一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 Japan Gastroenterological Endoscopy Society

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第3回 十二指腸腫瘍の診断および低侵襲治療に関する研究会

2019年6月2日 1:30 PM - 4:00 PM

会期

2019年6月2日(日) 13:30 ~ 16:00

会場

第11会場(グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール 1階 『旭光』)

代表世話人

矢作 直久(慶応大学医学部 腫瘍センター)

当番世話人

小田 一郎(国立がん研究センター中央病院 内視鏡科)

 

開会の辞(当番世話人挨拶) 3分

小田 一郎(国立がん研究センター中央病院 内視鏡科)

附置研究会アンケート報告(発表15分、質疑8分)

司会:布袋屋修 (虎の門病院 消化器内科)

表在型十二指腸非乳頭部上皮性腫瘍(SNADET)に対する内視鏡治療に関するアンケート集計結果

  1.慶應義塾大学 医学部腫瘍センター

  2.国立病院機構京都医療センター 消化器内科

  3.虎の門病院 消化器内科

  4.がん研有明病院 消化器内科

  5.国立がん研究センター中央病院 内視鏡科

  6.自治医科大学 消化器内科

  7.東京慈恵会医科大学 内視鏡科

  8.獨協医科大学 消化器内科

  9.石川県立中央病院 消化器内科

  10.埼玉医科大学国際医療センター 消化器内科

  11.昭和大学藤が丘病院 消化器内科

  12.杏林大学 消化器外科

  加藤元彦1)、落合康利1)、滝本見吾2)、布袋屋修3)、吉水祥一4)、

  野中哲5)、小田一郎5)、三浦義正6)、原裕子7)、郷田憲一8)、

  土山寿志9)、田島知明10)、山本頼正11)、阿部展次12)、矢作直久1)

 

第1部 十二指腸上皮性腫瘍(腺腫、癌)の臨床病理学的特徴-SM癌の特徴、胃型/腸型などによる違いの検討、部位による違いの検討など-(発表7分、質疑3分)

司会:小山恒男(佐久医療センター 内視鏡内科)、関根茂樹(国立がん研究センター中央病院 病理科)

 

1.当科における胃型形質の表在性十二指腸上皮性腫瘍の臨床病理学的検討

松山赤十字病院 胃腸センター1), 同病理診断科2)

平田 敬1)、蔵原 晃一1)、八板 弘樹1)、大城由美2)

 

2.表在型非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍の臨床病理学的特徴と胃型・腸型分化の関連性の検討

1.国立がん研究センター中央病院 内視鏡科

2.荒尾市民病院 消化器内科

3.佐賀大学医学部附属病院 消化器内科

4.国立がん研究センター中央病院 病理科

山本甲二1, 2, 3、張萌琳1、野中哲1、阿部清一郎1、鈴木晴久1、吉永繁高1、

関根茂樹4、小田一郎1、斎藤豊1

 

3.非乳頭部十二指腸腫瘍における乳頭前・後に関する臨床病理学的特徴

松枝克典、神崎洋光、岡田裕之

岡山大学病院 消化器内科

 

4.表在性非乳頭部十二指腸腫瘍の内視鏡的乳白色所見に関する臨床病理学的検討

東京慈恵会医科大学 内視鏡医学講座1)

獨協医科大学 内科学 (消化器) 講座2)

原 裕子1), 郷田憲一2), 炭山和毅1)

 

5.非乳頭部十二指腸SM癌のリンパ節転移危険因子に関する臨床病理学的検討

1.がん研有明病院 消化器内科

2.同 病理部

3.同 肝胆膵外科

4.昭和大学藤が丘病院 内視鏡センター

吉水祥一1 河内洋2 山本頼正4伊藤寛倫3 藤崎順子1

 

第2部 十二指腸上皮性腫瘍(腺腫、M癌、SM癌)に対する治療の現状と問題点-Cold polypectomy、EMR、ESD、外科手術等の適応、治療成績、問題点など-(発表7分、質疑3分)

司会:矢作直久(慶応大学医学部 腫瘍センター)、小田 一郎(国立がん研究センター中央 内視鏡科)

 

1.当院における非乳頭部十二指腸表在性腫瘍に対する治療戦略

岡山大学病院 消化器内科  

山崎 泰史、神崎 洋光、岡田 裕之

 

2.十二指腸上皮性腫瘍に対する新たなEMR手技“Over-the-scope clip併用EMR(EMRO)”の治療成績

埼玉医科大学国際医療センター 消化器内科

田島知明 野中康一 良沢昭銘

 

