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医療関係のみなさま 各種手続き 演題応募における倫理審査 JGES倫理規準Q&A
JGES倫理規準Q&A
※下記は,日本消化器外科学会作成のQ&Aを元に作成しています.
Q1. オプトアウト(情報の公開と研究対象者の拒否権の保障)とはどんなものを指しますか?
A1.オプトアウトとは,その研究の概要を実施医療機関等の掲示板やホームページなどに公開して,研究対象者が自身の試料もしくは情報をその研究に利用されることを拒否する機会を保障することを指します.オプトアウト文書には必要に応じて下記の項目を記載することが求められています.
①試料・情報の利用目的及び利用方法(他の機関へ提供される場合はその方法を含む.)
②利用又は提供する試料・情報の項目
③利用又は提供を開始する予定日
④試料・情報の提供を行う機関の名称及びその長の氏名
⑤提供する試料・情報の取得の方法
⑥提供する試料・情報を用いる研究に係る研究責任者(多機関共同研究にあっては,研究代表者)の氏名及び当該者が所属する研究機関の名称
⑦利用する者の範囲
⑧試料・情報の管理について責任を有する者の氏名又は名称
⑨研究対象者等の求めに応じて,研究対象者が識別される試料・情報の利用又は他の研究機関への提供を停止すること
⑩ ⑨の研究対象者又はその代理人の求めを受け付ける方法
⑪外国にある者に対して試料・情報を提供する場合には,下記情報
i. 当該外国の名称
ii. 適切かつ合理的な方法により得られた当該外国における個人情報の保護に関する制度に関する情報
iii. 当該者が講ずる個人情報の保護のための措置に関する情報
Q2. オプトアウトの開示はいつまで行う必要性がありますか?
A2.研究開始前(利用又は提供を開始する予定日より前)に開示し,拒否の機会を保障する必要があります.研究終了時までご提示いただく必要があります.
Q3. 当院には倫理審査委員会がありません.学会発表はできませんか?
A3.以下の何れかに該当する研究は倫理審査委員会の審査を受けることなく発表は可能です.
① 9例以下をまとめた症例報告※1(但し,症例数に関係なく診療の有効性・安全性を評価するなど研究性のあるものは除く)である.
② 傷病の成因・病態の理解,傷病の予防・診断・治療方法の改善,有効性・安全性の検証を通じて,人の健康の保持増進または傷病からの回復・生活の質の向上に資する知識を得ることを目的としない報告等である※2.
③ 論文や公開されているデータベース,ガイドラインのみを用いた研究である.
④ 既に学術的な価値が定まり,研究用として広く利用され,かつ,一般に入手可能な試料・情報を用いた研究である※3.
⑤ 個人に関する情報(個人情報,匿名加工情報,仮名加工情報,および個人関連情報),および死者に関するこれらに相当する情報に該当しない既存の情報を用いた研究である.
⑥ 既に作成されている匿名加工情報を用いた研究である.
⑦ 法令に基づく研究である(臨床研究法,再生医療等安全性確保法は除く).
⑧ 人体から分離した細菌,カビ,ウイルス等の微生物の分析等を行うのみで,人の健康に関する事象を研究の対象としない研究である.
⑨ 動物実験や一般に入手可能な細胞(iPS 細胞,組織幹細胞を含む)を用いた基礎的研究である.
⑩ 海外で実施された研究である(研究対象となった試料・情報が日本のものは除く).但し,実施した国の規定は遵守していることが必要.
上記以外は,必ず倫理審査委員会の審査を受け機関の長の許可が必要です.委員会を常設していない機関からの研究発表については,他機関からの倫理審査を受け付けている委員会で審査を受けて下さい.多機関共同研究の場合は,原則として全ての共同研究機関は研究代表者が審査を受ける倫理審査委員会での一括審査を受ける必要があります.その場合は,所属機関での追加の審査は原則不要ですが,機関によっては再度審査が必要な場合もあります.何れであっても,研究の実施には各所属機関の長の許可は必要です.
