2018年5月12日(土)13:30~16:00
第7会場(グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール2階 『松葉』)
矢作 直久(慶応大学腫瘍センター)
小山 恒男(佐久医療センター 内視鏡内科)
矢作 直久(慶応大学腫瘍センター)
司会:山本 博徳(自治医大消化器内科)、八尾 隆史(順天堂大学病理)
東邦大学医療センター大森病院消化器内科1)、虎の門病院消化器内科2)
○鳥羽 崇仁1)2)、布袋屋 修2)、五十嵐 良典1)
岩手医科大学消化器内科消化管分野1)、開運橋消化器内科クリニック2)
○鳥谷 洋右1)、遠藤 昌樹1)2)、松本 主之1)
大阪国際がんセンター 消化管内科1)、岡山大学病院 消化器内科2)
○山崎 泰史1)2)、竹内 洋司1)、上堂 文也1)、石原 立1)
岡山大学病院 消化器内科1)、岡山済生会総合病院 内科2)
○榮 浩行1)、神崎 洋光1)、那須 淳一郎2)、岡田 裕之1)
独立行政法人国立病院機構京都医療センター 消化器内科1)、 病理診断科2)
○滝本 見吾1)、岩本 諭1)、水本 吉則1)、勝島 慎二1)、森吉 弘毅2)
司会:矢作 直久(慶応大学腫瘍センター)、小山 恒男(佐久医療センター内視鏡内科)
大阪国際がんセンター 消化管内科1)
○濱田 健太1)
自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門1)
○三浦 義正1)、井野 裕治1)、岩下 ちひろ1)、岡田 昌浩1)、坂本 博次1)、林 芳和1)、矢野 智則1)、砂田 圭二郎1)、山本 博徳1)
佐久医療センター 内視鏡内科1)
○高橋 亜紀子1)、小山 恒男1)
慶應義塾大学 医学部 腫瘍センター 低侵襲療法研究開発部門1)
○加藤 元彦1)、落合 康利1)、矢作 直久1)
がん研有明病院 消化器内科1)、昭和大学藤が丘病院 消化器内科2)、愛媛県立中央病院 消化器内科3)、がん研有明病院 消化器外科4)
○吉水 祥一1)、山本 頼正2)、富田 英臣3)、藤崎 順子1)、齋浦 明夫4)、比企 直樹4)
小山 恒男(佐久医療センター 内視鏡内科)
1.表在性非乳頭部十二指腸腫瘍(SNADET)の占拠部位における臨床病理学的特徴の検討
東邦大学医療センター大森病院消化器内科1)、虎の門病院消化器内科2)
鳥羽 崇仁1)2)、布袋屋 修2)、五十嵐 良典1)
【緒言】表在型非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(SNADET)は比較的まれな疾患であるが、近年、内視鏡技術の進歩によりSNADETが発見される機会が増加している。しかしながら、SNADETの病態については未だ明らかにされておらず、その診断、治療についても確立されていないのが現状である。十二指腸は組織学的にVater乳頭の口側と肛門側では異所性胃粘膜の存在やBrunner腺の有無などの背景が異なっており、発生する腫瘍も病変占拠部位によって病態が異なる可能性がある。【目的】SNADETの占拠部位(Vater乳頭口側vs肛門側)による臨床病理学的特徴の相違を明らかにする。【方法】2005年1月から2015年12月までの間に当院にて内視鏡的に切除されたSNADET138病変を用い、病変占拠部位における臨床病理学的特徴につきretrospectiveに解析した。【結果】SNADET138病変の背景は男性92例、女性46例、平均年齢60.7(31-89)歳、平均腫瘍径16.9(2-79)mm、病変占拠部位はVater口側62例、Vater肛門側76例、肉眼型は隆起性病変96例、陥凹性病変42例、組織学的異型度は腺腫122例、癌16例であった。病変占拠部位における臨床病理学的因子を統計学的に解析すると、女性では男性と比較してVater肛門側に病変が多かった(p=0.04)。また、Vater口側の病変は肛門側の病変と比較して腫瘍径が大きく(p=0.04)、Vater口側の病変で胃型形質の病変が多かった(p=0.014)。年齢、肉眼型および組織学的異型度においては有意差を認めなかった。【結語】Vater乳頭口側と肛門側では、腫瘍の発生機序や病態が異なる可能性がある。