3.当院における十二指腸ESDの治療成績

NTT東日本関東病院 消化器内科

村元 喬、大圃 研

 

4.十二指腸傍乳頭部腫瘍に対する内視鏡的粘膜下層剥離術の治療成績の検討

京都府立医科大学大学院 消化器内科学

石田 紹敬 土肥 統 内藤裕二

 

5.家族性大腸腺腫症 (FAP) 症例における半周性の表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍に対する浸水下内視鏡的粘膜切除術(U-EMR)と内視鏡的縫縮術(LACC)

大阪国際がんセンター 消化管内科

中平 博子 竹内 洋司 上堂 文也  石原 立

 

6.十二指腸SM癌に対する新たなオプション?—先行内視鏡的切除と膵頭十二指腸温存腹腔鏡下リンパ節郭清術の併用(症例報告)

杏林大学外科1)

杏林大学消化器内科2)

NTT東日本関東病院消化器内科3)

阿部展次1、橋本佳和1、大木亜津子1、竹内弘久1、阪本良弘1、森俊幸1

大野亜希子2

 大圃研3

 

7.十二指腸ESDの診療報酬点数は適正か?

1)慶應義塾大学 医学部 消化器科内科

2)慶應義塾大学 医学部 腫瘍センター 低侵襲療法研究開発部門

水谷真理1)、加藤元彦1), 2)、落合康利2)、矢作直久2)

 

閉会の辞(代表世話人挨拶) 4分

矢作 直久(慶応義塾大学医学部 腫瘍センター)

 

抄録

1.  表在型十二指腸非乳頭部上皮性腫瘍(SNADET) に対する内視鏡治療に関するアンケート集計結果

【背景】十二指腸上皮性腫瘍に対する内視鏡治療の実態については、疾患の希少性もあり一部のhigh volume center からの単施設報告にとどまっており、不明な点も多い。今回上記を明らかにするため本附置研会世話人施設での多施設アンケート調査を行った。

【方法】研究デザインは多施設アンケート調査。過去 10 年間の十二指腸 EMR/ESD の件数、短期成績、切除後病理所見、などをウェブ上のアンケート・フォームで集計した。

【結果】参加 11 施設での過去 10 年間の内視鏡治療件数は ESD730 例、EMR 1306 例の計 2036 例、参加施設の最近 1 年間の内視鏡治療件数は合計 390 件であった。偶発症の発生頻度は後出血が ESD 4.7%、EMR 2.2%、穿孔が ESD 12.8%、EMR0.6%、遅発穿孔が ESD 2.1%、EMR 0%であった。偶発症や治療困難による手術移行は 2.1%に見られ、術後 30 日以上の長期入院を要した症例は 12 例、0.59%に見られた。切除後の病理で癌と診断された症例は 32%で、SM 浸潤癌を 23 例、1.1%に認めた。

2 . 当科における胃型形質の表在性十二指腸上皮性腫 瘍の臨床病理学的検討

【目的】胃型形質の表在性十二指腸上皮性腫瘍(SNADETs)の臨床病理学的特徴を明らかにすること。

【対象と方法】当院で 2007 年 3 月から 2018 年 12 月の期間に内視鏡検査を施行し、内視鏡的切除や外科的手術で SNADETsと診断された症例の内、胃型マーカー(MAC5AC、MUC6)と腸型マーカー(MUC2、CD10)を用いた免疫染色を施行し、胃型形質と診断された SNADETs 26 症例 28 病変を対象とし、その臨床病理学的所見を遡及的に検討した。

【結果】胃型形質の SNADETs 症例の平均年齢は 71.8 歳で、男性 21 例、女性が 5 例であった。病理組織学的には、腺腫 11病変、NUMP(neoplasms of uncertain malignant potential)14病変、腺癌 3 病変に分類された。

胃型腺腫の平均腫瘍径は 9.1mm で、球部に 8 病変、下行部に3 病変であった。肉眼型は隆起型を呈するものが 6 病変、正常粘膜に覆われた粘膜下腫瘍様の形態を呈するものが 5 病変であった。色調は淡紅色が 8 病変、周囲と同色調のものが 3 病変であった。NUMP の平均腫瘍径は 7.4mm で、球部に 10 病変、下行部に 4 病変であった。肉眼型は粘膜下腫瘍様の形態を呈するものが 11 病変、隆起型を呈するものが 2 病変であった。色調は淡紅色が 8 病変、周囲と同色調のものが 6 病変であった。腺癌の平均腫瘍径は 10.3mm で、いずれも球部に位置していた。肉眼型は隆起型を呈するものが 2 病変、粘膜下腫瘍様の形態を呈するものが 1 病変であった。色調はいずれも淡紅色であった。