尚,本学会では倫理審査委員会が設置されていない機関で,自機関のみで実施する観察研究については倫理審査を受け付けています.
参考:https://www.jges.net/medical/procedure/ethical-review-of-abstract-submission/trustee-of-the-ethics-review
※1:個人情報保護法及び医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンスを遵守すること
※2:(例):①単に治療方法の紹介,教育・トレーニング方法の紹介,②機関の医療体制や受診率向上の取り組みに関する紹介
※3:「既に学術的な価値が定まり,研究用として広く利用され,かつ,一般に入手可能な試料・情報」の「既に学術的な価値が定まり」とは,査読された学術論文や関係学会等において一定の評価がなされており,主要ジャーナルにおいて注釈なしに汎用されているようなもの,一般的なものとして価値の定まったものを指します.「研究用として広く利用され」に関しては,例えば,米国の疾病対策センター(CDC)が研究用としてウェブ上にダウンロード可能なかたちで公開している情報のほか,査読された学術論文に掲載されている情報及び当該論文の著者等が公開している原資料で研究用として広く利用可能となっている情報などが該当します.「一般に入手可能な試料・情報」としては,必ずしも販売されているものに限らず,提供機関に依頼すれば研究者等が入手可能なもので,例えば,HeLa 細胞や,ヒト由来細胞から樹立した iPS 細胞のうち研究材料として提供されているものなどが該当しますが,一般的に入手可能か否かは,国内の法令等に準拠して判断します.
Q4. 包括的な同意とはどんな同意を指しますか?
A4.研究対象者から取得された試料・情報が,研究対象者等から同意を受ける時点では特定されない将来の研究のために用いられる可能性又は他の研究機関に提供する可能性があることと,同意を受ける時点において想定される内容並びに実施される研究及び提供先となる研究機関に関する情報を研究対象者等が確認する方法について説明し同意を得ることを指します.包括的な同意が得られた試料・情報であっても,使用する際は,当該研究の内容に係る研究計画書の作成または変更を行い,オプトアウトの実施が必要です.
なお,目的や具体的な内容が全く特定されていない研究に対するいわゆる「白紙同意」(単に将来何らかの研究に使われる可能性がある旨のみについて同意を得ること)と包括的な同意は異なり,白紙同意ではオプトアウトで研究を実施することはできません.
Q5. 日本消化器内視鏡学会では臨床研究の倫理審査は行ってもらえるのでしょうか?
A5.本学会では,倫理審査委員会が設置されていない機関で,自機関のみで実施する観察研究については倫理審査を受け付けています.
参考:https://www.jges.net/medical/procedure/ethical-review-of-abstract-submission/trustee-of-the-ethics-review
Q6. 各機関の規程等と日本消化器内視鏡学会の指針が同一でない場合,どちらの内容を優先したらよいでしょうか?
A6.本学会における発表に際しては,本学会の指針に従っていただく必要があります.但し,研究の遂行に関しては各機関の規程等に従って下さい.最終的な発表内容に関しては,発表者個人が負うものとなります.
Q7. 所属機関の長とは部長の認可でよいですか?
A7.大学病院などであれば学長もしくは規定により権限を委任された,病院長,センター長,学科長,学類長などであり,その他の医療機関であれば所属する法人の長であるセンター長,機関の長,組合長,病院長などに該当するため,規定により権限を委任されていない所属部署の部長の認可では無効となります.
Q8. 9例以下をまとめた介入を伴わない症例報告は倫理審査委員会の審査が必要ですか?
A8.10例以上をまとめた症例集積研究は倫理審査委員会の審査が必要です.(症例報告の症例数に関しては各機関や学会によって扱いが異なる場合があります.)