2.十二指腸非乳頭部上皮性腫瘍のクリスタルバイオレット拡大内視鏡所見と臨床病理学的検討
岩手医科大学消化器内科消化管分野1)、開運橋消化器内科クリニック2)
鳥谷 洋右1)、遠藤 昌樹1)2)、松本 主之1)
【目的】十二指腸非乳頭部上皮性腫瘍(Non-ampullary duodenal epithelial tumors: NADETs)のクリスタルバイオレット拡大内視鏡所見と粘液形質を遡求的に検討し、臨床病理学的特徴との関連を明らかにする。【方法】2006年2月から2017年9月までに当科で診断したNADETs102例のうちクリスタルバイオレット拡大観察所見が解析可能であった55例を対象とし、粘液・免疫組織化学染色を含めた臨床病理学的所見を検討した。【結果】性別は男性42例、女性13例、診断時年齢の中央値は66歳で、病変部位はVater乳頭の口側が28例、肛門側が27例であった。腫瘍径の中央値は10mmで、肉眼型は隆起型40例、陥凹型15例であった。最終病理診断は腺腫41例、高異型度腺腫ないし癌が14例で、内訳は管状腺腫/管状絨毛腺腫45例、癌6例、幽門腺型腺腫4例であった。粘液形質は胃型8例、腸型34例、混合型13例であった。胃型は腸型に比較しVater乳頭の口側に好発し(P=0.035)幽門線型腺腫の頻度が高かった(P<0.001)。通常内視鏡所見として、白色絨毛が46例(83.6%)で認められ、その陽性率は胃型で腸型・混合型よりも有意に低かった(P<0.001)。クリスタルバイオレット拡大観察のパターンは胃型と腸型・混合型で異なり(P=0.028)、胃型腫瘍8例中5例でpineconeパターンがみられ、そのうち4例が幽門腺型腺腫であった。【結論】NADETsでは白色絨毛の頻度と拡大内視鏡の表面構造が粘液形質によって異なる。胃型腫瘍、特に幽門線型腺腫ではpineconeパターンが特徴的である。
3.非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍に対する生検の省略を目指したNBI所見分類の遡及的検討
大阪国際がんセンター 消化管内科1)、岡山大学病院 消化器内科2)
山崎 泰史1)2)、竹内 洋司1)、上堂 文也1)、石原 立1)
背景:非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(NADET)の生検診断は腺腫と癌の鑑別が難しいとされており、生検で腺腫であっても内視鏡治療が必要である。しかし、生検による線維化で治療が困難となることもある。生検なしでNADETと非腫瘍の鑑別ができれば治療困難例を減らすことができる。
方法:2015年1月-2016年4月に大阪国際がんセンターで上部内視鏡検査を受けた8922名中、十二指腸限局性病変に対して生検が施行された187名を対象とした。進行癌:悪性リンパ腫:乳頭部腫瘍:FAP:焦点のあった画像がない症例:80名を除外し、107名114病巣(NADET:非腫瘍=70:44、球部:下行部以遠=31:83)について、NBI拡大観察によるNADETと非腫瘍の鑑別診断能を検討した。まず、NBI診断に熟練した内視鏡医(診断医)2名によりNBI所見と組織診断の関連を解析した。NBIの表面構造はFoveolar(上皮下毛細血管が腺窩を取り囲むpit様構造)もしくはGroove(溝状の陥凹が上皮下毛細血管を取り囲むvilli様構造)に分類した。表面構造が不明瞭な場合はAbsentとした。次に、上記分類の妥当性を評価するために、組織診断を盲検化された熟練医2名、非熟練医2名が同画像を読影し、診断医とのκ値及び同分類の診断能を評価した。
結果:表面構造はFoveolar:Groove:Absent=71:40:3に分類された。NADETは88%(62/70)がFoveolarで、非腫瘍は80%(35/44)がGrooveであった。下行部以遠83病巣(NADET:非腫瘍=62:21)で検討すると、Foveolar:Groove:Absent=59:22:2に分類され、NADETは93%(58/62)がFoveolarで、非腫瘍は95%(20/21)がGrooveであった。球部では、表面構造と組織との関連は乏しかった。盲検化された4名による下行部以遠病巣の読影結果の一致割合は、熟練医2名κ=0.76、0.61、非熟練医2名κ=0.61、0.60と良好な結果であり、Foveolar/GrooveをそれぞれNADET/非腫瘍とすると、診断能は感度:特異度:陽性適中割合:陰性適中割合=85[81-90]%:93[87-98]%:97[95-99]%:68[58-78]%であった。