胃型形質の SNADETs 28 病変のなかで WOS を伴っていたのは 3 病変のみであった。また内視鏡治療の前に生検が施行されたのは 19 病変で、19 例病変の内 15 病変(78.9%)で術前に胃型腫瘍の可能性が示唆されていた。

【結論】胃型形質の SNADETs と、Brunner 腺過形成・過誤腫や腺窩上皮過形成 / 腺窩上皮過形成性ポリープなどの腫瘍様病変との鑑別は、内視鏡所見のみでは困難なことも多く、また、術前生検の正診率も比較的高いことから、必要性に応じて生検による病理学的な評価も有用と考えられた。

3 . 表在型非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍の臨床病理学 的特徴と胃型・腸型分化の関連性の検討

[背景]表在型非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍は稀だが、近年増加傾向にあるとされる。表在型非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍の臨床病理学的特徴と胃型・腸型分化の関連性について多数例での報告は少ない。

[方法]2000 年 1 月から 2017 年 5 月に当院で治療した表在型非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍 176 例 179 病変について、胃型・腸型分化と臨床病理学的特徴を後方視的に検討した。術後胃と遺伝性疾患及び粘液形質が判定不能のものは除外した。

[結 果]性別(男 / 女)は 121/55 例、平均年齢 63.6 ± 11 歳であった。発見契機はスクリーニングが多く(110 例 , 62.5%)、内視鏡的萎縮( 無 / 有 ) は 80/96 例(Cl/C2/C3/O1/O2/O3=19/26/8/21/8/14)例であった。治療方法(内視鏡切除 / 手術)は 159/20 病変、腫瘍径中央値 14mm(3-77mm)、部位(球部 / 下行部 / 水平部)は 31/132/16 病変、病理組織診断(腺腫 /粘膜内癌 / 粘膜下層浸潤癌)は 63/111/5 病変、肉眼型(隆起型/ 陥凹成分あり)は 141/38 病変であった。胃型 : 腸型は 26:153病変で、多発の 3 病変は、胃型 : 腸型 0:6 病変であった。胃型・腸型分化と年齢、性別、発見契機、内視鏡的萎縮(無 / 有)との 有意な関 連 はなかった。胃型 : 腸型 の 平均腫瘍径は17.4mm:16.9mm、病理組織診断(腺腫 / 癌)は 7/19:56/97 病変、肉眼型(隆起型 / 陥凹成分あり)は 23/3:118/35 病変であり、有意差はなかった。胃型:腸型の病変部位(球部/下行部~水平部)は 22/4:9/144 と胃型において有意に球部に多かった(p <0.05)。

[結語]表在型非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍において胃型腫瘍は球部に多かった。

4.  非乳頭部十二指腸腫瘍における乳頭前・後に関す る臨床病理学的特徴

【背景】 近年、表在型非乳頭部十二指腸腫瘍において乳頭前・後での粘液形質や発生学的な違いがあることが報告されているが、進行癌を含めた検討はされていない。

【目的】 多施設の症例集積から進行癌を含めた非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍について乳頭前・後での臨床病理学的特徴を比較検討した。

【方法】 2002 年 6 月から 2014 年 3 月の間に研究参加施設にて組織学的に十二指腸腺腫、癌と診断された 410 症例の臨床病理学的特徴を retrospective に解析した。組織学的異型度は revised Vienna classification(VCL)に準じ、VCL 3 / 4(low grade neoplasia / mucosal cancer)を粘膜内腫瘍とし、粘膜下層以深への浸潤を生じた VCL 5(submucosal invasion by carcinoma)を浸潤癌と定義し、2 群に分類して検討した。

