矢作直久(慶應義塾大学医学部 腫瘍センター 低侵襲療法研究開発部門)
2020年5月24日(日)
→新型コロナウイルスの蔓延に伴い、抄録の紙上掲載を以て発表と替えさせていただきます。
国立京都国際会館
本研究会は、日本消化器内視鏡学会の附置研究会として、平成29年度~31年度にわたり活動を行い、春の総会時に合わせて計3回の学術集会を開催した。ここに3年間の活動内容を総括して報告したい。
表在型非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(SNADET)は発見される機会が増加しているが、依然として希少疾患であるために、他の消化管腫瘍とは異なり内視鏡診断学が確立していない。また、治療についても壁が薄く胆汁・膵液に暴露される十二指腸では、術中・術後の偶発症の頻度が高いと報告されており、標準化されていないのが現状である。そこで本研究会は、これらSNADETに対する内視鏡診断、低侵襲治療について発表・議論するとともに、臨床研究に基づくエビデンスを整理し、これらに基づいてSNADETの内視鏡診断法、低侵襲治療法を確立することを目的とした。また世話人会には内視鏡医のみならず病理医、外科医にも加わって頂き、幅広い意見の集約を目指した。実際の学術集会においては、診断、治療のパートに分けて議論を行った。診断に関しては、昨今注目されている腫瘍の粘液形質(胃型、腸型)が腫瘍の生物学的悪性度に関連するとの報告があり、内視鏡診断は組織学的異型度のみならず粘液形質を加味して行うことで疾患の理解が深まるとの報告がなされた。治療に関しては、比較的小型の病変に対して粘膜下層への局注を行わずに切除を行うunderwater EMR(UEMR)や、大腸で普及しつつある通電を行わずに切除を行うcold polypectomyなどの安全性、有用性が報告された。また大型病変に対するESDについては、切除後の創部の保護(クリップ、OTSC、ポリグルコール酸シート被覆など)により偶発症のリスクが減少することが報告された。
さらに本附置研究会におけるプロジェクトとして、世話人の11施設を対象にアンケート調査を行い、SNADETに対する内視鏡治療の実態調査を行った。この結果、過去10年間で世話人の施設だけでも、2,000例を超える内視鏡治療の件数があることが判明した。このためさらに積極的に学会発表を行っている施設を追加して、現在3,000例を超える内視鏡治療症例を集積しており、今後そのデータを解析して得られた結果を報告させて頂く予定である。この3年間の活動を通して一定の成果が得られたが、本研究会の担うべきテーマが多岐にわたり多くの課題が残されていることから、今後も更に日本消化器内視鏡学会の関連研究会として活動を継続し、最終的には表在型十二指腸腫瘍に対する内視鏡診療の方向性を示すことを目指している。
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