ピロリ菌を診断する方法には大きく内視鏡を使う方法と使わない方法があります。内視鏡を使うピロリ菌の診断方法には、大きく「迅速ウレアーゼ試験」、「鏡検法」および「培養法」の3つがあります。「迅速ウレアーゼ試験」は胃の組織を使ってピロリ菌が作り出すアンモニアによる反応の有無を試薬で調べます。「鏡検法」は組織中のピロリ菌の存在を顕微鏡で診断します。「培養法」は胃の組織を培養して、ピロリ菌が増えるかどうかを調べます。また、内視鏡を使わないピロリ菌の診断方法には、「尿素呼気試験」、血液や尿を用いた「抗体法」、「糞便中抗原測定」があります。
検査医が内視鏡検査を行い、観察中にピロリ菌が住んでいそうな胃粘膜と診断した際には上記のいずれかの検査を行い、ピロリ菌の確定診断をすることになります。では、「ピロリ菌のいない胃」と「ピロリ菌のいる胃」では内視鏡検査では一体何がどう違うのでしょうか。また、胃がんとどう関連するのでしょうか。
「ピロリ菌のいない胃」の粘膜は、表面は平滑で光沢や艶があり、粘液はさらさらとしており、水洗にて容易に粘液は除去できます。また、胃のひだは細く真直ぐに走行しているのが特徴です (図1a) 。すなわち、瑞々しい胃粘膜です。
一方、「ピロリ菌のいる胃」の粘膜は、全体的に赤くなり、粘液は白く濁って粘調性があり、胃のひだは太く蛇行していることもあります。ピロリ菌が長く感染していると、胃粘膜には萎縮(いしゅく)という変化を来たしてきます。すなわち、ピロリ菌による炎症が長く続くことで胃粘膜への障害が進行すると、胃酸を出す胃腺というものが徐々に減少し、胃粘膜が薄くぺらぺら (萎縮)になってしまいます。この状態を医学的に「萎縮性胃炎」と診断します。「萎縮性胃炎」になると、内視鏡検査では「ピロリ菌のいない胃」と対照的に胃の正常ひだがなくなり、粘膜の下にある血管が透けて見えるようになっているのが特徴です(図1b) 。
図1 ピロリ菌感染の有無と胃粘膜
さらに、萎縮が進行した胃粘膜では大腸や小腸の粘膜に似た「腸の粘膜」に置き換わり、粘膜の表面に凹凸が生じてきます。これを「腸上皮化生」(ちょうじょうひかせい)と呼びます。このような「萎縮性胃炎」→「腸上皮化生」という経過のなかで胃がんが発生すると言われています。そして、「萎縮性胃炎」が進行するにつれて胃がんの発生率が高くなることも統計上わかっています。よって、ピロリ菌の感染している慢性胃炎(ピロリ菌に感染している胃炎)の方には胃がん発生の予防目的にて除菌治療が現在保険適用となっています。