【結果】 男性 267 例、女性 143 例、年齢中央値は 67(29-89)歳、腫瘍径中央値は 10(2-100)mm、病変部位は乳頭前 222 例、乳頭後188 例であった。組織学的診断は粘膜内腫瘍 321 例、浸潤癌89 例に分類された。乳頭前・後での比較は、浸潤癌は乳頭前/後にそれぞれ 62 / 27 例認め、乳頭前に有意に多かった(27.9% vs. 14.4% , P < 0.001)。粘膜内腫瘍における VCL3、4の乳頭前/後の分布も VCL4 が乳頭前に有意に多かった(28.7% vs. 19.3% , P = 0.046)。また、全体で未分化型癌は 28例認め、乳頭前に有意に多い結果であった(38.7% vs. 14.8% ,P = 0.026)。切除可能であった局所進行癌において R0 切除された症例の中で、術後再発率が乳頭前において有意に高く(46.4% vs. 8.3% , P = 0.021)、無再発生存期間も乳頭前で有意に短い結果であった(HR: 2.35; 95% confidence interval: 1.09‒5.50; P = 0.028)。

【結語】 進行癌を含めた非乳頭部十二指腸腫瘍は、表在型非乳頭部十二指腸腫瘍と同様に乳頭前・後で臨床病理学的に異なる特徴を持っており、乳頭前の非乳頭部十二指腸腫瘍は乳頭後と比べより浸潤癌となりやすく、また、生物学的にも悪性度が高い可能性が示唆された。

5.  表在性非乳頭部十二指腸腫瘍の内視鏡的乳白色所見に関する臨床病理学的検討 

【目的】表在性非乳頭部十二指腸腫瘍(SNADET; superficial non-ampullary duodenal epithelial tumors)の多くが乳白色調粘膜(MWM; milk-white mucosa)を伴うこと、また MWMは組織学的に上皮に蓄積した脂肪滴であることを我々は報告してきた。しかし、ズダン染色による凍結標本を用いた検討では組織挫滅等の問題があり、詳細な検討が困難であった。最近、アディポフィリン・リポ蛋白(ADRP)染色を用いて、固定標本上で上皮内脂肪滴の存在を評価することが可能となった。そこで本研究では、内視鏡切除標本を用いて SNADET におけるMWM の発現分布と ADRP 染色所見および腫瘍異型度とのの関連性を明らかにしたい。

【方法】2014 年 4 月~2017 年 7 月に当院で内視鏡切除したSNADET のうち、切除標本の切り出しにより MWM の存在診断と分布を評価しえた 92 例を対象とした。組織学的に最大割面の切片に対して ADRP 染色を施し、内視鏡所見をブラインドにして消化管専門の 2 人の病理医が上皮内脂肪滴の割合について評価した。最大割面に一致する部位の内視鏡的MWM の割合について、切除当日の NBI 拡大内視鏡像を用いて 2 人の内視鏡医が組織診断をブラインドにして評価した。最大割面の病変表層における MWM の発現と ADRP 陽性部の割合における相関関係を解析した。また病変全体におけるMWM 陽性率と異型度の関連についても検討した。

【結果】92 例の最終組織は高異型度 / 低異型度腺腫 :39/53 例であった。切除標本の最大割面における内視鏡的 MWM とADRP 陽性率はほぼ一致しており、統計学的に有意な相関を認めた(相関係数 :0.867,p < 0.001). MWM 陽性率(%)が LGD群 :61.08 ± 28.07 が HGD 群 :37.69 ± 31.37 に比し有意に高かった(p < 0.001)。

【結論】MWM が上皮内脂肪滴を的確に描出していること、また MWM 陽性率は腫瘍異型度の予測に有用である可能性が示唆された。

6.  非乳頭部十二指腸 SM 癌のリンパ節転移危険因子に関する臨床病理学的検討

【背景・目的】非乳頭部十二指腸 SM 癌(SM 癌)は,他臓器と同様に転移リスクがあり,リンパ節転移(LNM)陽性例は予後不良となることが示唆されている.しかしながら,SM 癌はその疾患頻度の低さから臨床病理学的特徴が明らかになっていない.

【対象・方法】当院では 2006 年~2018 年に早期十二指腸癌149 例に対して内視鏡的切除(ER)または外科切除を施行した.

最終病理診断に基づき M 癌 137 例(92%)と,SM 癌 12 例(8%)の臨床病理学的所見を比較検討した.また,SM 癌の LNM 危険因子について検討した.

【結果】患者背景は男性 92 例,女性 57 例,年齢中央値 64 歳(36-86),治療方法は ER: 外科切除= 84:65 例であった.M 癌と SM 癌の比較では,腫瘍径,色調には有意差がなかった.

