2017年1月6日
理事長
田尻 久雄
平成29年の年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。本誌面をお借りして、本学会の現状と課題について、述べさせていただきます。教育プログラムの充実と改善を図ることは、本学会として重要な役割です。平成26年から本学会が共催、後援する内視鏡ライブイベントが順調に行われており、これまでと同様に教育セミナー、ハンズオンセミナーも定期的に行われ、ビデオライブラリーなど教育用資材が整備されています。卒後教育委員会から「消化器内視鏡ハンドブック(改訂第2版)」を本年5月発行する予定です。
日本専門医機構に対しては、平成28年2月より日本消化器病学会及び日本肝臓学会並びに本学会の3学会の理事長と専門医制度担当理事とで協議し「日本消化器病学会、日本肝臓学会、日本消化器内視鏡学会の3学会が独立した教育プログラムを持ち、互いに連携しつつ専門医の育成を行う」ことを3学会の基本方針としています。日本専門医機構の新体制がスタートした昨年7月に3学会の理事長名で「3学会が密なる連携をもって質の高い消化器系研修を可能にする」とした声明文を機構に提出しております。日本は内視鏡診断と治療の技術で世界最高水準にあり、その医療機関が蓄積しているデータを集めてデータベース化するJapan Endoscopy Database(JED) Projectを平成27年より開始しています。日本全国の内視鏡関連手技・治療情報を登録し、集計・分析することで医療の質の向上に役立て、患者に最善の医療を提供することを目指す 事業として世界初の試みであり、患者側だけでなく、医療を提供する側にも大きな利益をもたらすものと確信しています。今後、新専門医制度施行に併せてJED Projectを専攻医の経験実績を登録出来るように進めております。本Projectについては、支部セミナー毎に講演して周知しつつあり、ホームページでもその説明と質問を受け付けております。
平成27年より内視鏡検診・健診あり方検討委員会を新設して活動しています。現在、内視鏡検診の現場での問題点を調査しており、改善策を提案していきたいと思います。本委員会から「上部消化管内視鏡スクリーニング検査マニュアル」を本年春頃に発行予定です。
実践的医療を安全かつ円滑に実施する上で重要で、かつ社会的にもkeyとなるガイドラインに関して、平成28年度は「非静脈瘤性上部消化管出血における内視鏡診療ガイドライン」を英文誌へ掲載しました。また、和文誌に「EPLBD診療ガイドライン」「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン(抗凝固薬に関する追補版)」が公開予定となっており、英文誌へは「小腸内視鏡検査診療ガイドライン」「EST診療ガイドライン」を掲載準備中です。新たに、昨今の検診等による内視鏡使用の広まりを受け、「早期胃癌診断のための内視鏡ガイドライン」「内視鏡洗浄消毒ガイドライン」を現在作成中であるほか、本学会の井上晴洋理事により世界に先駆け開発された「経口内視鏡的筋層切開術(POEM:per-oral endoscopic myotomy)」のガイドライン作成に着手しました。 国際化事業の一環として、欧州・米国・アジア各国との合同シンポジウムの継続に加え、平成28年からは欧州消化器内視鏡学会(ESGE)の留学プログラムに協力し、日本での研修を希望する若手医師の受入を始めました。昨年5月には第1回の受入研修が東京大学医学部附属病院で成功裏に終了しています。Official journal のDigestive Endoscopy のimpact factor(IF)は2.715となり、IF 3以上の達成は確実と期待をしております。
和文誌は昨年1月から完全Web化となり、会員の先生方におかれましてはJ-STAGEおよび電子書籍サービスをご利用いただいていることと思います。昨年9月からJ-STAGEではHTMLでも閲覧できるようになり、さらに利便性が向上しています。会告や重要かつ緊急なお知らせ等につきましても、ホームページ及びメールマガジンでご案内させていただいております。すでに86%の会員の方にご登録いただいておりますが、まだお近くにメールアドレスをとご登録いただけていない先生方がおりましたら是非ともお声をかけて下さいますようにお願いいたします。
本年度も会員の皆様の一層のご支援、ご協力をお願いいたします。