第6会場(グランドプリンスホテル新高輪国際館パミール1F 瑞光)
聖マリアンナ医科大学 消化器・肝臓内科 (7分:討論2分)
○小澤 俊一郎、松尾 康正、清川 博史、鈴木 碧、佐藤 義典、山下 真幸、安田 宏、伊東 文生
総合討論:10分
基調講演
がんセンター中央病院(10分)
○斎藤 豊/角川 康夫
防衛医科大学校病院 看護部1)、防衛医科大学校病院 消化器内科2)、防衛医科大学校病院 光学医療診療部3)(5分:討論1分)
○戸塚 郁絵1)、小口 康江1)、井上 節子1)、古橋 廣崇2)、寺田 尚人2)、西井 慎2)、溝口 明範2)、杉原 奈央2)、塙 芳典2)、和田 昇典2)、高城 健2)、丸田 紘史2)、安武 優一2)、永尾 重昭3)
質疑応答(8分)
~当院での試み~
東京大学医学附属病院 看護部1)、同病院 消化器内科2)、同病院 光学医療診療部3) (5分:討論2分)
○二宮 多恵子1)、辻 陽介2)、松田 梨恵2),3)、吉田 俊太郎2),3)、北川 瞳1)、伊賀 上由子1)、藤城 光弘2),3)、小林 智明1)
総合討論(10分)
東京大学医学部附属病院 光学医療診療部1)、同病院消化器 内科2)、同病院看護部3)
○松田 梨恵1),2)、吉田 俊太郎1),2)、辻 陽介2)、二宮 多恵子3)、小林 智明3)、藤城 光弘1),2)
当院では年間20,000件にもおよぶ内視鏡検査を行っており、検査数は年々増加の一途をたどっている。また、国立がん研究センターから2014年度に公表された“有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン”では、従来のMDL検査に加え、上部消化管内視鏡検査も対策型検診・任意型検診での実施が推奨されており、今後上部内視鏡検査の需要が一層増加することが予想される。従来胃癌の大半を占めていたH.pylori関連胃癌のほかに、H.pylori除菌治療の普及や環境整備に伴って増加することが予測される、H.pylori除菌後胃癌やH.pylori陰性胃癌の診断でも、上部内視鏡検査は重要な位置を占めており、増加する上部内視鏡検査の需要を満たすためには、限られた時間・人材・機材において無駄を省いた内視鏡検査を行う必要がある。従来上部内視鏡検査の前処置で用いられている前投薬(ブチルスコポラミン臭化物等)は、消化管の蠕動抑制作用があり多くの施設で用いられているが、一方で重篤な心疾患、緑内障、前立腺肥大症等には使用できず、さらに前投薬の注射による被検者の苦痛、看護師の針刺し事故の危険性などが挙げられる。そこで今回我々は、ブチルスコポラミン臭化物使用の有無による上部消化管内視鏡検査効率の違いを評価した。病変検出率・検査時間などの因子につき、ブチルスコポラミン臭化物使用前後での差があるか分析し、その結果を供覧させていただく。
聖マリアンナ医科大学 消化器・肝臓内科
○小澤 俊一郎、松尾 康正、清川 博史、鈴木 碧、佐藤 義典、山下 真幸、安田 宏、伊東 文生
【背景】消化器内視鏡の需要は増加しており、検査、治療において多岐にわたるが複雑な手技を患者に理解させるのは簡単ではない。患者説明書・同意書(以下同意書)は手技に対する患者の理解度を向上させるだけでなく、医療従事者側のリスクマネジメントにも重要な位置付けとなっている。一方で、検査手技の経験数が増加するにつれ、治療成績や偶発症の成績も変化する中で、自施設の成績、内視鏡学会が発表している成績のいずれかを記載するべきかなど、同意書の内容に明確な決まりはないのが現状である。【目的】消化器内視鏡における同意書の標準化の必要性について検討する。【方法】多施設における同意書を比較し記載内容の相違を検討する。今回は標準化された手技である胃ESDの同意書を対象とし複数の病院(大学病院、がん専門病院、一般病院)に協力を要請する。同意書に対して日本医師会が提唱する6項目(①現在の症状および診断病名、②予後、③処置および治療の方針、④処方する薬剤については、薬剤名、服用方法、効能、特に注意を要する副作用、⑤代替的治療法がある場合には、その内容および利害得失、⑥手術や侵襲的な検査を行う場合、その概要・危険性、実施しない場合、危険性・偶発症の有無)、入院期間、偶発症時の対応、抗血栓薬の継続/休薬、自施設における偶発率、以上の項目の記載の有無を比較対象とする。得られた結果より同意書の標準化について検討し報告する。