部位が乳頭口側の割合は,M 癌 :SM 癌= 47%(65/137 例):83%(10/12 例)と SM 癌で有意に多く(P=0.017),肉眼型が複合型(0-Ⅱa+Ⅱc)の割合は,M癌:SM癌=5%(5/137例):50%(6/12例)と SM 癌で有意に多かった(P < 0.001).脈管侵襲(LVI)陽性率は M 癌 :SM 癌= 0%(0/137 例):50%(6/12 例)と SM 癌で有意に高かった(P < 0.001).免疫染色による SM 癌 12 例の形質発現は,胃型 4 例,混合型(胃型優位)7 例,腸型 1 例であった.

所属リンパ節郭清を行った外科切除例の LNM 陽性率は,M癌:SM癌=0%(0/31例):46%(5/11例)とSM癌で有意に高かった(P < 0.001).SM 癌における組織型別の LNM 陽性率は,高・中分化 : 低分化= 25%(2/8 例):100%(3/3 例)であり,低分化は全例が LNM 陽性であった.LVI 陽性例の LNM 陽性率は60%(3/5 例),LVI 陰性例の LNM 陽性率は 33%(2/6 例)であった.SM 浸潤距離別では,粘膜筋板からの浸潤距離が< 500 オm:500~999 オ m:1000 オ m ≤= 50%(2/4 例):50%(1/2 例):40%(2/5 例)であり,浸潤距離が< 500 オ m であっても LNM 陽性例を認めた.

【結語】少数例の検討ではあるが,SM 癌の LNM 陽性率 45%と高頻度であった.組織型に関わらず,浸潤距離が SM 浅層までの病変であっても LNM 陽性例を認めた.

7 . 当院における非乳頭部十二指腸表在性腫瘍に対す る治療戦略

【背景】近年、コールドポリペクトミー、Underwater EMR(UEMR)の出現により、非乳頭部十二指腸表在性腫瘍に対する内視鏡治療は変容を遂げつつある。当院では、遡及的検討の結果から腫瘍径、組織型(低異型度腺腫 or 高異型度腺腫/癌)に応じた治療戦略を立てており、6mm 以下の低異型度腺腫はCold forceps polypectomy(CFP)、7-20mm は UEMR、21mm以上は校費で Duodenal-laparoscopic and endoscopic cooperative surgery(D-LECS)を行っている。今回、その治療成績に関して報告する。

【対象及び方法】対象は 2016 年 1 月から 2019 年 1 月の間に、当院で切除を行った非乳頭部十二指腸表在性腫瘍 64 病変。病変背景及び治療成績を遡及的に検討し、治療戦略の妥当性を検証した。

【結果】CFP は 26 病変に施行した。全例外来で施行し、腫瘍径中央値 は 5(2-8)mm で、全例低異型度腺腫であった。偶発症なく全例消失が確認されているが、2 病変は CFP 後に遺残を認めたため、再度の CFP を施行し、その後の内視鏡検査で消失を確認した。UEMR は 32 病変に施行し、UEMR 後創部を全例クリップ縫縮した。腫瘍径中央値 12(6-30)mm で、低異型度腺腫 16 病変、高異型度腺腫 / 粘膜内癌 16 病変であった。一括切除は 24 病変(75%)で、主に 15mm 以上の病変 8 病変(25%)は分割切除となった。28 病変は UEMR3 か月後内視鏡検査を施行しており、遺残再発は認めていない。1 例でUEMR2 日後に出血を認めたが、内視鏡的クリップの追加で止血可能であった。D-LECS は 6 病変に対して施行した。1 例は20mm 以下であったが、ブルネル腺由来の陥凹性病変で、UEMR 困難と判断し LECS を施行した。腫瘍径中央値は 30(12-45)mm であり、低異型度腺腫 1 病変、高異型度腺腫 / 癌5 病変であった。偶発症として一過性の腸閉塞ならびに胃排泄遅延をそれぞれ 1 例ずつ認めたが、保存的加療で改善した。

【結語】腫瘍径や組織型に応じて治療法を選択することにより、有効で安全な内視鏡治療が可能になると考える。

8 . 十二指腸上皮性腫瘍に対する新たな EMR 手技 “Over-the-scope clip 併用 EMR(EMRO)” の治 療成績 

【背景】十二指腸 EMR は比較的サイズの小さな病変に選択され ESD と比較すれば手技の難易度は低いとされるが、必ずしも容易で安全な手技とは言えない。表在性非乳頭部十二指腸腫瘍(SNADET)は平坦病変や小病変でも lifting 不良な場合や局在によっては EMR での一括切除困難として ESD への移行を余儀なくされ、EMR を強行すると分割切除や遺残する症例もある。我々はこのような十二指腸 EMR の問題点を解決するべく消化管全層縫合デバイスである Over-The-Scope Clip(OTSC)を 併 用 し た 新 た な EMR 手 技 “EMR with OTSC(EMRO)” を考案した。

