小腸は胃と大腸の間にある非常に長い管状の臓器です。その長さは5〜7mもあり、その大部分はほとんど固定されずに複雑に曲がりくねった状態でお腹の中に収まっています。そのため、胃や大腸の検査に用いられているスコープでは、小腸の一部しか見ることができませんでした。しかし、今世紀になって登場したカプセル内視鏡とバルーン内視鏡という特殊な機械を用いることで、長い小腸も内視鏡で見ることができるようになりました。
カプセル内視鏡は、直径11mm、長さ26mmのカプセル(図1)に、ライトやレンズ、カメラ、電池、画像送信装置などが組み込まれています。このカプセルを飲みこむと、消化管を運ばれていく間、1秒間に2〜6コマの写真が撮影されます。写真は腰に付けた記録装置に電波で転送され、検査終了後にコンピューター上で診断を行います。カプセルが小腸の中を運ばれていく時間は個人差があり、短ければ3時間前後、長ければ10時間以上かかることもあります。カプセル内視鏡の電池が切れるまでに小腸を通り抜けて大腸まで運ばれれば、小腸を全て見たことになります(手術で腸にバイパスがある場合は除きます)。現在では、電池の改良により8割以上の人で全小腸を見ることができます。
バルーン内視鏡は、先端にバルーンを付けたホース状の器具(オーバーチューブ)を、細長いスコープに被せて使います。オーバーチューブ先端のバルーンが腸管に固定されるので、手元の操作がスコープ先端に伝わりやすくなっています。
また、オーバーチューブ上に腸を畳み込んで短縮でき、スコープの長さよりも長い小腸を見ることができます。スコープ先端にバルーンのあるダブルバルーン内視鏡(図2)と、バルーンの無いシングルバルーン内視鏡の2種類があります。口からの検査と肛門からの検査の2回行うことで、4〜7割の人で全小腸を見ることができ、さらには内視鏡治療も行えます。