2021年1月6日
理事長
井上 晴洋
2021 年の始まりにあたり、ご挨拶を申し上げます。
昨年2020 年は、前例のない未曽有のコロナ禍にみまわれ、大変な1 年でした。 2 月の横浜に寄港した客船での集団発生にはじまり、Pandemic となり、年末までに複数の波が訪れました。そのような中で、会員の先生方におかれましては、内視鏡医としてご自身の感染リスクを背負いながら、患者さまのために第一線に立たれ、内視鏡診療に当たられましたことに心からの敬意を表します。われわれ内視鏡医は、地域医療を支えるために消化器診療を継続せねばなりませんが、まだ明確な治療法も不明のまま、どのように内視鏡診療を展開すればよいのか、前例や既知のデータのない経験でしたので、悩みながらの診療となりました。そのような中で、内視鏡学会としては、医療安全委員会(入澤篤志担当理事・委員長)が、内視鏡の診療指針をおまとめくださいました。この診療指針は、和文、英文で発表されまして、ほぼ月1 回のペースで感染の状況に応じて、改訂を重ねました。多くの先生方から高いご評価をいただきました。
5 月には樋口和秀会長の第99 回総会が予定されていましたが、コロナの蔓延に伴い、収束の期待を込めて9 月に延期されました。しかしながら、なかなか感染は収束方向には向かわず、 9 月2 、 3 日に国立京都国際会館を舞台に、現地開催とWEB 配信のハイブリッド形式で開催されました。現地参加者で、約1,000 名、WEB 開催で約6,000 名の参加を認め、合計7,000 名を超える参加者がありました。コロナの厳しい状況にもかかわらず、用意周到に準備を重ねられた樋口会長に重ねて御礼を申し上げます。感染予防の観点から、祝宴などは行わず、学術集会のみの会でしたが、非常に充実した学術集会でした。
その後、秋のJDDW 2020 は神戸での開催となりました。本学会としては第100 回の大きな節目となる学会であり、河合隆会長のもと、11 月5 日から7 日までの3 日間、ハイブリッド形式で開催されました。現地会場参加とWEB 参加による充実した内容で、JDDW 全体で20,000 人を超える参加があり、こちらも大盛会でした。総会第100 回を記念した「日本消化器内視鏡学会総会100 回記念号」も学会誌の特集号として発刊されました。本学会のこれまでの歴史的な歩みが詳細にまとめられています。
歴史を振り返りますと、本学会は1959 年に第1 回が開催されました。それ以降、多くの先輩諸氏のご尽力の甲斐あり、現在では、会員34,000 人を超える大きな学術団体に発展しております。
歴史的には、病変をみつけて生検診断するという内視鏡から、粘膜癌を切除するEMR/ESD へと進化し、さらに粘膜下層内視鏡(Submucosal endoscopy)、内視鏡的全層切除法へと進展しています。また、胆膵内視鏡、Interventional EUS の進歩は目を見張るものがあります。田尻久雄前理事長のときに始まりましたJED(Japan Endoscopy Database)も着実に発展しておりますし、さらにAI 診断やICT(Information and communication technology)、CAD(Computer-assisted diagnosis)など、時代を先んじる診断と治療が展開されています。
本年2021 年は、第101 回総会が5 月に広島(田中信治会長)で開催されます。テーマは「内視鏡医学とScientific art の探求」です。そのときまでにコロナ禍が落ち着けばと願っておりますが、準備には万全を尽くされておりハイブリッドの開催とされております。また、昨年の第100回総会を受け、改めての記念式典も予定しておりますので、コロナ禍に負けず盛大な学術集会となりますように会員の皆さまご協力・ご支援をよろしくお願い申し上げます。
この総会のあと、 1 年延期された東京オリンピックが、無事開催されることを切に願っております。引き続きまして秋のJDDW 2021 では、第102 回総会が山本博徳会長のもとに開催されます。さらに学会セミナーは、2021 年9 月に福岡で第45 回学会セミナー(八尾建史会長)が、「消化器内視鏡のガイドラインを読み解く」をテーマに、ハイブリッド形式で開催される予定です。
本年は、ワクチンなどの予防法の登場により、コロナ禍が収束に向かい、一昨年までの日常に戻って平穏な日々が訪れますことを願うばかりです。
そのときまで、会員のみなさま及びご家族が健康でおられることを祈念しますとともに、内視鏡医療を粛々と提供し、患者さまの期待に応え、ひいては社会貢献につながりますことを切に願っております。