胆嚢ポリープとは、胆嚢の壁から胆嚢の内側に発生した隆起のことで、人間ドックなど(体外式)経腹超音波検査(AUS)を行った際に無症状で偶然見つかることが多いものです。胆嚢ポリープを調べるための内視鏡検査は、通常の上部内視鏡(”胃カメラ”)、下部内視鏡検査(“大腸カメラ”)と異なり、超音波内視鏡(EUS)を用います。超音波内視鏡とは、先端に超音波装置が装着された内視鏡(図1)のことです。この超音波内視鏡を、口から挿入し、胃や十二指腸まで進めて、胃あるいは十二指腸の壁を介して超音波検査を行います。体の外から行う経腹超音波検査と比較すると、超音波内視鏡検査では胆嚢により近づくことができるため、細かく観察することができる他に、経腹超音波検査では観察が難しいこともある、胆管なども同時に調べることもできます。
図1.超音波内視鏡(画像提供:オリンパス株式会社)
胆嚢ポリープの多くは、コレステロール・ポリープという良性のものです。コレステロール・ポリープの他には、良性の過形成ポリープもありますが、腺腫などの癌の前段階のポリープや胆嚢癌も胆嚢ポリープに含まれます。腹部超音波検査で胆嚢ポリープが見つかった場合、必ず超音波内視鏡検査が必要というわけではありません。ポリープの大きさ、形が重要になります。良性のコレステロール・ポリープの特徴は、超音波で高エコー(超音波で白く見えること)で、桑の実状をしていること、有茎性であること(図2)です。腹部超音波検査の結果が典型的なコレステロール・ポリープとは異なる場合には、超音波内視鏡検査など追加の検査が勧められます。胆嚢癌ではコレステロール・ポリープよりは低エコー(超音波で黒く見えること)であり、胆嚢壁に広く接しているという特徴があります(図3)。またポリープの大きさが10mmを越えるものも悪性の可能性があることから、精密検査が必要とされています。超音波内視鏡検査では、このようなポリープの大きさ・形態の評価を行うとともに、胆嚢の壁も同時に評価します。
図2.胆嚢コレステロール・ポリープ
超音波内視鏡検査(図2左)で、高エコーを呈する、有茎性ポリープを2個認める(矢印・矢頭)。桑の実状(矢印)を呈することが多い。造影CT検査(図2右)では、淡い隆起を認める(白丸)。
図3.胆嚢癌
超音波内視鏡検査(図3左)では、胆嚢の壁に広く接しており、低エコーの隆起(矢印)を認める。造影CT検査(図3右)では、コレステロール・ポリープよりも強く造影され、ポリープがはっきりと見える(白丸)。
胆嚢の壁が厚くなっている場合には癌の合併がないか慎重に判断する必要があります。悪性の可能性がある胆嚢ポリープでは、造影CT検査など他の画像検査を超音波内視鏡検査とあわせて行うこともあります。胃や大腸のポリープは内視鏡検査で生検あるいは切除することにより、病理検査で良性・悪性の診断を行うことが可能ですが、胆嚢ポリープは超音波内視鏡での生検あるいは切除を行うことは通常はできません。検査の結果を総合的に判断して、悪性が疑われる場合には、手術で胆嚢を摘出するかどうかを相談することになります。
東京大学医学部 光学医療診療部
中井 陽介
(2019年4月26日掲載、2022年12月16日更新)