国立病院機構 東京医療センター 消化器科
○伴野 繁雄、加藤 元彦、坂口 惠美、阿部 圭一朗、高田 祐明、平田 哲、和田 道子、高取 祐作、木下 聡、菊池 美穂、髙林 馨、菊池 真大、藤山 洋一、浦岡 俊夫
【背景】大腸内視鏡検査(CS)時の鎮静としてベンゾジアゼピン系麻酔薬とペチジンなどの鎮痛剤の使用は一般的であるが、しばしば呼吸循環動態の変動(vital sign fluctuation;VF)を経験する。一方で、鎮静下でCSを施行した場合のVFの頻度や患者背景と使用薬剤が与える影響についての報告は少なく、以下の検討を行った。【方法】本検討は、2015年1月から7月に鎮静下でスクリーニング目的にCSを施行した755例を対象にした横断研究である。当科ではCS時にミタゾラムやペチジン単剤またはそれらの薬剤を併用し、静注による鎮静を行っている。本検討では、VFは収縮期血圧が検査前と比較し20%以上低下する事、酸素飽和度が90%未満となる事と定義した。VFに寄与するリスク因子を同定するため、VFの出現と患者背景[年齢、性別、米国麻酔学会術前評価分類(ASA)]、ミダゾラム、ペチジンの使用との関連をロジスティック回帰モデルによる多変量解析で検討した。【結果】対象は平均年齢64.4+14.9歳、男女比1.1:1、ASA 3以上の症例は全体の6.8%であった。VFは全体の17.4%に観察され、年齢[OR 1.05、95% CI 1.04-1.07]、女性[OR 1.78、95% CI 1.19-2.70]、ミダゾラム使用[OR 5.06、95% CI 3.18-8.08]が独立した危険因子であった【結語】ミダゾラムやペチジン単剤またはそれらの併用による意識下鎮静では約20%にVFが認められ、とくに女性、高齢者にミダゾラムを使用した鎮静を行う場合、十分なモニタリングが必要と考えられた。
市立豊中病院 消化器内科1)、同 看護部2)
○山本 政司1)、西田 勉1)、安井 由美子2)、福田 眞由美2)、林 史郎1)、松原 徳周1)、杉本 彩1)、高橋 啓1)、向井 香織1)、中島 佐知子1)、福井 浩司1)、稲田 正己1)
近年、内視鏡診療における鎮静の需要は増加傾向にある。特に大腸内視鏡検査は、上部消化管内視鏡検査と比して、検査時間も長く、不安や疼痛、苦痛が大きい検査である。2013年、本学会より「内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン」が作成され、鎮静が必要な状況下では、その適切な使用が推奨されているが、検査後、鎮静からの覚醒評価、退出基準については言及されていない。しかし、実臨床では、鎮静中よりも鎮静後に、覚醒遅延や遅発性血圧低下などといったトラブルに遭遇する機会もしばしば経験する。当院では、2015年1月から12月の期間に施行された大腸内視鏡検査4286例のうち、外来検査は3192例、このうち1323件(41%)の症例において、ミダゾラムを用いた鎮静が行われていた。同時期の外来での鎮静上部消化管内視鏡検査の約2倍の頻度であった。鎮静薬の投与量に関しては、基準はなく、各担当医の判断で行っている。当院では、退出の基準として、2014年9月、日本消化器内視鏡技師会、内視鏡看護委員会の「内視鏡看護に関するガイドライン集」に記載されている「麻酔回復スコア」を用いたマニュアルを作り、退出評価を行っている。しかし、術中および術後の監視基準、退出評価までの時間、その判断など未だ試行錯誤の状態である。今回、当院での現状を調査し、当院でのマニュアルの評価および、問題点を検討したので報告する。
