭麻酔を使用しない場合の観察成功率の非劣性は示すことができなかった。
演題区分:上部
〇霜田 佳彦1),大野 正芳1),久保 茉理奈1) ,西村 友佑1) ,田中 一光1),井上 雅貴1),木脇 佐代子1),清水 勇一2),山本 桂子2),小野 尚子3),
坂本 直哉1)
1)北海道大学大学院医学研究科 消化器内科学、2)北海道大学病院 光学医療診療部、3)北海道大学病院 消化器内科
近年、内視鏡診療における鎮静剤使用は患者意識の変化により増加傾向にあると言われている。また通常の内視鏡検査においてもNBIやBLI、LCIといった画像強調イメージングを
用い、拡大観察も行うことが一般化されつつあるため、患者負担の側面からも鎮静剤使用の需要は増加していると言える。一方で、鎮静は嘔気や嘔吐、呼吸異常、血圧低下、アナ
フィラキシーショックなどの副作用が発生する可能性のある医療行為でもあり、安全に運用するためには徹底した管理が重要であると考えられる。
当院では鎮静内視鏡を施行する際に、主にミダゾラムやジアゼパムを使用している。その使用方法については慎重な扱いを行っているものの、医師個々人における裁量で用いてい
るのが現状である。また検査や治療時間が長引くほど、鎮静剤の適正使用量の上限を超えるといった症例も存在し、検査中の血圧変動や血中酸素飽和度の低下など様々なvital sign
の変化も散見されるため、改善の余地があると考えられる。さらに、当院には鎮静剤使用後のリカバリールームは6つしかなく、薬剤投与量が過量となり帰宅に時間がかかる症例が
増えた場合は、内視鏡室全体の運営に大きな支障がでることになる。
今回当院における上部消化管内視鏡検査の現状について、身長や体重,既往やアレルギー歴,検査の経過などを記した看護記録・計画書を参考にし、鎮静剤投薬量やそれに伴う術
中、術後の合併症、また患者の術後覚醒の状況などについて検討し、鎮静剤の適正な使用がなされているか、検査数や検査の運用は適切かなど、様々な問題点を明らかにしたい。
演題分野(上部)
〇小原英幹1), 西山典子1),2), 藤原新太郎1),正木勉1)
1) 香川大学医学部 消化器・神経内科、2) 西山脳神経外科病院 消化器内科
【目的】新型コロナ蔓延下において飛散リスクのある上部消化管内視鏡検査(EGD)では,最善の対策が模索されている.そこで患者被覆ビニールフィルムと陰圧化機能を特徴と
するエンドバリア®(EB)の患者-検者間の直接暴露の低減効果につき検証した.
【方法】モデル検証I:被験者5人を対象に咳嗽2回を1分毎に行う咳嗽強反射のEGD6分間モデルを設定.I-1:陰圧機能実証試験としてEB陰圧有vs. 無でParticle counterによる検査
前後のフィルム内0.3μmエアロゾル(Aerosol: As)上昇値を比較.I-2:EB有vs. 無で検査前後のガウン・ゴーグルの飛沫想定ATP上昇値を比較.実臨床検証II:対象はEB使用下ス
クリーニングEGDを受けた患者80名.(UMIN000042939) II-1:患者口元フィルム外と検査医間の1点で検査前後0.3,0.5μm As値を測定.環境の影響を受けやすいAs値変動を最
小限にするためEGD未施行の同じ環境で粒子増加のカットオフ値(10回試行算出平均値±2SD(標準偏差))を設定した.カットオフ値以上の増加がみられた患者をAs増加と定義
した.II-2:検査前後のガウン・ゴーグルATP値を比較.
