膵石は、ほとんどが慢性膵炎を背景として生じます。慢性膵炎の原因は約70%がアルコールで、他には自己免疫性や膵管の走行異常などがありますが、原因不明な特発性もあります。喫煙との関与も指摘されているので、膵石治療を行う際には禁酒および禁煙が大切です。
すべての膵石が内視鏡治療の適応となるわけではありません。基本的には腹痛や背部痛などの症状があり、膵臓の中を走行する主膵管という管の中にある膵石が内視鏡治療の適応となります。多発結石や鋳型にはまりこんでいる場合は内視鏡治療が困難な場合があり、外科的手術をした方が良いケースもあります。また,慢性膵炎により十二指腸や胆管が狭くなっていたり,膵癌を合併している場合では外科的手術となるケースがあります(図1)。
膵石に対する内視鏡治療では、まず十二指腸にスコープを挿入し、膵管の出口である主乳頭もしくは副乳頭からカニューレという管を挿入し、主膵管の走行と膵石の状態(位置・大きさ・個数など)を確認します。多くの膵石はそのままでは除去できないため、乳頭を切開もしくはバルーンカテーテルを用いて主膵管の出口を拡げます(図2)。
左画像:主乳頭
右画像:電気ナイフで膵管の出口を拡張
5mm以下の膵石であれば、バスケット鉗子という結石を把持する処置具で除去します(図3)。
図3 バスケット鉗子による膵石除去
バスケット鉗子で膵石を把持し除去
5mm以上の膵石では体外衝撃波破砕療法(ESWL)を用いて膵石を破砕し小さくした後に、バスケット鉗子で除去します。十二指腸に近い膵頭部にある膵石は取りやすいですが、末端(膵尾部)にある膵石は取るのが難しいです。ESWLを併用した場合、膵石の大きさや硬さにもよりますが、通常1回のESWLのみでの破砕は困難なことが多く、2週間前後の入院を何回か繰り返して行うことがあります(図4)。
図4 ESWLを併用した膵石治療
左画像:CTで膵臓の頭部に大きな膵石を認める
右画像:ESWLを併用した内視鏡的治療で膵石はほぼ消失
また、主膵管が狭くなっている場合は、ステントという細いチューブを主膵管の中に留置することがあります。ESWLを併用した内視鏡治療での結石除去成功率は50~70%くらいです。治療期間が長期になる可能性や治療効果が得られない場合では、外科的手術をお勧めするケースもあります。
膵石による膵液の流出障害は慢性膵炎を悪化させ、膵機能低下をきたす可能性があります。内視鏡治療が可能な膵石かどうかは個々のケースによって異なりますので、専門の医療機関とご相談ください。
東邦大学医療センター大森病院 消化器内科
岡野 直樹
(2018年3月9日掲載、2022年3月24日更新)