また,「医学系指針」にも個別の症例を報告すること(いわゆる症例報告)は指針の対象にならないことが記載されていますが,9例以下であっても治療例と非治療例の比較を行ったり,有効性・安全性の評価を行ったり研究性のあるものは少数例でも倫理審査委員会の審査が必要となります.例えば,「○○症例を経験した」「有効な症例を経験した」「安全であると思われた」などの記載は症例報告の範疇として捉えられるが,「有効性を検討した」「安全性を検討した」のような記載がある場合は研究性があると判断される場合もあるので,表現に注意をして下さい.
※未承認・適応外の医療が,研究としてではなく医療として実施された場合は,医療法に従って各機関での手続きを経ていることが必要です.
※「個人情報保護法」及び「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」を遵守し,症例報告する旨の同意を原則取得する必要があります.口頭で同意を得て,診療録に同意を得た旨を記録すると良いでしょう.但し,転居や死亡等にて同意の取得が困難な場合は同意の取得は免除されます.その際にも同意取得困難な旨の記録が必要です.機関によって届出などの規定がある場合には,それに従って下さい.何れの場合も,個人が特定できないような配慮が必要です.
Q9. 過去に採取した生検検体を用いて研究を実施することを検討しています.当院では全ての内視鏡検査を行う際に,生検検体の利用を含めて検査結果を研究に用いることがある旨を記載した同意説明文書にサインをいただいているので,新たな手続きなく生検検体を研究に用いることに問題はないと理解していますが間違いないですか?
A9.診療の一環として取得された情報や検体(試料)余剰分を,研究者や研究課題を特定せずに,将来実施される様々な研究に利用することについて文書で同意いただくものを包括同意と言います.包括同意は具体的な研究内容を明示していないため,特定の研究に試料・情報を用いることに対して同意を得たことにはなりません.個別の研究に試料・情報を用いる場合は改めてオプトアウトを行う必要があります.(QA4参照)
Q10. 症例報告の際に発表スライドに内視鏡時の動画を含めたいのですが,その場合,対象患者の文書同意が必要ですか?
A10.症例報告は倫理指針の適用外ですが,「個人情報保護法」及び「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」を遵守し,個人情報の保護に配慮する必要があります.個人を特定することができないような配慮(名前やIDの削除,顔や個人の特徴が映らないようにするなど)がなされている場合は,文書同意は必須ではありません.
ただ,プライバシー等の観点からも可能であれば,文書にて同意を得ているとより良いと考えます.
Q11. 採血は侵襲に当たりますか?
A11.診療目的の採血で得られた検査データを観察研究に利用する場合や,診療で利用後の検体の余剰分を研究用の解析に用いる場合は,「侵襲なし」の研究としてよい. 診療として行う採血の際に,研究目的で上乗せして採血量を増やす場合(予め研究用として分割して採取する場合を含む)や,研究目的のみで採血をする場合であっても,一般健康診断で行われる程度の採血であれば,「軽微な侵襲」と判断してよい. 但し,明らかに研究対象者の身体に影響があると考えられる採血量の増加を伴うものや,一般健康診断で行われる採血量を超えるものに関しては,「侵襲あり」と判断されます.
Q12. 大腸癌再発症例における現在未承認薬の抗 PDL-1(programmed cell death ligand-1)抗体薬を使用した症例をまとめて報告したいのですが,研究として倫理審査会の承認は必要ですか?
A12.
1)研究目的ではなく,自由診療や高難度医療等,機関の規定に則り機関の長の許可を得て行った症例を,後ろ向きにまとめる場合は「観察研究」としての倫理審査委員会の承認を得て下さい.但し,症例報告として発表する場合は倫理審査委員会の審査は不要です.(QA8参照)
※未承認・適応外の医療が,研究としてではなく医療として実施された場合は,医療法に従って各機関での手続きを経ていることが必要です.
2)研究としてこの治療を実施する場合は,「特定臨床研究」に該当し「臨床研究法」の対象となります.法に基づいた手続きを経てから実施して下さい.