【成績】モデル結果は,フィルム内の0.3μm As上昇値(μg/m3,Mean±SD)は陰圧有群vs. 無群:5.7×105±6.7×105vs. 4.8×107±2.8 x106で陰圧有群は有意に低かった.EB有群
vs. 無群におけるATP上昇値(relative light units: RLU)は,ガウン28±23 vs. 288±158,ゴーグル0.2±0.4 vs. 8.8±6.1の結果で,EB有群でともに有意に低かった.実臨床結果
では,EGD前後の0.3,0.5μm変動は,各々95.8%,94.5%の患者で増加しなかった.粒子毎合計値のEGD前後比較でも,有意差はなかった.ATP増減値は各々1.59±19.9,
0.6±16.6と有意な上昇はなかった.
【結論】モデル及び実臨床において検者へのエアロゾル・飛沫直接暴露低減効果を実証した.エンドバリアは上部内視鏡感染防御のひとつの方策となりうる.
演題分野:上部、下部、治療内視鏡
〇松崎一平1)、榎原 毅2)
1) 医療法人山下病院消化器内科
2) 名古屋市立大学大学院医学系研究科環境労働衛生学分野
【抄録】新型コロナウイルス感染症対策として,当院では患者に関わる全スタッフに対して,勤務中のフェイスシールド着用が義務化されている.医師12名および看護師89名に対して、フェイスシールド装着義務化前後での頭痛・めまいの頻度および程度を比較検討した.
装着時間は7~9時間が70.4%、3~6時間が23.9%,3時間未満が5.6%であった。フェイスシールド着用義務化前に比べ,頭痛(p =0.056)および、めまい(p <0.01)の頻度が増加していた.また頭痛とめまいの頻度と程度に関してフェイスシールドの種類(眼鏡型、ヘッドバンド型、眼鏡型&反射防止レンズ)による違いは認めなかった。N95マスクやゴーグル等の着用によるPPE-associated headachesという概念も報告されているが、当院ではN95マスクは使用しておらず、フェイスシールドによる乱反射や歪みといった視覚刺激や頭部締め付けなどが問題ではないかと考えている。
防護服においても1時間着用で平均体温が0.46℃上昇し、25人のヘルスケアワーカーのうち4人の体温が38.5℃を超えていたという報告がある。感染予防というperformanceだけでなく、個人防護具を使用する医療従事者のwell-beingsとの調和を図るため、連続装着時間や着脱インターバルの指針など人間工学的提言が望まれる。
演題分野:上部
〇常見麻芙1)、松崎一平2)、服部昌志2)
1) 医療法人山下病院看護部
2) 医療法人山下病院消化器内科
【抄録】SARS-CoV-2では飛沫感染、接触感染、エアロゾル感染による医療従事者への感染が危惧されており、内視鏡検査時は患者口腔内からの飛沫を防ぐことが求められている。
上部消化管内視鏡検査においては内視鏡挿入経路が経口と経鼻に分かれるが、我々の報告では咽頭反射が経口:経鼻=54%(40/74例):9%(6/71例)と有意差を持って経鼻内視鏡が優れていることが分かっている。(看護実践学会誌Vol.32, No.1 p1-9, 2019)また、本検討においては、患者の苦痛度、血圧、脈拍、自律神経への影響においても経鼻内視鏡が良好な結果を示しており、現在、検診やスクリーニング検査においては積極的に経鼻内視鏡を推奨し、現在は8割以上の患者様に経鼻内視鏡を実施している。
当院では経鼻内視鏡でも口腔からの飛沫を抑えるために、マスピタ®と患者の口の間に不織布ガーゼを挟み検査を実施している。マスピタ®と呼ばれるゲル製の伸縮素材はサージカルマスクの上から併用することで飛沫の漏れを軽減するとされており、サージカルマスクのみで対応した場合、マスクの汚染や検査中にマスクが適切に装着出来ないことによる飛沫量の増加も懸念されたため、サージカルマスクよりも伸縮素材による密着性によって飛沫抑制の効果と、不織布ガーゼの使用による唾液の吸収を目的とした。様々な要因もあると考えられるが、現時点で内視鏡室、院内でのクラスターは発生していない。
