膵嚢胞とは膵臓の中にできる内部に水成分などを含んだ袋状のものを指します。
多くは無症状ですが、検診やドックなどで行われる腹部超音波検査、CT検査などの画質が以前より向上したために、偶然見つかることが非常に増えてきている病気です。
膵嚢胞には、炎症の結果によって出来たものや、腫瘍性のものまで様々な種類があります。放置してよいものから、手術を行うべきものまで、診断結果によって治療方針が大きく変わるため、各種検査を組み合わせて出来るだけ正確な診断を行う必要があります。
腫瘍性の膵嚢胞の中で、最も多いものが分枝型の膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal papillary mutinous neoplasm: IPMN)です。
膵臓のなかには膵管という膵液の通り道があり、幹に相当する「主膵管」から、枝に相当する「分枝膵管」が分かれています。主膵管から発生するのが主膵管型IPMN、分枝膵管から発生するのが分枝型IPMNです。
主膵管型IPMNは癌になる可能性が高いため手術が必要です。一方で、分枝型IPMNは癌になる可能性は2〜3%程度とされているため、多くの場合は定期的に経過をみていくことになります。
図1. 分枝型IPMNと主膵管型IPMN
膵嚢胞の検査は、CT検査、MRI検査、超音波内視鏡(EUS)を用いて行います。
超音波内視鏡(EUS)は、内視鏡の先端に超音波装置が付いており、胃や腸の壁を通して膵臓の観察が出来ます。
図2. ラジアル型EUS(画像提供:オリンパス株式会社) 図3. コンベックス型EUS(画像提供:オリンパス株式会社)
EUSは画像精度が他よりも高く、嚢胞内部の詳細な観察やわずかな変化を捉えることが出来ます。
CT検査やMRI検査は、嚢胞の大きさ、場所、大まかな形態をみるために行います。客観性があるため、時期をおいて行った画像を比較するのに適しています。
図4. 分枝型IPMN (左: MRI、右:EUS)
検査の方法は患者様の状態や施設の方針によって異なりますので、受診される医療機関でご相談ください。
帝京大学医学部附属 溝口病院 消化器内科
土井 晋平
(2019年7月30日掲載、2022年12月16日)