国立病院機構 函館病院消化器科1)、北海道大学病院 光学医療診療部2)、NTT東日本札幌病院 消化器内科3)
○間部 克裕1)、大野 正芳2)、吉井 新二3)、加藤 元嗣2)
抗血小板薬、抗凝固薬(抗血栓薬)の服用者が増加し、内視鏡検査、治療対象者における服用者も増加している。以前は内視鏡手技における出血性合併症を予防する観点から一定期間の休薬が行われてきたが、近年は抗血栓薬休薬による血栓症のリスクとその重篤さが明らかになり、欧米に続き本邦においても休薬期間を短縮したガイドラインが作成されている。これらのガイドラインでは、内視鏡手技を出血低リスク手技と高リスク手技に、血栓症休薬による血栓症リスクを低リスク、高リスクに分けて記載されている。大腸内視鏡検査及び生検は出血低リスク手技に分類され、抗血栓薬は休薬せずに試行可能である。
高周波を用いないcold
polypectomyは、抗凝固薬継続服用者に対して従来のpolypectomyに比較して有意に出血性合併症が少ないことが報告されている。一方、PolypectomyやEMR、ESDは出血高リスク手技となり、抗凝固薬服用者ではヘパリン置換の対象となり、ヘパリン置換は近年の発表で出血性合併症が有意に多い事が知られている。
高抗血栓薬服用者に対する大腸ポリープの切除方法として、経過観察を行い5mm以上で休薬の上で行う従来の対応より、服薬継続のままcold
polypectomyで行うことが出血の少ない患者負担も少ない方法である可能性がある。
高今回、抗血栓薬服用者における大腸cold
polypectomyの安全性について、抗血栓薬非服用者と比較して報告し、抗血栓薬服用者に対する大腸内視鏡検査時の対応について考察する。
京都第二赤十字病院 消化器内科1)、京都第二赤十字病院 内視鏡室2)
○田中 聖人1)、鈴木 安曇1)、谷山 久美子2)
高度な内視鏡診療行為においては手術室における周術期管理と同レベルのものが求められている。加えて、鎮静に関しても要求が嵩じてきており、ますます外科系の手術における周術期管理の方法論の導入を考慮すべき時代である。そこで、今回の研究会では当院で取り組んでいる中央手術室における周術期管理の内科系展開に展開を提示し議論を深めたい。
周術期の管理というと手技中のことにのみ目を奪われるが、施術前の確認こそが安全の根幹を成すといっても良い。手術医療の実践ガイドラインでは、『ある時点ですべての関係職員が、すべての作業を中止し、これから行われる手術に関する確認作業を行うこと』が求められている。タイムアウトと呼ばれるもので2008年WHOが作成した手術安全チェックリストを用いて行われるのが一般的である。当院では内視鏡治療、胆膵内視鏡検査においてもタイムアウトを実施しており、予定手技の確認、対象臓器の確認、患者の投薬休薬に関する確認、金属付加物の有無確認などを行っている。しかしながらこういった作業は根付くまで時間がかかること、そして何より確認記録を残す作業が発生するため、業務負荷があることが問題となる。これらを回避するためには、①手術と同様にガイドラインで規定し周知徹底を図ることと、②業務支援の仕組みの導入が必要である。当院では後者の一環として手術室、内視鏡室において業務システムにタブレットを使用できる環境を構築し、タイムアウトの入力支援に取り組んでいる。さらに手術室では、確認作業を施術前のみならず、麻酔開始前、麻酔終了時、手術終了時、退室時と複数回施行されている。内視鏡診療においても周術期管理と謳うためには、どんなチェック項目を用いるか?だけでなくどのタイミングで何度行うのが妥当か?という議論も必要であろう。
今後はよりよい内視鏡診療周術期管理を目指して妥当な確認基準を議論してゆきたい。
戸田中央総合病院 内視鏡技師1)、戸田中央総合病院 医師2)