【目的】EMRO の治療成績の検討と有用性、安全性の評価

【対象と方法】2017 年 9 月から 2019 年 1 月に当科で EMRO を施行した 10mm 以下の SNADET 14 病変で、局注での lifting不良または局在が原因で通常の EMR による一括切除が困難と判断したもの、術前生検にて癌と診断されたものを対象とした。これらに対し標本径、腫瘍径、術時間、一括切除 / 断端陰性切除率、術時間、穿孔 / 後出血率、最終病理診断、入院期間を retrospective に評価した。

【手技の実際】手技は鎮静剤使用下に内視鏡室で施行。腫瘍基部に OTSC を留置することで病変を偽ポリープ様の形態としスネアリングする。また OTSC の特徴を生かし未然に穿孔を予防する。最終的に OTSC 直上にスネアリングし粘膜下層を含めて十分な切除を行う。出血時も安全に焼灼止血できる。

【結果】平均標本径 13.1(11-15)mm、平均腫瘍径 8.1(5-10)mm、一括切除率 / 断端陰性切除率ともに 100%、平均術時間 14.9(8-20)分、穿孔率 / 後出血率 0/7.1(1/14)%、最終病理診断は腺腫10 例 / 癌 4 例(M:SM;3:1)であった。術後平均入院期間 2.5(2-3)日。後出血 1 例は止血鉗子にて止血した。

【結論】EMRO の適応は現状 10mm 以下の病変に限られるが病変の lifting の良し悪しに関わらず十分な切除ができる。さらに術中・術後穿孔を理論上回避でき、十二指腸内視鏡治療の選択肢の 1 つとなる可能性がある。

9 . 当院における十二指腸 ESD の治療成績

【背景】表在性非乳頭部十二指腸腫瘍(Superficial nonampullary duodenal epithelial tumor:SNADET)に対する内視鏡治療(ER:Endoscopic Resection)は外科治療に比して侵襲度が低い反面、胆汁膵液曝露による遅発性穿孔・後出血が問題となる。

当院では 2016 年 4 月以降 ER 後の潰瘍底を OTSC(over-thescope-clip)system で縫縮する ER-OTSC を主に行ってきた。ER は EMR-C もしくは ESD とし、10mm以上もしくは 10mm以下でも lifting が不良な病変に対して ESD を選択している。

【目的】ESD-OTSC の SNADET に対する治療成績の評価を行う。

【方法】対象は 2016 年 4 月から 2018 年 12 月までの間に、SNADET に対し ESD-OTSC を施行した連続 142 例。患者背景、治療成績について前向きに解析した。

【成績】背景は平均年齢 59.7(24-83)歳、男:女 =85:57、病変部位(球部 / 下行部 / 水平部)9/114/19、平均腫瘍径 19.2(3-63)mm、平均切除標本径 24.6mm(6-76)であった。一括切除術率100%、R0 切除率 88.0%(125/142)、病理組織は腺腫 : 癌が43:99(粘膜内癌 94 例、粘膜下層浸潤癌 5 例)、平均術時間 46.1分(5-300 分)、平均術後在院日数 5.9 日であった。OTSC による潰瘍底の完全縫縮率 93.0%(132/142)、平均 OTSC 使用は 1.3(1-4)個、平均縫縮時間 16.3(3-98)、完全縫縮では OTSC 単独が 112 例、留置スネアと OTSC の併用が 20 例であった。10 例で縫縮不成功(縫縮困難 6 例、不完全縫縮 4 例)を認めた。縫縮困難例のうち PGA シートを貼付したものが 5 例、クリップ縫縮が 1 例であった。不完全縫縮 4 例のうち腹腔鏡による追加縫縮施行が 2 例、残り 2 例は追加処置をせず経過観察とした。合併症は、OTSC 縫縮困難で PGA シートを貼付した乳頭近傍の病変で術直後に止血困難な出血を来たし緊急開腹手術となった症例が 1 例(0.7%)、その他後出血 10 例(7.0%)、OTSC 不完全縫縮後の遅発性穿孔 1 例(0.7%)、OTSC による食道の裂創 1 例(0.7%)、膵炎 1 例(0.7%)で認めたが、いずれも保存的に改善を認めた。

