2016年1月6日
理事長
田尻 久雄
平成28年の年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
本誌面をお借りして、本学会の現状と課題について、述べさせていただきます。学会のあり方について、JDDWでは主題の定義を明確にして、“学会全体のスリム化”、“教育の重視”、“国際化”へと変革しつつあります。日本消化器内視鏡学会としてもその流れに沿いながらも独自の方向性を模索しています。学術集会としての質の向上を図るべく継続的な主題を取り扱うことにして、平成27年春の学術集会から、上部と下部消化管におけるadvanced diagnostic endoscopy(ADE)、胆膵におけるInterventional EUSをコアセッションとして始めました。2年間継続して論議を深め、一定のゴールを目指しています。平成28年春の学術集会から新たな継続的主題:各領域の統一タイトルとして“Innovative Therapeutic Endoscopy”とすることが決まっています。またJDDW期間中に開催しているInternational ESD hands-on seminarは国内外から高く評価されています。教育プログラムの充実と改善を図ることは、本学会として重要な役割です。平成26年から本学会が共催、後援する内視鏡ライブイベントが行われており、これまでと同様に教育セミナー、ハンズオンセミナーも定期的に行われ、ビデオライブラリーなど教育用資材が整備されています。新専門医制度に向けて、これまで日本専門医機構との協議を重ね、平成27年11月には、会員の皆様にご協力いただいたパブリックコメントを受け修正した研修プログラム整備基準のVer.2.01に加え、専門医研修カリキュラムならびに日本消化器内視鏡専門医研修マニュアルなども策定して提出しており、一定の理解を示していただけるものと期待しております。本学会としては、引き続きサブスペシャリティ領域への移行に向けて関係者一同最大限の努力をしてまいります。
実践的医療を安全かつ円滑に実施する上で重要で、かつ社会的にもkeyとなるガイドラインに関して、平成27年度は「内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン」「胃癌に対するESD/EMRガイドライン」「大腸ESD/EMRガイドライン」を英文誌へ掲載、「EST診療ガイドライン」「小腸内視鏡検査診療ガイドライン」「非静脈瘤性上部消化管出血における内視鏡診療ガイドライン」は、和文誌へ掲載しております。「EPLBD診療ガイドライン」は和文誌での公開を準備中です。また「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡に関した偶発症の全国調査」の解析は完了し、こちらも和文誌に掲載準備を進めております。
国際化事業の一環として、アジア各地への内視鏡実地指導に加えて、欧州や米国消化器内視鏡学会との合同シンポジウムをそれぞれ毎年2回、日本と欧米の学会開催地とで行っていますが、海外でも大いなる好評を得ており平成28年度以降も継続事業として進めてまいります。また国際的に活躍する次世代のリーダーの育成を目的として、平成25年度からは短期(2~3カ月)海外留学制度を設け、すでに第3期生が欧米各地に留学して成果を挙げてきています。
本学会の和文誌・英文誌の発行事業も順調に行われ、official journal のDigestive Endoscopy のimpact factor(IF)は2.058となり、まもなくIF3以上の達成は確実と期待をしております。なお、和文誌は今月から完全Web化となり、今後は、J-STAGEおよび電子書籍サービスでの閲覧となりました。会告や重要かつ緊急なお知らせ等につきましても、昨年1月よりホームページおよびメールマガジンでご案内させていただいております。メールアドレスを登録していない一部の先生方に是非ともお声をかけて下さいますようにお願いいたします。
日本は内視鏡診断と治療の技術で世界最高水準にあり、その医療機関が蓄積しているデータを集めてデータベース化するJapan Endoscopy Database(JED)Project を平成27年より開始しました。日本全国の内視鏡関連手技・治療情報を登録し、集計・分析することで医療の質の向上に役立て、患者に最善の医療を提供することを目指す事業として世界で初めての試みであり、患者側だけでなく、医療を提供する側にも大きな利益をもたらすものと確信しています。今後、専門医制度、内視鏡検診・健診との相互利用、前向き臨床研究の推進、偶発症調査などに利用できると期待しています。
今年は本学会にとって重要な時期にあたりますが、会員の皆様の一層のご支援、ご協力をお願いいたします。