○土田 美由紀1)、堀部 俊哉2)、原田 容治2)
【はじめに】内視鏡検査は診療の中で医師の指示によりオーダーが発生し、検査前の説明と同意、検査の実施、終了後の説明、そして医師からの結果説明という一連の流れがある。今回、内視鏡検査・周術期管理の標準化に向けた活動における情報収集として、各施設ではどのような種類のマニュアルを作成しているのかアンケート形式で調査し、施設の規模の違いによる内視鏡検査に関するマニュアル作成率について検討を行った。
【対象】内視鏡検査を行っている施設のスタッフおよび医師【アンケート内容】背景として施設規模、検査数、スタッフ数など、マニュアルに関してはマニュアルの有無のほか、各種説明書・同意書の有無、内服薬確認における薬剤師の介入有無、マニュアル作成時の医師の関与などを項目とした。
【結果】多くの施設で種類は問わずマニュアルは作成されており、その中でもスコープの洗浄・消毒に関するマニュアルは整備されている施設が多くみられた。しかしながら、小規模施設においてはマニュアルを作成していない施設が多い傾向であった。その一方で、マニュアル作成においては医師の関与が無い施設も存在した。
【考察】マニュアルはいわゆる手順書として置きかえられるため、多数のスタッフが関わる施設で作成されていることが多い。しかしながら、その内容に関してはどこまで網羅されているのかは施設ごとに違うものである。そこで施設の規模にかかわらない標準的なマニュアルの構築は、本会の目的でもある内視鏡検査・周術期管理の標準化へ実現できるものと思われる。
【結語】施設の規模によりマニュアル作成率に差異を認めた。今後、内視鏡検査・周術期管理の標準化へ向けて現状を把握することは重要であると思われた。今後、多くの施設を対象に検討し報告予定である。
防衛医科大学校病院 看護部1)、防衛医科大学校病院 消化器内科2)、防衛医科大学校病院 光学医療診療部3)
○戸塚 郁絵1)、小口 康江1)、井上 節子1)、古橋 廣崇2)、寺田 尚人2)、西井 慎2)、溝口 明範2)、杉原 奈央2)、塙 芳典2)、和田 昇典2)、高城 健2)、丸田 紘史2)、安武 優一2)、永尾 重昭3)
【背景・現状】内視鏡治療は専門性の高い高度な技術が必要であり、治療を安全に行い、且つ患者や家族の不安感を少なくするためには治療前の十分な説明、同意を取得しなければならない。また内視鏡室と消化器内科病棟の連携が重要であり、治療・検査に携わる医療スタッフが統一した知識・技術を習得し、情報共有を行う必要がある。当院では内視鏡治療は原則入院で行っており、入院後に担当医が説明文書を用いて患者本人に説明し同意を取得している。高齢者や認知症の患者の場合には家族同伴で説明をしているが、担当医が単独で説明をしており、看護師が同席出来ない場合が多い。そのため、患者や家族が治療に対してどの程度理解しているのか担当医以外が把握できていない現状がある。また、治療の内容や経過についても、治療後すぐに医師が電子カルテに記載できないことも多く、病棟看護師が治療後の患者の状態を把握しにくい状況があった。
【方法】当院では内視鏡の説明文書の他、患者用パス、内視鏡連絡書(内視鏡治療の内容を記載)を電子カルテとは別に活用している。担当医から治療の説明後、病棟看護師から再度検査・治療の一連の流れを患者用クリニカルパス用紙に沿って説明をしている。その際、治療に対する理解が不十分な患者には説明の補足を行っている。また、内視鏡治療中の経過について当院の内視鏡連絡書へ内視鏡技師が治療の記録をするようにしており、治療後すぐに病棟看護師が内容を把握し、病棟での看護に役立てるようにしている。
【結論】患者の内視鏡治療に対する理解を深め、より安心して治療を受けて頂くためには、医師・内視鏡技師・病棟看護師のそれぞれが連携し情報共有を行い、患者の理解度を把握することが重要である。そのためには、患者への説明内容や理解度を確認できるようなパスの活用、タイムリーな記録を残すことが重要と考える。
