結論から言いますと一つのカプセル内視鏡で消化管すべてを観察することはできません。現在日本では小腸用のカプセル内視鏡と、大腸用のカプセル内視鏡が保険適用となっており、小腸、大腸疾患に対する有用性が報告されています。一方、他臓器においては食道用のカプセル内視鏡、胃用のカプセル内視鏡が開発されていますが、有用性などの検討が行われているところであり、国内での使用はできません。小腸用のカプセル内視鏡は、カプセルの片側にカメラがあり、一秒間に2~6枚の写真撮影が可能です。
図1は小腸用カプセル内視鏡で撮影された小腸ポリープですが、数個の隆起したポリープが観察できます。大腸用カプセル内視鏡は、2006年に初めて報告され、現在では性能が向上した第2世代の大腸用カプセル内視鏡が使用されています。この第2世代の大腸用カプセル内視鏡は、大きさ11mm×31mm、両端に一つずつ小型カメラが搭載されており、片側のカメラの視野角(画角) は172°となっています(図2)。
したがって、両側をあわせると、344°となり、ほぼ360°に近い領域を撮像することが出来ます。さらに、カプセルの移動速度を自動認識し、撮像枚数を毎秒4~35枚に可変することもできます。つまり、カプセルが早く移動した場合、撮像枚数を増やし、停滞した場合はゆっくり撮影することができます。
図3には大腸用カプセル内視鏡で撮影した正常な大腸の画像を示しますが、明瞭に大腸粘膜が観察できます。2014年に日本においても大腸用カプセル内視鏡は保険適用となり、その適用は、「大腸内視鏡が施行困難、もしくは、施行困難が想定される患者」となっています。大腸用カプセル内視鏡を使用したカプセル内視鏡検査は、当然、食道、胃、小腸を撮影しながらカプセルが大腸まで到達しますので、食道、胃、小腸の検査もできるのではないかと思われるかもしれません。しかしながら、胃の中は他の臓器と比べると、とても広く、カプセル内視鏡ではすべてを観察することができません。また大腸用カプセル内視鏡は電池を長持ちさせるために、カプセル内視鏡が胃内にある場合には、撮影枚数を極端に減らす機能がついています。したがって、カプセル内視鏡一個ですべての消化管は観察することはできません。大腸カプセル内視鏡を行って異常がなくても、上部消化管内視鏡検査は行わなくてもよいわけではありません。症状や病状にあわせて主治医の先生とよく相談するようにしましょう。