【結論】ESD-OTSC は低侵襲かつ術後合併症予防の点で有用であった。一方で OTSC による潰瘍底の縫縮は局在によって困難な場合があること、再施行が不可能なこと、不完全縫縮となった後の対処が今後の課題である。

10 . 十二指腸傍乳頭部腫瘍に対する内視鏡的粘膜下層剥離術の治療成績の検討

【背景】乳頭部近傍の病変はその局在から腹腔鏡・内視鏡合同手術は困難であり , 内視鏡切除も手技的に最難関の病変である . 今回 , 乳頭より 10mm 以内の近傍に存在する非乳頭部病変を傍乳頭部腫瘍(PT)とし , 非傍乳頭部腫瘍(NT)と比較検討した .

【対象と方法】2017,2018 年に ESD を施行した十二指腸腫瘍のうち ,PT3 例 ,NT35 例を対象とした.

【結果】臨床的特徴として男女比(PT/NT 3:0/23:12), 平均年齢(PT/NT 64.3/61.7歳 ), 平 均 腫 瘍 径(PT/NT 30/16.9mm), 主 肉 眼 型(PT/NT I:IIa:IIb:IIc 1:1:0:1/3:22:0:10)であった . 全例ハサミ鉗子を用い ,OTSC 及びクリップによる縫縮を行なった .PT では治療範囲に乳頭が含まれたため ,ERBD 留置も行なった . 治療成績は平均治療時間(PT/NT 97/70 分), 平均縫縮時間(PT/NT 45/22分 ), 完 全 縫 縮 率(PT/NT 100/97.1 %),R0 切 除 率(PT/NT 100/94.3%), 一括切除率(PT/NT 100/100%), 偶発症(PT/NT 0/5.7%)で , 病理学的特徴は(PT/NT adenoma:TB1: その他2:1:0/1:30:4), 深達度(PT/NT M:SM1:SM2 3:0:0/28:2:1)で , 脈管侵襲は認めなかった . PT 群では有意に腫瘍径が大きく , 治療時間や ERBD 留置に伴って縫縮時間も長いが , 完全縫縮は可能であり , 治療成績にも差はなかった .

【考察】PT に対する治療は手技的困難が伴うが ,PCM やハサミ鉗子の使用などの手技の工夫で , その局在によらず ,NT 同様の治療をなし得ると考えられた .

11.  家族性大腸腺腫症(FAP)症例における半周性の表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍に対する浸水下内視鏡的粘膜切除術(U-EMR)と内視鏡的縫縮術(LACC) 

【背景】我々は FAP 症例における多発非乳頭部十二指腸腺腫に対して Cold Snare Polypectomy(CSP)の安全性を報告してきたが,大きな病変または悪性を疑う病変に対する安全な治療法は確立していない .

【症例】40 歳台 女性.家族歴は特記事項なし.33 歳時にFAP と診断され内視鏡的徹底的摘除中,横行結腸に粘膜下層深部浸潤癌を指摘され腹腔鏡下結腸亜全摘術を施行された . 上部消化管内視鏡検査でも十二指腸に多発ポリープを指摘され,当科紹介受診した.

【上部内視鏡所見】多発する十二指腸ポリープ及び下十二指腸角内側に約半周性の白色調扁平隆起を認めた .

【治療経過】分割 underwater endoscopic mucosal resection(U-EMR)を実施し , 粘膜欠損部を LACC(a line-assisted complete closure)technique を用いて縫縮した . 病理診断は低異型度管状腺腫で , 断端不明瞭であった.穿孔や術後出血などの有害事象はみられず , 1 年後の内視鏡検査では治療部は瘢痕化し再発は認められなかった .

【結語】UEMR は FAP 症例における大きな十二指腸腺腫に対して安全に実施可能であった.

