上堂文也(大阪国際がんセンター)
小野裕之(静岡がんセンター)
2021年5月16日 13:20~15:50
リーガロイヤルホテル広島 「安芸」(第 8 会場)
小野裕之(静岡がんセンター 内視鏡科)
司会:森田圭紀(神戸大学医学部附属病院 国際がん医療・研究センター 消化器内科)
平澤欣吾(横浜市立大学附属市民総合医療センター 内視鏡部)
七條智聖1、上堂文也1、原尚志2、大森健2
1)大阪国際がんセンター 消化管内科
2)大阪国際がんセンター 外科
萱場 尚一、伊藤 啓紀、谷地 一真、小笠原 光矢、相田 かな子、天野 朋彦、小原 優、千葉 宏文、新海 洋彦、
小野寺 美緒、石山 文威
岩手県立胆沢病院 消化器内科
港 洋平1)大圃 研1)稲本 林1)木本 義明1)、高柳 駿也1)、紅林 真理絵1)、鈴木 雄一郎1)、
石井 鈴人1)、小野 公平1)、根岸 良充1)、瀧田 麻衣子1)、千葉 秀幸4)、村元 喬1)、里舘 均3)、
松橋 信行2)
NTT東日本関東病院 消化管内科1)消化器内科2)外科3)
大森赤十字病院 消化器内科4)
竹内弘久、鶴見賢直、橋本佳和、大木亜津子、長尾 玄、阪本良弘、須並英二、正木忠彦、森 俊幸、阿部展次
杏林大学医学部消化器・一般外科
山階 武 鼻岡 昇 瀬戸山 健 圓尾 隆典 丸澤 宏之
大阪赤十字病院消化器内科
司会:森宏仁(愛媛労災病院 消化器病センター)
七條智聖(大阪国際がんセンター 消化管内科)
橋口一利
如水会今村病院 内視鏡治療センター
吉田 将雄、小野 裕之
静岡県立静岡がんセンター 内視鏡科
桑原洋紀 千葉秀幸 立川準 岡田直也 有本純 中岡宙子
大森赤十字病院 消化器内科
平澤欣吾1)、佐藤勉2)、國崎主税2)
1)横浜市立大学附属市民総合医療センター 内視鏡部
2)同 消化器外科
司会:小野裕之(静岡がんセンター 内視鏡科)
胃部分切除術におけるEFTRの位置づけ
阿部展次
杏林大学外科
胃粘膜下腫瘍に対する「内視鏡的胃局所切除術」の先進医療A承認の報告と今後の相談
上堂文也(大阪国際がんセンター 消化管内科)
阿部展次(杏林大学 外科)
第一部
1.当院における胃GISTに対する切除術の変遷と胃粘膜下腫瘍に対する内視鏡切除
七條智聖1、上堂文也1、原尚志2、大森健2
1)大阪国際がんセンター 消化管内科
2)大阪国際がんセンター 外科
【目的】切除可能な胃GISTの治療の第一選択は外科的完全切除であり(GIST診療ガイドライン、2014年改訂、第3版)、現在は腹腔鏡下手術,ないしは腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)が主に行われているが,経口内視鏡のみで切除できた症例も経験している。年代別のGIST治療法の変遷について、また経口内視鏡切除例の臨床病理学的特徴について検討する。
【方法】検討①として、2005年10月から2018年2月までに初発の胃GISTに対して切除が行われた(切除検体の病理診断がGISTであった)症例の治療方法を検討した。検討②として2018年3月から2020年9月に経口内視鏡のみで切除した胃粘膜下腫瘍を検討した。【結果】検討①の期間中に115例が胃GIST切除術を施行されていた。そのうち癌に対する切除術を同時に受けていた33例を除いた82例を検討した。腹腔鏡下胃局所切除術 57例、LECS 16例、経口内視鏡切除 6例、開腹胃局所切除3例だった。LECSは2008年以降コンスタントに施行されており、10例(63%)が体上部の病変、15例(94%)が内腔突出型の腫瘍に施行されていた。検討②の期間中に14例15病変の胃粘膜下腫瘍に対して経口内視鏡による切除が施行された。長軸部位(U:M:L)は11:3:1、周在(後壁:小弯:前壁:大弯)は6:1:3:5.術前最大腫瘍径は21.6±9.6(範囲8-40) mmだった.手術室で全身麻酔下に治療し、全例一括切除された.治療時間は63±41分.11病変で全層切除となった。13例は巾着縫合で胃壁欠損部が閉鎖されていた。術後2-5日後に食事を再開, 6.5±1.6日後に退院していた.2020年12月の時点でいずれの症例も再発はない。
