胆石には、胆嚢に存在する胆嚢結石70%~80%、肝臓から出て十二指腸までの胆管に存在する総胆管結石10%~20%、肝臓の中に存在する肝内結石約1%~4%と、その存在部位によって分類されます。
無症状胆嚢結石は、胆嚢壁肥厚などの腫瘍が疑われる所見がなければ経過観察、総胆管結石は発作を起こす頻度が高く(97%)、診断された場合は内視鏡等による治療が提案されます。肝内結石は、腫瘍の合併や胆管炎がなければ経過観察が一般的です。
胆石は、その組成によりコレステロールを主成分とするコレステロール結石、消化に関わるビリルビンを主成分とする色素石(ビリルビンカルシウム石、黒色石)に分類されます。コレステロール結石もカルシウムによる石灰化の程度・様相により純粋なコレステロール結石、石灰化を呈する混合石、混成石に分類されます。
CTは、X線の透過性(透り易さ)の違いにより、断層像(断面)を得る検査法です。X線を透し易い水(胆汁、胃液等)や脂肪は黒く、通しにくい骨(カルシウム)は白く、その中間的な肝臓・膵臓・筋肉等は灰色として表示されます。
一般的に純粋なコレステロール結石、色素石は黒く描出されるため、胆汁との区別が出来ず、診断できないとされています。CTでは見つけることが出来なかった第一の原因、CT陰性胆石の一つです(図1)。
図1:CT陰性結石例
MRI(MRCP)検査では、矢印部分に卵型の欠損部が認められ、胆管結石と考えられます。また、胆嚢内にも円形の欠損部が認められ、胆嚢結石と思われます。
しかしながら、CTでは、胆管が存在すると思われる矢印部分には何も描出されていません。胆嚢結石も同様です。
カルシウム含有量が0.8%を越えるとCTでも描出されるようになり診断が可能となります。コレステロール結石のCT陰性例は、石灰化が少ないため逆にウルソデオキシコール酸を服用し胆石を溶かす溶解療法の適応と言えます。
診断能のみから考えれば、胆嚢結石は腹部超音波検査で約98%は診断可能で、その簡便性から臨床で汎用されています。一方、腹部超音波検査の総胆管結石の診断能は25~75%と低く、約半分の症例は診断することができません。
これに対してMRI(MRCP)は、核磁気により水素Hの密度を測定して胆管、膵管像を描出する方法です。簡単に説明すると、水分を同定し、それを画像にします。上腹部で液体を有するのは胆汁、膵液、胃液等と血液ですが、移動する水分(血液)はコンピュータでキャンセルし、胃液もキャンセル剤を服用することで、胆道(胆管、胆嚢)、膵管像を造影剤を使用することなく描出することができ、胆管胆石、胆管癌、慢性膵炎、膵癌、膵管内乳頭粘液腫瘍などの診断に用いられています。一般に総胆管結石の診断能は約95%と高く、50%前後の診断率とされる腹部超音波検査と比較すると総胆管結石が疑われる症例に有用です。
しかしながら、CT、MRI(MRCP)をもってしても診断できない症例が存在します。CTでは見つけることが出来なかった第2の原因、それが小さな総胆管結石例です(図2)。
図2:症例2(超音波内視鏡検査(EUS)で診断、CT/MRI陰性結石例)
CT、MRI(MRCP)では、結石は捉えることが出来ていません。しかし、腹痛を繰り返し、胆道系酵素の変動を認めるため、超音波内視鏡検査(EUS)を施行したところ、小さな結石(矢印)が診断されました。
このため、入院の上、内視鏡的逆行性膵胆管造影検査法で結石を診断した後、十二指腸乳頭を切開して小さな結石(矢印)を採石して治療を行いました。
一般的に、大きさ3~4㎜以下の総胆管結石は、MRI(MRCP)でも診断は難しいとされ、CTでも石灰化がないと小さな結石の診断は難しいとされています。
腹痛を繰り返し、胆道系の酵素の上昇などの検査データの変化のある場合には、小さな結石を疑い、超音波内視鏡検査(EUS)での精査が有効な場合があります。
このような事実を基に、臨床医は目的別に腹部超音波検査、CT、MRI(MRCP)、超音波内視鏡検査(EUS)を使い分けて診断しています。
北里大学病院 内視鏡センター
木田 光広
(2019年3月26日掲載、2022年12月23日更新)