結論:前向き試験で評価が必要であるが、十二指腸下行部以遠でFoveolarを呈する限局性病変はNADETの可能性が高く生検を省略できる可能性がある。
4.早期発見された原発性十二指腸癌の臨床的特徴~多施設共同観察研究の結果から~
岡山大学病院 消化器内科1)岡山済生会総合病院 内科2)
榮 浩行1)、神崎 洋光1)、那須 淳一郎2)、岡田 裕之1)
【目的】原発性十二指腸癌は、全消化管悪性腫瘍の0.3%程度と稀で、その臨床的特徴は十分に明らかにされていない。近年、上部消化管内視鏡による早期発見例が増加傾向にあるが、治療方針に苦慮する場合もある。本研究は、早期発見された原発性十二指腸癌の臨床的特徴、治療成績を明らかにする事を目的とした。
【方法】2002年6月~2013年8月の間に、当院および関連施設計11施設による診断された、乳頭部癌を除く原発性十二指腸癌149例のうち、深達度がSMまでであった55症例を対象として、臨床的特徴、治療成績を後方視的に検討した。
【結果】
年齢中央値は68歳、男性41例、女性14例、原発部位は球部からSDAが23例、下行脚が28例、水平脚が4例であった。腫瘍径中央値は12mm(2-50mm)、組織型は全て分化型であった。初回治療は、内視鏡治療35例、手術20例で、内視鏡治療の内訳は、EMR26例、ESD(hybridESD含む)9例、手術の内訳は幽門側胃切除5例、十二指腸部分切除(開腹下EMR含む)13例、膵頭十二指腸切除2例であった。内視鏡治療の一括切除率は80%(28/35例)で、穿孔は14.3%(5/35例、うち4例がESD症例)に認め、局所再発は2例に認めた。深達度は粘膜内癌48例、SM癌が7例で、SM癌のうち4例は局所切除されており、リンパ節郭清は3例のみ施行され転移は認めなかった。観察期間中央値は55.8ヶ月で、5年生存率92.5%で、遠隔転移再発は認めず、死亡例は全て他病死であった。
【結論】
治療方針については今後さらなる検討の余地があると考えられるが、原発性十二指腸癌は早期発見できれば、その後の治療介入により長期予後は良好であった。
5.当院における十二指腸非乳頭部上皮性癌の臨床病理学的検討
独立行政法人国立病院機構京都医療センター 消化器内科1)、病理診断科2)
滝本 見吾1)、岩本 諭1)、水本 吉則1)、勝島 慎二1)、森吉 弘毅2)
【背景】十二指腸非乳頭部上皮性癌(粘膜内癌、粘膜下層癌)は非常に稀な疾患であるため、その悪性度や転移率など明らかにされていない。粘膜下層癌は転移率が高いと報告されているが不明な点も多い。さらにはその頻度や内視鏡的特徴も不明である。今回当院で治療を行った十二指腸癌切除例に対する臨床病理学的検討を行ったので報告する。
【対象と方法】2008年4月から2018年1月までに当院及び前任施設で内視鏡切除または外科手術を行った非乳頭部十二指腸癌162例を対象とし、病理組織学的検討と内視鏡肉眼所見の検討を行った。家族性大腸腺腫症(FAP)から発症した腺癌も対象とし、病理学的に腺腫(高度異型を含む)、カルチノイド腫瘍、転移性十二指腸癌は対象から除外した。
【結果】平均年齢(歳)=66(33-80)、男/女=90/72、平均腫瘍径(mm)=19(8-50)、球部:下行部=30:132、I:IIa:IIc=21:102:39、M:SM:MP:SS=159:2:0:1、EMR/ESD/外科手術(例)=72/65/25であった。
本検討では、腺腫が混在した癌は1例も認めなかった。SM癌は2例(0-Ⅰ型が1例、0-Ⅱc型が1例)のみであり、漿膜下層浸潤1例であり、固有筋層は1例も認めなかった。また検討期間に開腹手術するも動脈浸潤のため切除不可例を3例(深達度SE、SI疑い)認めた。漿膜下層浸潤癌1例ではリンパ節転移を認めた。粘膜下層癌の2例は本人希望で追加外科とならず経過観察を行っているが、術後3年経過するもリンパ節転移を認めず生存している。またFAPは3例認め、全例下行部のM癌であった。