内視鏡鉗子孔からの空気漏れという課題(EIO 09: E443-449 2021)もあり、個人防護具による防護策の徹底、室内の換気は必須である。NIOSHのHierarchy of Controlsにおいては、今回の対策は個人防護具より上層のEngineering Controlsとして重要な位置を占め、今後、マスピタ®を使用した経鼻内視鏡における可視化レーザーを用いた飛沫検証も行いたい。
演題区分:全般
〇大木大輔、永尾清香、小峯弓子、白田龍之介、中井陽介
東京大学医学部附属病院 光学医療診療部
【目的】医療安全委員会提言に沿ったCOVID-19に対応した内視鏡診療の妥当性の検討。
【方法】感染対策として1)マニュアル作成、2) 発熱トリアージ外来との連携、部門受付での体温測定・問診票記入、3) 待合室の対人距離の確保、下部内視鏡の前処置対応(飛沫防止アクリル板導入)、4)被験者穴あけマスク導入、5) HEPAフィルター付空気清浄機設置、6) 治療内視鏡症例に対する入院時PCR/抗原検査。第1回緊急事態宣言発出時は、ハイリスク症例では有緊急性症例のみ施行、ローリスク症例も緊急性が無い場合は延期とした。
【結果/考察】第1回緊急事態宣言発出時の全内視鏡検査件数は前年度比較6割減(1207⇒505件/月)であったが、精査治療内視鏡は3割減(222⇒160件/月)に留まった。第1回宣言解除後は感染対策に注意しながら診療機能回復することで、前年度同様の内視鏡件数に回復した。当院ではCOVID-19感染確定/疑い症例に対する内視鏡は10件未満と限定的であったが、全期間を通じて内視鏡を介した感染は認めず、委員会提言に沿った感染対策は妥当であると考えられた。しかし被験者マスク導入後に噛みつきが疑われる内視鏡破損が増加しており、マスクの改善は必要と考える。
演題区分:上部
〇小橋亮一郎1)2),引地拓人1), 中村 純1)2) , 橋本 陽1)2), 髙住美香2), 加藤恒孝2), 柳田拓実2), 鈴木 玲2), 杉本 充2), 佐藤雄紀2), 入江大樹2), 大久保義徳1)2), 高木忠之2), 大平弘正2)
1) 福島県立医科大学附属病院 内視鏡診療部
2) 福島県立医科大学医学部 消化器内科学講座
【緒言】消化器内視鏡診療はエアロゾル発生による新型コロナウイルス感染リスクが危惧されており,適切な個人防護具(PPE)を含む感染対策が必要である. 今回,当施設における感染対策の現状, ならびにCOVID-19患者に対する緊急内視鏡の経験を報告する.
【感染対策の現状】予定・緊急にかかわらず入院時に新型コロナウイルスに対するスクリーニングPCR検査を義務づけている. 内視鏡検査時には,検査の種類を問わず, 術者ならびに介助者はサージカルマスク,フェイスシールド,手袋,長袖ガウンによる標準PPEを着用する.患者も全ての内視鏡診療においてサージカルマスクで口を覆い,経口挿入時はマウスピースの上からスコープ分の小さな穴をあける.外来の緊急内視鏡時は感染リスクが高いと考え, N95マスク, キャップ,シューズカバーを併用したフルPPEで手技を行っている.鎮静患者では咽頭麻酔は禁止とし, ボックス型飛沫防止装置(Endo barrierあるいはAP COVER)も併用した飛沫対策をしている. 今後, 飛沫予防マウスピースの臨床応用も検討中である.
【COVID-19患者に対する緊急内視鏡】3例経験した. ICU入室中の消化管出血例(2例は気管挿管, ECMO管理下)であり,1例は出血性胃潰瘍で止血術を施行したが,2例は小腸の広範なびまん性出血であり止血術の適応ではなかった.ゾーニングならびにスタッフの役割分担を徹底し,内視鏡診療を介した感染伝播を回避できた.【結語】消化器内視鏡診療において,新型コロナウイルスなどの感染源から医療従事者を守り, かつ感染拡大を防ぐ取り組みは重要である.