【考察】より低侵襲な治療(LECS、経口内視鏡切除)の占める割合が増加してきており、今後、内腔発育型GISTへの適応の確立が期待される。
・連絡先
Tel 06-6945-1181, FAX 06-6945-1902,
E-mail 7satoki@oici.jp
2.当科における胃GIST内視鏡的切除の現況について
〇萱場 尚一、伊藤 啓紀、谷地 一真、小笠原 光矢、相田 かな子、天野 朋彦、小原 優、千葉 宏文、新海 洋彦、小野寺 美緒、石山 文威
岩手県立胆沢病院 消化器内科
【目的】消化器内視鏡の進歩により胃粘膜下腫瘍(SMT)は、小さな段階より病理診断が可能になってきた。治療面においては LECS などの外科手術が普及し、内視鏡的切除についても筋層剥離術(EMD)、全層切除術(EFTR)などの報告が相次いでいる。以前より当科でも SMT に対する内視鏡的治療を行ない報告してきたが、今回当科での胃GISTに対する内視鏡的治療の現況について検討を行った。
【対象】2010.8月より2020.5月まで当科にて内視鏡的切除を試みた胃 SMT 症例10例のうち、最終診断がGISTであった、男性2例、女性4例、計6例。平均年齢 63.3歳(51~72歳)。
【結果】病変主座はU領域5例、M領域1例、全例 ESD にて切除を目指したが、2012年に施行した1例は穿孔により切除不能だった。それ以外の5例の平均切除時間は89.6分(78~107分)、2例に穿孔を認めクリップ閉鎖を施行したが、それ以外は術中・術後に特に問題となる偶発症を認めなかった。1例で double scope 法により、ESDを完遂した。術中に病変の表層粘膜が剥がれた症例、切除標本が噴門部を超えずに分断された症例が、それぞれ1例ずつ認められた。切除し得た GIST の平均腫瘍径は23.2mm(12~30mm)、modified-Fletcher 分類低リスク群3例、超低リスク群2例だった。最長10年5ヶ月の観察期間で転移再発などは認めていない。
【考察】LECS の普及により SMT の治療は新たな局面を迎えているが、更に低侵襲となる EMD、EFTR による内視鏡的切除も今後は選択肢となり得ると思われる。3cm以下など症例を限れば地方病院であっても切除可能と思われるが、標本回収方法に更に工夫が必要と思われた。
3.胃粘膜下腫瘍に対する内視鏡切除及び縫縮の治療経験
港 洋平1)大圃 研1)稲本 林1)木本 義明1)、高柳 駿也1)、紅林 真理絵1)、鈴木 雄一郎1)、石井 鈴人1)、小野 公平1)、根岸 良充1)、瀧田 麻衣子1)、千葉 秀幸4)、村元 喬1)、里舘 均3)、松橋 信行2)
NTT東日本関東病院 消化管内科1)消化器内科2)外科3)
大森赤十字病院 消化器内科4)
【背景】当院では、5㎝以下の胃粘膜下腫瘍の治療では腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)を第一選択としているが、管腔内発育型胃粘膜化腫瘍(SMT)で潰瘍のない病変に対しては、全身麻酔下で腹腔鏡スタンバイとし、内視鏡側のみで切除可能であればそのまま完遂している。今回、当院での5㎝以下の胃SMTに対する治療成績を検討した。
【方法】
2014年11月から2020年12月までに胃SMTを内視鏡的切除で行った19例を対象に、後ろ向きに治療成績を検討した。
【結果】