※研究目的で,医薬品や医療機器等を未承認あるいは適応外で使用する研究は,「特定臨床研究」であり,「臨床研究法」の遵守義務対象となります.また,既承認,承認範囲内のものであっても,医薬品や医療機器等の有効性や安全性を評価する場合も「臨床研究法」の遵守努力義務対象となります.なお,企業等から資金提供を受けた医薬品や医療機器等の研究は,対象となる医薬品や医療機器等の承認の有無や適応範囲に関わらず,「特定臨床研究」であり,「臨床研究法」の遵守義務対象となります.
Q13. 関連機関10数箇所からデータを提供いただき,それを取りまとめて報告することを考えていますが,その場合,報告者の所属する機関での倫理審査委員会の承認書があれば,他の機関での審査は不要と考えて良いですか?
A13.研究の実施体制により対応が異なります.
1)関連機関を共同研究機関とする場合(論文では共著者になり得ます)
各機関に研究責任者を置き,個々の機関での倫理審査が必要です.倫理審査は,代表機関の倫理審査委員会での一括審査が可能な場合もあります.
2)関連機関を試料・情報の提供のみを行う機関(研究協力機関)とする場合(論文では謝辞に記載となります)
関連機関の倫理審査は不要で,提供元の機関の長が把握していれば情報を取得することは可能です(研究に関しての通知または公開が必要な場合もあります).但し,研究実施機関の研究責任者は,提供元の機関が適正に試料・情報を提供するために必要な体制及び規程の整備が行われていることを確認する必要があります.
※匿名化が困難な情報が含まれる場合は倫理審査が必要となります.
Q14. 以下の研究計画の侵襲・介入の有無について教えて下さい.
1)過去に大腸癌の患者に適応外の抗癌剤を用いて治療した群と標準治療群とを比較した結果を取りまとめて報告する.
2)あるサプリメントの癌抑制効果を検証するために,サプリメント服用群と非服用群に無作為に群分けして群間比較を行う.
3)人間ドックの上部消化管内視鏡検査受診者のうち,研究参加に同意を得られた方のみを対象に,研究目的に1箇所生検を行い,特殊染色を行う.
A14.
1)について
すでに医療として実施された臨床データをとりまとめる研究ですので,研究対象者への侵襲はなく,研究対象者の治療方針に影響を与えるものではないので,群間比較はおこないますが介入研究とはなりません.(侵襲なし・介入なし)
2)について
患者の行動を制限する(無作為にどちらかの群に割付られること)ので,介入にあたります.侵襲についてはサプリメントとして扱う場合は侵襲なしと思われますが,薬効があるものと考える場合は侵襲に当たることも考えられます.(侵襲なし/あり,介入あり)
何れにしても,癌抑制効果という有効性評価を行う介入研究ですので「臨床研究法」の対象となります.研究のリスクのみでなく研究結果が医療現場に与える影響の大きさによって該当する規制が異なります.
3)について
医学系指針上「通常の診療を超える医療行為であって研究目的で実施するもの」は介入とすると記載されていますが,「通常の診療を超える医療行為」とは未承認・適応外の医薬品または医療機器の使用,その他の新規の医療技術による医療行為を指します.そのため,生検は通常の診療を超える医療行為には当たらないとみなされますので一般的には介入なしと考えられます.
追加の生検については,対象者への侵襲があると考えます.(侵襲あり,介入なし)
Q15. 患者の試写体(顔写真)などを発表で使用したいのですが,事後で同意を得る必要がありますか?
A15.症例報告は倫理指針の適用外ですが,「個人情報保護法」及び「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」を遵守し,症例報告する旨の同意を事前に取得する必要があります.口頭で同意を得て,診療録に同意を得た旨を記録すると良いでしょう.但し,転居や死亡等にて同意の取得が困難な場合は同意の取得は免除されます.その際にも同意取得困難な旨の記録が必要です.機関によって届出などの規定がある場合には,それに従って下さい.何れの場合も,個人が特定できないような配慮が必要です.