那覇市立病院 消化器内科
○仲地 紀哉、金城 譲、豊見山 良作
消化管のESDが普及し、今後は標準的な治療手技となることも予想される。基本的には入院を要する治療であり、一定の基準の下で各施設とも入院期間を設定しているものと思われる。各施設の事情もあり明確な標準化は困難かとは思われるが、標準的な周術期管理についての議論が必要と思われる。今回、当院で行っている術前の標準化ならびにクリニカルパス(以下CP)による周術期管理について発表する。
当院では予定手術等の術前管理の効率化をはかる目的に、他施設の先行システムを参考に入院準備センターを立ち上げた。同センターでは術前検査、薬歴や併存疾患のチェックおよび当該診療科へのコンサルトや他院への診療情報提供依頼等を看護師やコメディカルスタッフが行い、術前管理の標準化ならびに医師負担軽減を行ってきた。当初は外科手術で導入されたが、その後脳外・心血管カテーテル検査、内視鏡治療などへも対応してきている。
また、当院では消化管ESD周術期管理にCPを適用している。胃ESDの入院期間はCP導入当初は8日間としていたが、入院準備センターの導入や術後セカンドルックの廃止、食上げ期間の見直しをはかることで5日間へ短縮することが出来た。CP期間短縮の前後30症例ずつを比較したところ、治療成績、偶発症の発生率やアウトカム達成率等に差は見られなかった。少数ながら抗血栓療法中の患者も含まれていたが、特に影響はなかった。病変の大きさや部位、年齢や基礎疾患などの患者背景などで更なる入院期間の短縮も可能かと思われるが、安全性を保ちながら各施設の実情に沿った対応が必要であると考える。
入院期間等を一律にすることは現実的ではないものの、術前から周術期管理までを標準化することは、安全かつ効率的な内視鏡治療に繋がるものと期待する。
北里大学病院看護部1)、北里大学医学部消化器内科学2)、北里大学医学部新世紀医療開発センター3)、北里大学医学部麻酔科学4)
○岸木 あゆみ1)、宮澤 志朗2)、石戸 謙次2)、田辺 聡3)、前澤 美奈子1)、三枝 克磨1)、岩井 知久2)、今泉 弘2)、木田 光広2)、小泉 和三郎2)、黒岩 政之4)、松田 弘美4)、西澤 義之4)
早期消化器癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(以下ESD)の進歩・普及には目をみはるものがあり、適応も拡大されつつある。一方では、長時間に及ぶ治療あるいはハイリスク症例を経験し、医療安全の観点から鎮静下における全身管理の問題も指摘されている。当院では、すでに内視鏡診療を含めた検査・処置のための鎮静・鎮痛術前チェックリストが麻酔科を中心に作成されていたが、実際にはほとんど使用されていなかった。そこで、新たなワーキンググループを立ち上げ、実臨床に則した鎮静術前患者評価の検討に着手した。ASA physical statusによる全身状態の評価、睡眠時無呼吸症候群の有無、局所・全身麻酔における有害事象既往歴、薬物アレルギー歴、喫煙指数、飲酒量などがチェック項目となっている。チェックリストを元に、医療者間で情報共有を行うと共に、麻酔科へ依頼する患者の選択基準、さらに内視鏡室で治療を行う際の注意点、手術室で行う症例の適応など、今後解決すべき課題も多い。今回は、非麻酔科医による内視鏡検査・治療の鎮静術前患者評価の取り組みを通して、現状の課題と新たな取り組みについて報告する。
慶應義塾大学 医学部腫瘍センター低侵襲療法研究開発部門1)、いきめ大腸肛門外科内科2) ○相良 誠二1)、2)、前畑 忠輝1)、飽本 哲兵1)、光永 豊1)、藤本 愛1)、落合 康利1)、西澤 俊宏1)、中村 理恵子1)、後藤 修1)、矢作 直久1)