【結語】本検討では、十二指腸腺癌は大腸のようなadenoma-carcinoma sequenceでは無くすべてdenovo癌であった。
十二指腸SM癌の肉眼所見は隆起型が1例、陥凹型が1例であり、その頻度は早期癌のうちわずか1.2%で、リンパ節転移は0%であった。粘膜内癌は無症状スクリーニングで発見されるが、粘膜下層癌が非常に少ないということより、十二指腸壁および粘膜下層は非常に薄いため、粘膜内癌は進行が緩徐で、粘膜下層へ一旦浸潤すると細胞学的悪性度が上昇し、筋層、漿膜へ浸潤する速度が早くなるのではないかと我々は考察している。症例数が少なく不明な点が多いが学会や本研究会を通して症例の蓄積が望まれる。
6.表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍に対するCold Snare Polypectomyの安全性
大阪国際がんセンター 消化管内科
濱田 健太
【背景】表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍に対する内視鏡治療は穿孔や出血などの合併症の頻度が高く、また合併症が起こると重篤になりやすい.我々は、FAP症例の多発非乳頭部十二指腸腺腫に対してCold Snare Polypectomy(CSP)を導入し、その実施可能性を後ろ向きに検討し報告してきた。【目的・方法】表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍に対するCSPの安全性を検討する目的で、十二指腸非乳頭部腺腫を有するFAP症例を前向きに登録し、CSPの有害事象を前向きに評価した。CSPは粘膜下局注を行わず、スネアはエグザクト(9mm)またはキャプチベーターI(I10mm)を使用した。一括切除できなかった病変に対しては分割切除を許容した。切除後、予防的止血術は実施しなかった。安全性を担保するために1回の治療で切除する病変数は50個までとした。治療当日と翌日は絶食とし、翌々日より食事を開始した。主要評価項目は治療後28日目までのNCI-CTCAE(Ver.4)グレード3以上の有害事象の発生割合とし、副次評価項目は処置時間、CSP施行中の動脈性出血の頻度とした。【結果】2016年6月~2017年1月に10例(男性6人、女性4人)のFAP症例が本試験に登録された。年齢は中央値(範囲)で40(29-52)歳であった。計332個の病変をCSPで切除し、そのうちの97%が10mm以下であった。1例あたりの切除病変数は中央値(範囲)で35(10-50)個であり、処置時間は中央値(範囲)で33(25-53)分であった。グレード3以上の有害事象は発生しなかった[病変あたり(割合、95%信頼区間)0/332(0,0.0-0.01)]。術中の動脈性出血は1病変(1/332,0.003)で認めたが、クリップで容易に止血できた。穿孔と後出血は発生しなかった[病変あたり0/332(0,0.0-0.01)]。【結語】300個以上の病変を治療したが重篤な有害事象は発生しておらず、表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍に対するCSPは安全な治療法である。
7.SNADETに対するUnderwater polypectomy/EMRの治療成績
自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門
三浦 義正、井野 裕治、岩下 ちひろ、岡田 昌浩、坂本 博次、林 芳和、矢野 智則、砂田 圭二郎、山本 博徳
【背景】我々はpocket-creationmethodを導入することで十二指腸ESDで穿孔率が29%から7%に改善したことを報告した。
しかし、SNADETの内視鏡治療をより安全・確実なものとするためESDの一部の症例の代替治療を模索する目的で2016年8月よりUnderwater polypectomy/(UWP)を導入した。
【目的】UWPの治療成績の検討と妥当性の評価
