2019年1月7日
理事長 田尻久雄
2019年の年頭にあたり,謹んで新年のご挨拶を申し上げます.本誌面をお借りして,本学会の現状と課題について,述べさせていただきます.
2018年度は,本学会にとりましてepoch-making eventがありました.日本専門医機構理事会においてサブスペシャルティ領域の学会として本学会が正式に認定されたことです.日本専門医機構が新専門医制度を打ち上げてから5年以上の長きに亘り,本学会の専門医の必要性を訴え続け,本学会が認定されましたのも,関係役員の方々ならびに会員の皆様の温かいご支援とご協力の賜物です.心より御礼申し上げます.今後は,本学会の理念である「患者に消化器病内視鏡を施行する際,患者にとって良質な医療が提供されること」を念頭に「患者に理解され信頼される専門医を育成する」という視点に立って専門医制度の構築を進めて参ります.
2015年より開始しましたJapan Endoscopy Database(JED)Projectは,約1,400の全指導・指導連携施設の協力をもとに日本専門医機構の新専門医制度研修実績の自動登録システムとしての実運用も開始しており,2020年に向けて引き続き全施設のデータ入力必須化を進めております.その一環として,施設がより一層JED Projectの参入を意識頂けるよう参加施設に対しては,参加証とステッカーの発行を開始しました.
また,2018年3月1日に一般社団法人JED研究機構を設立し,初期事業としてJED Projectに関する運用・展開業務といった推進活動を行っています.本学会とは,完全に独立した組織として,JEDが世界を見据えたAll JAPAN Big Dataとして,世界最大のデータ集積が可能となるための目的達成に向けて,今後,膨大となる消化器内視鏡データのクリーニング及び管理を行う機関となります.本学会の指導施設のみならず消化器内視鏡を使用している施設に参画頂けるようホームページにJED専用ページもご用意しておりますので,是非ご覧ください.
2017年度から国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下AMED)公募の研究事業として,国立情報学研究所(National Institute of Informatics:NII),東京大学,九州大学,名古屋大学のAI研究チームとの本学会と初めての共同研究が実現しAIによる内視鏡画像診断の研究がスタートしております.本研究によりAIによる内視鏡診療の自動診断が実現されれば,リアルタイムでの内視鏡自動診断が可能になり,早期がんの自動診断が期待され,国民に対する利益は大変に大きなものになると考えております.
2017年度の研究成果は「国際的に競争力のある成果,我が国の健康医療の発展に極めて大きな発展が見込まれる成果」とAMEDからも高い評価を頂きました.2018年度からは新たな研究として「スクリーニング時の逸脱監視」等の内視鏡医が臨床現場で必要とする,切迫した課題の解決となる独自のAI研究テーマを加えることによって,医療の質と安全性確保の実用性を評価する画期的な研究として認められ,3年間の継続発展する研究の承認を得ました.
本学会のAMED研究で実施中のものを含めて,内視鏡領域におけるAIの応用に関する研究は,この数年間で急速に進んでいることに伴い,厚生労働省,経済産業省,PMDAの方々にもご指導ご支援頂きながら,2018年9月に「AI推進検討委員会」を設立し,内視鏡診療におけるAIをより良い方向に推し進めております.
総会及び支部例会演題登録にあたっての研究に関する倫理審査の必須化については,2018年2月以降から本格稼働しております.
これまで,演題登録に関してはJDDWの指針を流用しておりましたが,2018年施行された臨床研究法に伴い本学会における倫理指針を同年9月に制定しており,今後の演題は「JGES演題登録時Medical ethics申請」に基づいてご登録頂きますようお願い申し上げます.詳しくは,ホームページ「演題応募における倫理審査」をご覧ください.
また,全4回の総会に亘って継続的主題を扱うべく2015年春の総会より開始したCore Sessionは,第1弾のテーマ「Advanced Diagnostic Endoscopy」「Interventional EUS」の成果が2018年英文誌に掲載され,2019年も第2弾「Innovative Therapeutic Endoscopy」のまとめが同じく英文誌に投稿,掲載予定となっております.今春の第97回総会からは,このCore Sessionも「炎症性疾患における最先端の内視鏡診療」をテーマとして早くも第3弾を開始することとなりました.引き続き実りある情報発信の場となるよう企画して参ります.
ガイドラインに関しては,2018年度は和文誌に「消化器内視鏡の洗浄・消毒標準化にむけたガイドライン」を,英文誌に「EST診療ガイドライン」「EPLBD診療ガイドライン」「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン 直接経口抗凝固薬(DOAC)を含めた抗凝固薬に関する追補 2017」を公開,「POEMガイドライン」は和文誌,英文誌共に掲載となりました.2019年度は「早期胃癌診断のための内視鏡ガイドライン」「胃癌に対するESD/EMRガイドライン(第2版)」「大腸ESD/EMRガイドライン(第2版)」「大腸スクリーニングとサーベイランスガイドライン」の発表が予定されています.さらに「内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン(第2版)」「食道癌に対するESD・EMRガイドライン」についても鋭意作成中となっております.
新しい試みとしましては,2019年は男女共同参画事業の一環として,女性内視鏡医キャリアサポート体制を有している施設情報をホームページで公開していく他,復職を目指す女性内視鏡医の方に向けてのハンズオンセミナーなどの企画を開始することと致しました.内視鏡は大腸内視鏡をはじめ女性医師の活躍が待たれている分野でもあります.学会が先生方のキャリア形成の一助となれるよう,努めて参ります.
国際事業としては,アジアの発展途上国において将来,内視鏡分野のリーダーとなるような医師(Rising Stars)に日本での研修機会を提供し,当該国での消化器内視鏡指導者の育成を支援するため,JGES “STARS”(JGES Supports Training of Asian Rising Stars)プログラムを2018年に立ち上げ,第1回が成功裏に終了致しました.第2回となる2019年は受入施設を全国に拡大する予定です.
国内外で開催している米国,欧州,韓国や中国をはじめとしたアジア諸国,ロシア,ブラジルなどとのジョイントシンポジウムやハンズオンコースは回数を重ね,特に海外の学会では人気のプログラムとなっています.欧州では2018年,ESGE(欧州消化器内視鏡学会)初の単独学会となる「ESGE Days」が開催され,第2回となる2019年4月のプラハでの学会では,本学会とのジョイントシンポジウムも企画されています.今後も様々な機会を設け,色々な形で国際貢献を行っていくとともに,本学会会員の国際化にも寄与できればと考えています.
英文誌Digestive Endoscopy(DEN)のインパクトファクター(IF)は,9年前の0.333から2017年の3.375へと順調に伸びているものの,引用の伸び率はやや鈍化しているように思われます.日本を代表する世界の内視鏡英文誌とするため,会員の先生方には是非,論文を執筆される際はDENを引用して頂けますようお願い申し上げます.
和文誌は完全Web化となってから2019年で3年目を迎えております.2018年8月よりWeb化の特性を活かした企画「Video Communication」もスタートしました.動画を中心とした魅せる論文として注目されるものと思います.これからも,会員の先生方へ有意義な情報を提供できるよう企画して参りますので,皆様からの活発な論文投稿をお待ちしております.
また,会員の先生方の重要な情報源となっておりますメールマガジンは,各支部のご協力もあり,アドレス登録率が差し当たっての目標としておりました90%を超えました.リニューアルしたホームページと併せて,今後もコンテンツの充実を図っていく所存です.
本年度も会員の皆様の一層のご支援,ご協力をお願い申し上げます.