井上 和彦(淳風会健康管理センター)
胃がん内視鏡検診の検証を行い、上部消化管がん検診の対象集約、標準法について明らかにすることを目的とした。
2013年2月にH.pylori診療の保険適用が拡大され、2015年3月には有効性評価に基づく胃がん検診ガイドラインで内視鏡が胃X線検査と同レベルで推奨され、その後厚生労働省のがん検診実施のための指針でも推奨された。それらを背景として、第1回研究会では「上部消化管内視鏡検診の科学的検証と対象集約・標準化を目指して」、第2回研究会では「H.pylori感染状態の内視鏡診断と胃がんリスク」、第3回研究会では「内視鏡所見とH.pylori感染」と「対策型検診における現状と問題点」を主題として議論した。
内視鏡検診では胃全体を網羅的に撮影するために撮影法の標準化は必須であり、ダブルチェックなど読影体制の充実も必要である。さらに、胃がん診断はもとより、胃がんリスク評価も望まれ、H.pyloriについて未感染、現感染、既感染を示すべきである。未感染を示唆する所見としてRAC、萎縮のないこと、線状発赤、胃底腺ポリープ、隆起型びらん、ヘマチン付着、現感染を示唆する所見として萎縮、びまん性発赤、点状発赤、鳥肌、皺襞腫大、既感染を示唆する所見としてびまん性発赤の消失、地図状発赤は重要である。ただし、内視鏡検診に携わる医師は必ずしも消化器内視鏡専門医だけではなく、非専門医にも理解できるように啓発活動も行わなければならない。さらに、ABC分類に代表される検体検査による胃がんリスク層別化も有効活用すべきである。
内視鏡が対策型胃がん検診の主体となることが期待されるが、充実した精度管理が不可欠であることを忘れてはならない。