平均年齢56歳(40-76)、男女比8:11、 腫瘍の存在部位は、U/M/L:13/5/1例で,治療法は内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)・内視鏡的筋層剥離術(EMD)が6例、内視鏡的全層切除術(EFTR)が10例、経口内視鏡的粘膜下腫瘍核出術(POET)が3例であった。
平均腫瘍径22.0mm、平均切除標本径27.8mm、平均手術時間68.6分、吻合部狭窄や術後の穿孔や出血などの偶発症は認めず、平均術後在院期間は6.6日であった。観察期間(1-60か月)内での転移や再発例は認めなかった。術後最終病理診断はGIST 14例、leiomyoma 3例、その他2例であった。縫縮は、8例で止血用クリップのみで、3例で留置スネアとクリップを併用、6例はOTSC(Over-The-Scope-Clip)、1例は全層縫合器(ゼオスーチャーM)にて閉鎖可能であった。
【考察・結論】胃SMTに対する内視鏡的治療の成績は比較的良好であった。先進医療の開始や全層縫合器の登場により、胃SMTに対する内視鏡治療は、今後の低侵襲治療法として期待され、さらなる今後の症例の蓄積が望まれる。
連絡先
141-8625 NTT東日本関東病院 消化管内科 港洋平
0334486111
4.胃粘膜下腫瘍に対する筋層以深内視鏡的切除の周術期管理
○竹内弘久、鶴見賢直、橋本佳和、大木亜津子、長尾玄、阪本良弘、須並英二、正木忠彦、森俊幸、阿部展次
杏林大学医学部消化器・一般外科
【目的】 管腔内発育型胃SMTに対する内視鏡的切除(ER)のESD/筋層以深の内視鏡的筋層剥離術(EMD)と内視鏡的全層切除術(EFTR)の治療成績および術後管理を検討し,筋層以深ERに対する周術期管理について考察する.
【対象と方法】2007年以降ER施行38例を対象.ESD/EMD群23例(平均年齢60歳,GISTが13例57%:ESDが5例,EMD 18例)とEFTR群15例(平均年齢65歳,全例GIST)に分け,手術成績と臨床経過を後ろ向きに比較検討した.
【EMD/EFTR詳細】 経鼻挿管全麻下で施行.腫瘍周囲SM層レベルで亜全周-全周切開,肛門側から筋層切離/剥離して腫瘍確認し,腫瘍損傷なく筋層を掘り下げる(EMD).EFTRでは引き続き筋層深層から漿膜をintentionalに切離し腫瘍摘出を完了.筋層や全層欠損部は内視鏡的に閉鎖(止血用クリップ使用).切除/閉鎖に牽引を要すれば独立した鰐口把持鉗子を使用.EFTRで気腹著明例は経皮的腹腔内脱気を付加,全層欠損部の内視鏡的閉鎖困難例では腹腔鏡下に縫合閉鎖する.
【結果】 全例R0で切除.ESD/EMD群とEFTR群の平均腫瘍径はともに24mm.平均手術時間はESD/EMD群で有意に短く(73 vs.125分),平均出血量は両群間で有意差なし(3 vs.25 g).EFTR群では,牽引が有意に多く(1 vs.8例),4例(27%)に経皮的腹腔内脱気を,3例(20%)に腹腔鏡下縫合閉鎖を要した(いずれも前壁症例). EMD 2例に後出血を認め,内視鏡的に止血した.両群間で,術後経鼻胃管挿入率(35 vs.67 %)と術後胃透視率(9 vs.20 %)に有意差なし.EFTR群で,抗菌薬使用率(52 vs.100 %)が有意に多く,平均食事開始日(2 vs.3日)は有意に1日遅かった.WBC上昇(10000/mmm以上)率は両群間で有意差なく(9 vs.20 %),全例で栄養状態の明らかな低下や,後出血症例以外でのHb低下(1 g/dl以上)を認めず.ESD/EMD群が5POD,EFTR群が6PODで,全例体温が37℃未満になり,術後在院期間はEFTR群で有意に1日長かった(7 vs.8日).術後外科的治療を要した症例や合併症に伴う再入院を認めていない.