Q16. 続報のような発表に関しては,再度倫理審査を受ける必要性がありますか?
A16.研究計画書に記載された内容の範囲であれば再審査の必要はありません.
Q17. 過去に当院を含む関連病院の多機関共同研究として胆道癌に対する化学療法の臨床試験を行い,その治療成績を発表しました.今回は,その時の臨床試験データを用いて,「特に高齢者に対する治療成績と副作用」をまとめて発表したいと思いますが,倫理審査委員会の承認やオプトアウトは必要でしょうか?
A17.今回の解析内容が,元の研究計画書に記載されており,計画されていた解析であれば,承認された研究の範囲内と考えられますので特に倫理審査やオプトアウトは不要と思われます.しかし,元の研究計画書に記載されておらず,後日発案された解析であれば,倫理審査委員会の承認やオプアウトが必要です.また,学会発表や論文発表では,同一内容の発表(二重投稿,サラミ研究)と捉えられる可能性がありますので注意が必要です.
Q18. 患者の癌組織を利用して,新たに発見された癌関連遺伝子群の発現を検証した発表を行いたいのですが,研究として倫理審査委員会の審査は必要ですか?
A18.倫理審査委員会あるいはそれに準じた委員会の審査に基づく機関の長の許可が必要です.また同意取得(インフォームド・コンセント:ICまたは適切な同意)またはオプトアウトも必要です.
Q19. 関連機関から氏名等の情報を削除し研究IDで置き換えた状態のデータを収集して実施した過去の研究におけるデータを用いて新たに研究を実施したいと思います.当院には対応表は存在せず研究対象者の特定が不可能な状態ですが,倫理審査委員会の承認やオプトアウトは必要でしょうか?
A19.取得する情報が提供元にて個人情報(対応表があり容易照合できるもの),個人関連情報(仮名加工情報には該当しないが,提供元において対応表がなく個人を識別できない情報)のいずれであっても研究を行う機関は倫理審査を受ける必要があります.また,提供元で使用するICやオプトアウトの見本についても審査対象となります.但し,提供元で個人の識別ができない個人関連情報については同意の手続き等(IC,適切な同意,もしくはオプトアウト)が不要です.なお,個人情報保護法の規定に基づいた仮名加工情報は他機関への提供は禁止されています.
Q20. 匿名加工情報,仮名加工情報,個人関連情報とはどの様な情報ですか?
A20.
・匿名加工情報とは,
個人情報保護法の規定に基づいて,特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって,当該個人情報を復元することができないようにしたものをいいます.匿名加工情報の作成に際して利用目的を公表する必要があり,要配慮個人情報の置き換えなど,一般の医療機関が個人情報保護法の規定に基づいた匿名加工情報を作成することは非常に困難と考えられます.
・仮名加工情報とは,
個人情報保護法の規定に基づいて,他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報のことです.仮名加工情報の作成に際して利用目的を公表する必要があり,仮名加工情報の利用にあたっては個人を識別するための照合を行うことが禁じられています.また,他の機関に提供することも禁じられています.このことから,機関として仮名加工情報に対して独立して安全管理措置を行う責任者が必要です.機関として診療情報について仮名加工情報を作成することは可能ですが,研究者自身がカルテ情報等と照合することが不可能なことから,実際に仮名加工情報を研究で利用する必要性は相当に低いと思われます.
・個人関連情報とは,
個人情報保護法の規定に基づいた匿名加工情報にも仮名加工情報にも該当しないが,容易照合性がなく個人識別符号も含まない個人に関する情報のことです.既存情報のうち,改訂前の指針において実施された研究等で得られた既存の情報で,対応表が存在しない等で個人を特定することが困難な状態になったもので個人識別符号を含まないと判断される場合には個人関連情報に相当すると考えられます.なお,提供元では個人関連情報であっても,提供先で保有する情報と照合することで個人が特定できる場合には提供先にて個人情報となる場合があるので,この場合にはICの手続き等において注意が必要です.個人関連情報は個人に関連する情報であり,これらを用いて臨床研究を実施する場合は倫理審査が必要です.