【対象と方法】2016年8月~2017年9月に当科で施行したSNADETに対するUWP15症例18病変の治療成績を検討した。サイズに合わせスネアを選択し、基本的に局注は行わず、強く絞扼した後にEndcutIE1D4I1で速やかに切除した。
【結果】男女比13:2、年齢59-79歳(中央値67歳)、部位はBulb/SDA/DP/IDA/TPで1/3/12/1/1、癌/腺腫5/13、隆起/陥凹14/4であった。処置時間(浸水開始から切除まで)3-20min(中央値7min)、切除長径7-30mm(中央値12mm)、腫瘍長径5-29mm(9mm)、15㎜以上の腫瘍は通電による筋層ダメージを避けるため生理食塩水を少量局注後にスネアリングした。内視鏡的な分割切除は3例、断端陰性一括切除率は50%であった。しかし比較的サイズの大きな病変に施行された症例でも穿孔は1例も経験しなかった。
【考察】解剖学的に十二指腸のケルクリン襞には筋層がなく、大腸よりもUWPは理論上安全に施行できる可能性がある。病変粘膜の収縮に伴い15mm以上の腫瘍でも比較的容易なスネアリングが可能であった。また水中であるゆえ重力が相殺され、通常では観察すら困難な屈曲部病変でも切除できた症例を経験した。
【結語】我々のSNADETに対する治療ストラテジーは、ESDの絶対適応は30㎜以上、10-29㎜ではUWPとESDを使い分けるのがよいと考えている。
8.十二指腸腫瘍に対するUnderwater EMRの治療成績
佐久医療センター 内視鏡内科
高橋 亜紀子、小山 恒男
【目的】
十二指腸腫瘍に対するUnderwater EMR(UWEMR)の治療成績を明らかにし、現状と課題を検討すること。
【対象】
2016年2月から2017年12月までにUWEMRを予定した十二指腸腫瘍52例56病変を対象とした。対象の内訳は、男性37例・女性15例、年齢中央値65(43~87)歳。
【結果】
1、56病変中52病変は予定通りUWEMRが施行されたが、1例はEMRへ、3例はESDへ変更となった。UWEMR完遂率は93%であった。
2、UWEMR完遂例の検討
a)肉眼型は0-I/0-IIa/0-IIc:7/25/21、占居部位はbulbs/2ndportion/3rd portion:4/37/12であった。
b)腫瘍長径中央値は8(2-25)mm、切除長径中央値は12(4-25)mmであった。
c)一括切除率90%(47/52)、R0率69%(36/52)、分割でR1率は10%(5/52)、RX率は21%(11/52)であった。RXの理由は、最初または最終切片まで腫瘍が存在しLM陰性が証明できないLMXが挙げられた。UWEMRでは安全域を確保できないことが、その原因と考えられた。
d)クリップ縫縮
遅発性穿孔と後出血予防として、全例に対し潰瘍底をクリップにて完全縫縮した。クリップは中央値5(1~8)個、使用されていた。全例にIIndlookEGDを施行し、92%(48/52)でクリップ脱落はなく完全縫縮が維持されていた。8%に一部のクリップ脱落を認めたが、創開放例はなかった。
e)偶発症
遅発性穿孔、後出血ともに0%であった。
3、EMR/ESDへの変更例の検討
56病変中4病変はスネアリングできず、EMR/ESDへ変更された。その肉眼型は0-I/0-IIa/0-IIc:0/1/3、占居部位はbulbs/2nd portion/3rd portion:1/3/0、腫瘍長径中央値は6(3-7)mmであった。変更理由は、球部下壁でスネアリングが困難1例、襞の真上2例、襞の裏に存在1例であった。
【結語】
UWEMRは偶発症なく、安全な手技であった。しかし切除面積に制限があり、LMXが多い事が問題点であった。球部下壁はスネアリングが困難なことを念頭に、スネアリング不良時にはすみやかにEMR/ESDへ手技変更すべきである。
9.十二指腸表在型腫瘍に対する内視鏡治療の偶発症の危険因子と切除後粘膜欠損縫縮の意義
慶應義塾大学 医学部 腫瘍センター 低侵襲療法研究開発部門
加藤 元彦、落合 康利、矢作 直久
【背景】表在型十二指腸上皮性腫瘍(Superficial duodenal epi-thelial tumor:SDET)に対する内視鏡治療(ER)は偶発症のリスクが高いと報告されているが、詳細な成績とくに偶発症の危険因子については不明な点も多い。当部門では、偶発症予防のため糸付きクリップを用いてESD後の粘膜欠損部を可及的に縫合するなどの工夫を行ってきた。【目的】SDETに対するERの成績および偶発症の危険因子を検討し、切除後潰瘍の縫縮の有用性を明らかにすること。