【考察・結論】 経鼻挿管全麻下行い,腫瘍牽引や経皮的脱気を駆使し,症例を選択(30mm以下/管腔内発育型)すれば筋層以深でもERでR0切除が可能.ERでの術後経鼻胃管はselectiveに挿入すればよく,術後胃透視の必要性は乏しい.EFTRでは抗菌薬投与を行い,経口摂取や退院をESD/EMDより1日遅らすことで安全性を確保できている.
連絡先:tel:0422−47−5511 fax: 0422−47−9926
E-mail: takeuchih@ks.kyorin-u.ac.jp
5.留置スネアにて筋層縫縮し切除しえた胃GISTの2症例
山階 武 鼻岡 昇 瀬戸山 健 圓尾 隆典 丸澤 宏之
大阪赤十字病院消化器内科
背景:切除可能な胃GISTに対する治療の第一選択は外科手術であるが、近年上部消化管内視鏡によるGIST切除の報告が散見される。今回、我々はESDの手法を用い、留置スネアを併用して穿孔を起こすことなく切除しえた2症例を報告する。
症例1:70歳代の男性。胃前庭部に粘膜下腫瘍を認め、経過観察されていたが増大が疑われ当院紹介となった。当院の精査内視鏡では胃前庭部大弯に30mm大の粘膜下腫瘍を認め、EUS-FNAでGISTの診断を得た。外科切除をお勧めしたが、内視鏡切除を希望されたため十分な説明のもとで内視鏡切除を行った。先端系ナイフを用いて全周切開を行い、可能な限り剥離をしたところ、筋層と接する被膜を認めた。筋層の剥離を試みたが、徐々に筋層が内反してきたため、これ以上の剥離は穿孔の危険があると考え、留置スネアを用いて基部を絞扼した。絞扼部の上縁をフラッシュナイフにて切開し切除しえた。穿孔は認めず、絞扼部をクリップにて追加縫縮し終了した。
症例2:胃体上部後壁に20mm大の粘膜下腫瘍を認め、当院紹介。EUS-FNAでGISTと診断された。症例1と同様の方法で切開剥離を行った。本症例は糸付きクリップにて牽引後に留置スネアにて絞扼し穿孔を起こすことなく切除しえた。
2症例とも術後経過は良好で2か月後の内視鏡検査では瘢痕を認めるのみであった。病理結果はGIST低リスク群で完全切除であった。
結語:本法を用いた胃GIST内視鏡切除は過剰な侵襲が避けられる可能性があるため、今後の症例の蓄積が望まれる。
TEL 06-6774-5111
FAX 06-6774-5131
E-mail take8047@hotmail.com
第ニ部
1.胃SMTに対する内視鏡治療 ~困難例・失敗例を中心に~
橋口一利
如水会今村病院 内視鏡治療センター
2013年より胃粘膜下腫瘍(以下SMT)に対する内視鏡治療を開始した。当初は1㎝程度で固有筋層との付着部が小範囲のものを対象とし、徐々に大きさや剥離深度を拡大していった。自験例11例の胃SMTに対する内視鏡治療の検討をおこない、失敗例・困難例を中心に私見を述べさせて頂く。
手技はESDと同様に周囲切開後に粘膜下層剥離をおこなって腫瘍を露出するか、もしくは粘膜下トンネルを形成して腫瘍へ到達後、固有筋層あるいは漿膜を切開・剥離して摘出した。
症例①:40代女性。噴門部後壁40mmの壁内型SMT。粘膜下トンネル法で腫瘍に到達したが、途中で腫瘍周囲の剥離が困難となり粘膜周囲切開後の漿膜下層剥離に変更して摘出。OTSCで筋層欠損部の閉鎖をおこなった。切除時間330分。
症例②:60代女性。前庭部後壁の壁外型SMT。術前のEUSでは壁内外型SMTの診断。粘膜下トンネル法で腫瘍到達を試みたが同定できず。EUSでは近傍に低エコー腫瘤が確認できたため漿膜下層剥離で壁外の腫瘤確認を試みたが不能であった。粘膜下トンネルの進入部をクリップで閉鎖後、後日待機的に腹腔鏡下局所切除術施行。切除時間270分。