Q21. 公開されているデータベース,ガイドラインなどをまとめた研究発表,あるいは法令に基づく研究発表は倫理審査委員会での審査を受ける必要がありますか?
A21.公開されているデータベース,ガイドラインには個人を識別できる情報は含まれず,既に学術的価値が高まり,研究用として広く利用され、かつ一般に入手可能であることから研究を実施する際に審査を受ける必要はありません(但し,引用したデータベース・ガイドラインは明記する必要があります).但し,公開されているデータベースであっても個人情報に再連結するようなことを行う研究に関しては倫理審査委員会の審査が必要になります. 臨床研究法,再生医療等安全性確保法を除いた法令に基づく研究発表は倫理審査委員会の審査は不要です.
Q22. 既存のヒトのサンプル(試料)を用いて研究したいのですが,インフォームド・コンセント(IC)はすべての患者に必要ですか?
A22.試料について特定の個人を識別することができず個人に関する情報に該当しない既存の情報を用いた研究の場合,ICは不要です.
上記以外の場合であっても,当該研究の目的と相当の関連性がある別研究等で既にICを取得済みのものであれば,ICの取得が困難である場合には通知・公開のみでICは不要です.それ以外の研究は,原則ICが必要ですが,診療目的で取得された既存の試料(手術検体など)で当該既存試料を用いなければ研究の実施が困難でありICの取得が実質困難であり,学術例外及び公衆衛生例外に該当する場合,もしくは別の研究目的で取得された既存の試料において包括的な同意がある場合にはオプトアウトでICに変えることが可能です
Q23. 研究が保健事業の一環とみなされる場合は,倫理審査は不要と聞きました.倫理審査が不要となるのはどのような場合ですか?
A23.地方公共団体が地域において行う保健事業(検診,好ましい生活習慣の普及等)に関して,例えば,検診の精度管理のために,当該検診で得られた情報や検体を関係者・関係機関間で共有して検討することは,保健事業の一環とみなすことができ,倫理審査は不要です.
他方,保健事業により得られた人の健康に関する情報や検体を用いて,生活習慣病の病態の理解や予防方法の有効性の検証などは,「研究」に該当し,倫理審査が必要となります.
Q24. 培養細胞を用いた基礎的研究は倫理審査委員会の審査が必要ですか?
A24.一般に入手可能な細胞等を培養する研究は倫理審査委員会の審査は不要です.患者さんから得られた試料を用いて培養し研究する場合は,倫理審査委員会の審査が必要です.その場合,原則文書によるICが必要です.
Q25. ヒト ES 細胞,ヒト iPS 細胞,ヒト組織幹細胞を利用した臨床研究は倫理審査以外に何が必要ですか?
A25.「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成 25 年法律第 85 号)」を遵守する必要があります.
Q26. 倫理委員会を通さず研究を行い発表した場合には,どんなペナルティが科せられますか?
A26.本学会としては,学会員が常に倫理指針に則って真摯に行動されていることを前提にしています.倫理違反は,基本的に研究責任者が責任を負うことになり, 機関の長はその監督責任が問われます.また,違反の事実が判明した場合,学会倫理委員会の審議対象になることもあります.
※なお,「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(文科省・厚労省・経産省)」では,以下の場合は重大な指針不適合となり,機関の長は厚生労働大臣への報告が義務付けられています.
① 倫理審査委員会の審査又は研究機関の長の許可を受けずに,研究を実施した場合
② 必要なインフォームド・コンセントの手続等を行わずに研究を実施した場合
③ 研究内容の信頼性を損なう研究結果のねつ造や改ざんが発覚した場合
また,「特定臨床研究」に関して違反があった場合は,「臨床研究法」違反となり,研究責任者は処罰の対象となることがあります.