【方法】(検討1)2010年6月~2017年6月に当部門でERを施行したSDET321例(EMR146例、ESD175例)を対象に穿孔、出血の発生頻度を検討し、その危険因子についてロジスティック回帰モデルを用いた多変量解析を行った。また穿孔症例の臨床経過について検討した。(検討2)同期間にESDを施行した症例を、ESD後の粘膜欠損部が完全に縫縮された群(完全群)と縫縮が不完全であった群(不完全群)に分け、偶発症の発生割合を比較した。
【結果】対象は年齢62.7±2.0、男女比2:1であった。(検討1)後出血はESD群で統計学的に高い傾向がみられた(5.2%vs1.4%、p=0.07)が、多変量解析では病変が内側壁に存在することのみが独立しており(OR4.6)、治療法の違いによる有意な関連はみられなかった。穿孔はESD群で有意に多く(15.5%vs0.7%、p<0.01)、多変量解析においてもESD(OR13.6)、病変径(10mm毎)(OR1.4)が独立していた。穿孔症例28例のうち、穿孔症例では、内側壁の病変で入院期間が有意に長かった(中央値41日vs7日、p=0.03)。(検討2)遅発性偶発症の発生割合は完全群で1.7%と不完全群の19%に比べて有意に短かった(p<0.01)。
【考察】内側壁の病変は後出血や穿孔時の重篤化のりリスクが高く注意が必要である。切除後の粘膜欠損の縫縮は治療成績の向上に寄与することが期待される。
10.当院における非乳頭部十二指腸SM癌の治療成績
がん研有明病院 消化器内科1)、昭和大学藤が丘病院 消化器内科2)、愛媛県立中央病院 消化器内科3)、がん研有明病院 消化器外科4)
吉水 祥一1)、山本 頼正2)、富田 英臣3)、藤崎 順子1)、齋浦 明夫4)比企 直樹4)
【背景・目的】近年、表在性非乳頭部十二指腸(SNADET)に対する治療機会が増加しているが、非乳頭部十二指腸SM癌についての知見は少ない。
【対象・方法】2006年9月~2014年9月に当院で治療したSNADET121例のなかで、最終病理診断が癌であった76例(EMR/ESD35例、LECS8例、開腹手術33例)のうち、SM癌であった6例を対象として治療成績を検討した。
【結果】SM癌6例は全て開腹手術例であり、EMR/ESD,LECSを行った症例にSM癌はなかった。患者背景は、平均年齢65歳、男性2名、女性4名、病変部位は球部/下行部/水平部=2例/3例/1例、肉眼型は0-I/0-IIa/0-IIc、0-IIa+IIc=1例/1例/4例であった。術式は膵頭十二指腸切除術(PD)/幽門側胃切除術/局所切除術=4例/1例/1例であった。切除病理診断は、病変径中央値16mm(6-33)深達度はSM1/SM2/SM3=2例/2例/2例、組織型(優位型)は分化型/未分化型=4例/2例、ly陽性3例(50%)、v陽性1例(17%)、リンパ節転移陽性4例(67%)であった。観察期間中央値60ヶ月(8-83)であり、転機は原病死2例、他病死1例、無再発生存中2例、再発生存中1例であった。原病死を来した2例の臨床経過は、以下の通りである。症例1:60代女性。幽門側胃切除術を施行し、切除病理は、0-Ⅱa+Ⅱc、33×30mm、pap-tub1,SM2,ly1,v0,N1(1/22)、UICC:T1bN1M0 StageⅢAであった。術後1年3ヶ月で肺転移再発を来し、化学療法を施行したが、術後2年7ヶ月で原病死となった。症例2:60代女性.PDを施行し、切除病理は、0-Ⅰ,12×12mm,por>tub1,SM2,ly3,v0,N1(6/20)、UICC:T1bN2M0 StageⅢBであった。術後5ヶ月で局所再発とリンパ節転移再発を来し、術後8ヶ月で原病死となった。
【結語】少数例の検討ではあるが、十二指腸SM癌のリンパ節転移率は67%と高く、6例中2例で原病死を来しており予後不良であった。
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