症例③:40代女性。体上部大弯15mm壁内外型SMT。周囲切開後に腫瘍と固有筋層の付着部を露出させ、糸付きクリップで腫瘍を胃内に牽引しながら全層切除をおこなった。穿孔部はOTSCで閉鎖。切除時間78分。
胃SMTに対する内視鏡治療は、EUSにて病変の主座が壁内および壁内外の場合は選択例で可能と思われるが、完全壁外病変は事前にEUS下でマーキングするなどさらなる検討が必要と考える。粘膜下トンネル法は穿孔した後の気腹のリスクが少ないため有用と考えるが、一方で狭い視野での操作制限など問題点はある。胃壁外に突出する要素があれば全層切除が必要となることが予想されるため、それに応じた準備をおこない最小限の範囲で切除できるよう筋層を露出しておくことが望ましいと考える。
連絡先
〒841-0061
佐賀県鳥栖市轟木町1523-6
医療法人社団如水会 今村病院 内視鏡治療センター・消化器内科
橋口一利
0942-82-5550
kazutoshihashiguchi@gmail.com
2.筋層切除中に腹腔側の血管から出血した1例
吉田 将雄、小野 裕之
静岡県立静岡がんセンター 内視鏡科
【症例】70歳代男性
【病歴】2016年7月に人間ドックの内視鏡検査にて穹窿部に10㎜大の粘膜下腫瘍を指摘されていたが、放置していた。2020年10月に再度内視鏡検査を受け、病変の増大を指摘された。
【検査所見】
内視鏡:穹窿部前壁に非腫瘍粘膜で被覆され、急峻に立ち上がる20㎜大の隆起性病変を認める。Delleは認めない。
EUS:第4層に連続する境界明瞭な管内管外に発育する低エコー腫瘤を認める。サイズは20.0×17.6㎜。
【処置】外科医立ち合いのもと手術室で内視鏡的全層切除術を計画した。
患者体位は左側臥位とし、GIF-2TQ260Mを使用した。Dualナイフでマーキングし、局注後に病変口側から穹窿部側、肛門側へと粘膜切開を広げ、IT-2を併用しながらトリミングを行った。粘膜下層から筋層を病変側に切除していくと、筋層の線維越しに病変を認識することが可能であった。病変を損傷しないように留意しながら筋層切除を続けると、大彎側は病変が覆いかぶさるような状況であったため、病変の大彎側に糸付きクリップを装着し、視野を展開した。さらに切除する筋層の視野を安定させるために病変口側にも糸付きクリップを装着し、作成した穿孔部を口側から肛門側、穹窿部側と広げていった。穹窿部側の筋層切除時に突然の湧出性出血を認め、視野を失った。視野の確保に難渋し、外科の介入も考慮したが、何とか術野を展開し、漿膜側の血管から出血していることが視認できたため、漿膜側からIT-2を軽く押し当てるように焼灼し、止血を得ることができた。その後、病変を牽引しながら残りの筋層を切除し、腫瘍を一括切除した。腫瘍を体外へ摘出した後、留置スネアによる巾着縫合とクリップ閉鎖にて創部粘膜を完全に縫縮し、送気で胃が伸展することを確認して処置終了とした。
吉田 将雄
静岡県立静岡がんセンター 内視鏡科
TEL: 81-055-989-5222、FAX: 81-055-989-5692
Email: ma.yoshida@scchr.jp
3.当院における胃粘膜下腫瘍内視鏡切除について
桑原洋紀 千葉秀幸 立川準 岡田直也 有本純 中岡宙子
大森赤十字病院 消化器内科
背景;胃粘膜下腫瘍に対する標準治療は外科手術であるが、近年経口内視鏡のみで切除した症例が報告されている。当院では5cm以下の管腔内発育型腫瘍では、全身麻酔下で、内視鏡のみで切除可能であればそのまま完遂している。切除の際には被膜損傷を避けつつ、最小限の深さでの切除となるように心がけている。今回筋層までの切除で完遂が可能であった2症例を提示する。
症例1:70代女性
現病歴:増大する胃粘膜下腫瘍を指摘され紹介された。