Q27. 発表する際に,自分の研究が倫理指針上どのカテゴリーの研究に属するか,あるいは倫理審査を受けたかどうかを提示する必要はありますか? 利益相反(COI)のようなスライドを作成して提示する必要はありますか?
A27.現時点では Medical ethics をご提示頂く予定は有りません.但し,御自身の発表内容が倫理指針のどのカテゴリーに属するのかを充分理解した上で本学会における発表に臨まれる事は“ヒトを対象とした医学系研究”を行う者として当然の基本姿勢であり,本学会会員に求められる基本ルールであることをご理解下さい.
Q28. 一つの研究として公表する予定で計画した研究を,いくつかの小研究に分割して学会発表や論文投稿することはできますか?
A28.一つの研究として発表可能な成果を,複数の小さな研究に分割して公表することは「サラミ出版」や「サラミ法」と称されます.この方法は業績の水増しととらえられるのみならず,研究全体の意義が把握しにくくなり他の科学者の無用な手間暇を掛けさせるといった点から,不適切な発表方法として日本学術振興会発行の「科学の健全な発展のために」に明記されています.
(参考資料)
独立行政法人 日本学術振興会「科学の健全な発展のために」編集委員会編「科学の健全な発展のために~誠実な科学者の心得~」 2015 丸善出版株式会社
Q29. 有効性や安全性の評価を目的とせず,医師又は患者から,いわゆる「医療機器の使用感」について意見を聴く調査は,臨床研究法の対象となる臨床研究に該当しますか.
A29.該当しません.
Q30. 適応外使用であっても,「保険診療における医薬品の取扱いについて(通称:55年通知)」(昭和55年9月3日付け保発第51号厚生省保険局通知)が適用され,保険診療として取り扱われることがある医療であっても,そうした用法等で用いる医薬品等の安全性及び有効性を評価する臨床研究は,「特定臨床研究」に該当しますか.
A30.「特定臨床研究」該当し,臨床研究法遵守義務となります.
Q31. 学会に倫理審査(迅速審査)を申請するにあたって,臨床研究教育(倫理を含む)に関する受講証が必要なのですが,所属機関では実施されていません.どこで受講することが出来ますか.
A31.本学会への申請にあたっては,学会で開催されるセミナーまたは以下のe-ラーニングのいずれかの受講をお願いいたします.
ただし,セミナープログラムに研究倫理に関するセッションが含まれていない場合は認められません.
また,本学会以外主催のセミナー等における受講証の場合は,当該セミナー等のプログラムの写しを求める場合があります.
なお,受講にあたって費用が発生する場合がございますが,本学会からの費用補助はございませんこと,ご了承いただきますようお願い申し上げます.
①ICRweb「臨床研究の基礎知識講座(旧 臨床研究入門初級編)」
②日本学術振興会「研究倫理eラーニングeL CoRE」
③APRIN eラーニングプログラム「eAPRIN」(旧 CITI Japan)
Q32. 迅速審査で「承認」いただいた研究を学会で発表したあと論文にしたいのですが,投稿にする際,倫理規定がクリアできているという認識でよろしいですか.
A32.倫理委員会承認済とお考えいただいて結構です.なお,本学会でも学会誌を発行しておりますので,本学会誌への投稿もご検討いただき,学会の発展に寄与頂ければ幸甚です.
Q33. 迅速審査を依頼する際の条件として研究倫理セミナー等受講証明書等の提出がありますが,受講証に有効期限はありますか.
A33.適宜指針の改定も実施されることから,①直近の知識を持ち合わせることは必要という点,②「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」上のガイダンス(P51)でも「少なくとも年に1回程度は教育・研修を受けていくことが望ましい」とある点,③機関間の異動も見込まれる点等から,有効期限を2年以内としています.
2024年12月2日更新