慶【目的】ESDを安全に行うには確実な鎮静・鎮痛が必要である。当科ではNLA変法で鎮静不良な症例に対し「局所麻酔下における非挿管での手術、処置時の鎮静」を適応とするデクスメデトミジン(DEX)を使用し良好な鎮静を得ているが、使用法や有用性についての報告は未だ十分でない。今回DEXによる鎮静下に施行したESD症例におけるDEXの有用性及び安全性を検討した。【方法】NLA変法を用いた術前精査時に鎮静不良だった10症例12病変(食道:6症例7病変、十二指腸:3症例4病変、胃1症例1病変)に対しDEXによる鎮静下にESDを施行した。酸素2L/分投与下に持続静注及びフェンタニルもしくは塩酸ペチジンの静注を行い、10分間継続した後ESDを開始した。その後減量し、体動の有無、血圧変動、呼吸状態をモニターしながら適宜調節した。治療成績及びRichmond Agitation-Sedation Scale(RASS)スコアにおける体動出現頻度、vital変動の出現頻度を評価した。【結果】治療時間中央値40分(15-300分)で全例とも偶発症なく一括切除しえた。RASSスコア+1以上の体動出現頻度は0回(0-2回)、収縮期血圧≦80mmHgまたは≧160mmHgの出現頻度0回(0-2回)、心拍数≦50/分または≧120/分の出現頻度0回(0-11回)、酸素飽和度<90%出現頻度0回(0-0回)であった(すべて中央値)。全例とも治療終了後5分以内に覚醒し、呼吸苦や嘔気等の症状を認めなかった。【結語】いわゆる「麻酔技術に熟練した医師の存在」の制約なく使用可能なDEXは、適切に用いることで高難度ESD症例においても安全に手技を行うことが可能であることが示唆された。術前術後も含めたDEXによるESDの周術期管理の実際を供覧する。
東京大学医学部付属病院 看護部1)、同病院 消化器内科2)、同病院 光学医療診療部3)
○二宮 多恵子1)、辻 陽介2)、松田 梨恵2),3)、吉田 俊太郎2),3)、北川 瞳1)、伊賀 上由子1)、藤城 光弘2),3)、小林 智明1)
「局所麻酔下における非挿管での手術及び処置時の鎮静」におけるデクスメデトミジン(DEX)の使用が保険収載されたことを受け、当院においても2014年より内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)時の鎮静としてDEXを導入した。
導入に当たり、医師・看護師合同で役割分担・安全管理・急変時の対応のマニュアルを作成した。DEX添付文書には初期負荷投与6μg/㎏/h、維持投与0.2~0.7μg/㎏/h(患者の状態に合わせて適宜増減)とある。当院では、初期負荷投与3μg/㎏/h維持投与0.4μg/㎏/hにて施行したところ、鎮静効果が十分でなかったため、先行使用していた内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)とダブルバルーン小腸内視鏡を参考に初期負荷投与3μg/㎏/h維持投与0.7μg/㎏/hおよび、初期負荷投与6μg/㎏/h維持投与0.4μg/㎏/hへ変更した。しかし、14症例中6症例(約42%)で血圧低下・徐脈(収縮期血圧80以下、脈拍40以下)をきたした。それぞれの事例に対しては事前に作成したマニュアルに基づきエフェドリン静注で対応し、重篤な有害事象にはつながらなかったが、適正なDEXの用量用法についてチームで検討を重ねた。
結果、DEXのみでの鎮静は困難と判断し、ジアゼパムとペンタゾシンを併用することとした。併用に当たり、DEXは初期負荷投与3μg/㎏/h維持投与0.4μg/㎏/hとし、初期負荷終了時にジアゼパム5mg、ペンタゾシン7.5mgを投与、その後、DEX維持時は鎮静の状況に合わせて、ジアセパムとペンタゾシンの追加にてコントロールをしたことで血圧低下・徐脈が60症例中9症例(15%)に軽減された。
ジアセパムとペンタゾシンのみでの鎮静時には呼吸抑制が頻回にみられていたが、DEX導入後はジアゼパム使用量が減少したことで、呼吸抑制が殆どみられなくなった。新規鎮静剤導入時に、現場の医師・看護師で協力し、最適な用法を試行錯誤した我々の経験を報告する。