12.  十二指腸 SM 癌に対する新たなオプション?—先 行内視鏡的切除と膵頭十二指腸温存腹腔鏡下リン パ節郭清術の併用(症例報告)

(背景)十二指腸腺腫・粘膜内癌に対する内視鏡的切除(ER)が積極的になされるようになり、術前診断の困難さから術後 SM癌判明症例が今後増えてくる可能性がある。このような場合、リンパ節転移の可能性から、追加標準治療は膵頭十二指腸切除術(PD)であることに大方異論はないだろう。しかし、十二指腸 SM 癌は症例数も少ないことから、リンパ節転移のリスクファクター解析は十分に進んでいない。このような現状で、ER 後 SM 癌判明症例に対する画一的な PD は本当に正しい方針なのだろうか。

(目的)ER 後 SM 癌判明症例で、追加外科的戦略としての腹腔鏡下リンパ節郭清術により PD を回避した症例を経験したので報告する。

(症例)64 歳男性。十二指腸下行部 8mm 大の 0-IIa+IIc 病変。ER 後の病理診断:tub1, sm400 オ m 浸潤 , 脈管侵襲陰性 , 断端陰性。追加治療として PD が標準治療であることを十分に説明したうえで、腹腔鏡下リンパ節郭清術を患者が希望した。また、術後永久リンパ節標本でリンパ節転移陽性であれば PDを施行することは承諾された。手術:腹腔鏡下での ICG 蛍光観察法を用いて、膵頭十二指腸周囲のリンパ流を観察し、ICG流出領域を中心にリンパ節郭清術を行った(#6, 13a, 8a 領域)。手術時間は 208 分、出血量は 30mL であった。術後は順調に経過し、第 7 病日に退院された。リンパ節は病理組織学的に転移陰性(0/16)と診断された。術後 1 年の経過観察中に転移・再発は認めていない。

(結論と考察)先行 ER と腹腔鏡下リンパ節郭清術の併用は、十二指腸 SM 癌に対する低侵襲な治療 / 診断的戦略として有用である可能性が示唆された。本法は PD を回避でき、術前と変わらない QOL を確保できる。今後は、十二指腸 SM 癌のリンパ節転移予測因子の解析が進むことが期待され、ER 後 SM癌判明症例かつきわめて低いリンパ節転移率が予測された場合などにおいて、腹腔鏡下リンパ節郭清術は追加外科的戦略のオプションとして期待できるかもしれない。

13 . 十二指腸 ESD の診療報酬点数は適正か? 

【背景・目的】十二指腸 ESD(D-ESD)は、技術的難易度が高く、出血・穿孔などの偶発症のリスクも高いことが知られている。このため術中の麻酔、粘膜欠損部の縫縮などによる遅発性偶発症の予防、実際に発生した偶発症の管理などに多くの費用を要すると考えられる。他方、D-ESD の保険点数は 18,370 点と胃 ESD(G-ESD)と同額であるが、実際に D-ESD に要する費用に関しては報告がほとんどなく、その実態は不明である。

上記を明らかにするため検討を行った。

【対象・方法】研究デザインは単施設、後ろ向きの断面調査である。2016 年 7 月から 2017 年 6 月までに、当院で D-ESD、G-ESD を施行した患者を対象に、医療費を比較した。なお医療費は内視鏡治療に使用したデバイスの費用、術中の薬剤費、術後偶発症予防に要した材料費、偶発症のために追加で実施した処置の費用、入院医療費の合計とした。なお手技の診療報酬は医療費には含まなかった。術中に使用した薬剤費、入院医療費は DPC 点数から算出し、デバイスや材料の費用は実際に使用した物品の個数から算出した。

【結果】対象は D-ESD 49 例、G-ESD 106 例であった。両群の総医療費は中央値[range]403,940[280,340-2,777,340] 円、312,200[224,330-1,871,430]円と D-ESD 群で有意に高い結果であった(p < 0.01)。内訳別に見ると、治療に使用したデバイス、偶発症に対する追加処置では差を認めなかったが、治療時に使用した薬剤費(17,770[3,430-403,780]円 vs 6,815[1,090-134,910]円 , p < 0.01)、術後偶発症予防に用いた材料費(10,725[0-104,867]円 vs 0[0-87,167]円 , p < 0.01)、入院医療費(260,750[177,530-1,889,880]円 vs 225,100[162,090-1,818,310]円 , p <0.01)はいずれも D-ESD 群で G-ESD 群に比して有意に高かった。

【考察】D-ESD では G-ESD に比べて多くの医療費がかかっており、現在の診療報酬点数はその高い技術的難易度とリスクには見合っていないと考えられる。

詳細

日付:
2019年6月2日
時間:
1:30 PM - 4:00 PM
イベントカテゴリー:

会場

グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール
高輪3-13-1
港区, 東京都 108-0074 Japan
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Phone
03-3442-1111
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