膵臓は胃や大腸の背中側に位置するため直接観察が難しい臓器であり、小さな膵がんの画像診断は困難とされてきました。一方で、日本膵臓学会や国内の多施設共同研究の成績から、膵がんの大きさが1cm以内であれば、長期の生存が期待され、病気の経過について医学的な見通しが良好となることが報告されています。
しかし、大きさが1cm以内の患者さんは多くが無症状であり、血液検査での腫瘍マーカー(CEAやCA19-9など)の上昇も低率です。
一方、内視鏡の先端に超音波装置が装着された超音波内視鏡(EUS)(図2a,b)では、その割合が85%以上とされています。USなどで膵管拡張や膵のう胞を認めた場合は、腫瘤がなく無症状でも一度EUSを受けて頂くことをおすすめします。EUSで“腫瘤”が発見された場合、がんかどうかの確定診断にはEUSガイド下穿刺吸引法(EUS-FNA)が有効です。
大きさが1cm以内の膵がんであっても、がんがすでに膵管の周囲に広がる”浸潤性膵がん“が多く、さらに早期である”上皮内がん“(がんが膵管内のみに存在)の段階で診断することが理想です。上皮内がんでは、USやCTでの軽微な膵管拡張や膵のう胞が診断の手がかりとなる場合が多く、磁気共鳴胆管膵管造影(MRCP)やEUSを行った結果、主膵管または分枝膵管の一部に狭窄や拡張が高率に認められます。がんかどうかの診断には、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)を行い、所見に応じて膵管にチュ-ブを留置し、複数回の膵液細胞診を行うことが診断に有用とされています。
無症状でも、がん検診や人間ドックのUSなどで膵管の異常や膵のう胞などを指摘された場合は、かかりつけの先生にご相談頂くか、お近くのがん診療連携拠点病院などで膵臓に関する画像診断を受けることが早期診断に繋がります。
JA尾道総合病院 内視鏡センター
花田 敬士
(2018年7月4日掲載、2022年3月10日更新)