上部消化管内視鏡検査(EGD):胃体上部小弯後壁に 25mm大の粘膜下腫瘍を認めた。
超音波内視鏡検査(EUS):第4層に連続する比較的均一な低エコー腫瘤を認めた。EUS-FNAにてGISTの診断となった。
経過:病変周囲に生理食塩水を局注し、Dualナイフにて切開、剥離を行った。被膜損傷を避けつつ、筋層を一部剥がしながら腫瘍を摘出した。切除後筋層損傷部のみをクリップにて縫縮した。治療時間30分、縫縮時間は5分であった。経過良好で第6病日に退院となった。病理結果はGIST, 20X15mm, Ki-67index<5%で断端陰性であった。
症例2:60代男性
現病歴:前立腺肥大のフォローの腹部超音波検査にて病変を指摘され紹介された。
EGD:前庭部前壁に40mm大の粘膜下腫瘍を認めた。
EUS:第4層に連続する比較的均一な低エコー腫瘤を認めた。
経過:EUS-FNA2回と粘膜下切開生検を実施したが組織診断がつかず、患者と相談のうえ診断治療目的にて切除の方針となった。病変周囲に生理食塩水を局注し、Dualナイフにて切開・剥離を行った。リングクリップを併用し腫瘍を管腔内に引き上げ筋層を一部切開することで2瘤状となった腫瘍を摘出できた。切除後筋層損傷部のみをクリップにて縫縮した。治療時間60分、縫縮時間は5分であった。経過良好で第6病日に退院となった。病理結果はCkit 陰性、PDGFRA陽性、 41X20mm、 Ki-67index<5%で断端陰性であった。
結語:現時点では症例数が少なく、今後多施設での検討が必要であるが、当院における胃粘膜下腫瘍内視鏡切除は安全に施行出来た。
4.胃GIMTに対する内視鏡的切除術の経験
平澤欣吾1)、佐藤勉2)、國崎主税2)
1)横浜市立大学附属市民総合医療センター 内視鏡部
2)同 消化器外科
【目的】胃GIMTに対する内視鏡切除の治療成績から、有効性・安全性を考察する。
【対象・方法】2017年以降の当院における胃GIMTに対しての内視鏡治療症例15例を対象とし、短期治療成績を検討した。
【結果】2017年、当院では30mm以下の管内発育型GIMTに対しEndoscopic Muscularis Dissection (EMD)を導入し、6例の経験を報告している(Dig Endosc. 2020)。この内訳は平均腫瘍径20mm(11-33mm) のGIST5例:平滑筋腫1例であり、治療成績はR0切除率83%(5/6)で、全例クリップ縫縮のみで完遂した。平均在院日数8.5日での周術期に偶発症・合併症は認めず、全症例、現在まで無再発生存中である。
2019年以降は、管外成分を含んだGISTも対象に含み、port併用下でのEFTRを9例経験した。全身麻酔下、腹臥位、臍部へのカメラポートのみ挿入し、腹腔内圧を一定に調整(10mmHg)した環境の元で、EFTRを施行。切除後の全層欠損はOTSCで縫縮し必要に応じてクリップを併用した。平均腫瘍径22mm(10-35mm)での治療成績は、R0切除率88.9%(8/9)であり、EMDと同じく平均在院日数8.5日での周術期に偶発症・合併症は認めなかった。
【考察・結論】
EMDの経験を経て、方法をport併用EFTRへ移行したが、R0切除率は十分であり、その有効性を示唆する結果である。また、port併用のため、腹部コンパートメントなどの懸念無く施行できることは、本法の最大のメリットと考えられる。OTSCでの縫縮も有効と考えられた。しかし、症例数がまだ少なく、今後も症例の蓄積による検討が必要である。
平澤欣吾
Tel.: +81-45-261-5656
Fax: +81-45-253-5382
E-mail: kingo_h@ yokohama-cu.ac.jp