一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 Japan Gastroenterological Endoscopy Society

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3.2)大腸内視鏡検査と治療

Ⅰ. 大腸内視鏡検査

大腸内視鏡検査では、大腸(結腸と直腸)と小腸の一部を観察するために肛門から内視鏡を挿入し、これらの部位に発生したポリープやがん、炎症などを診断します。組織の一部をとって調べたり(生検)、ポリープや早期大腸がんを内視鏡的にポリープ切除術(ポリペクトミー)や内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などで切除することもできます。

a. 大腸内視鏡検査の受け方

  1. 事前検査

    検査を安全に行うために、全身状態を調べたり感染症の有無を知るために、採血検査やその他の検査を行う場合があります。
  2. 検査の前処置

    大腸の内視鏡検査を行うには、大腸の中を空にしなければなりません。検査の予約の際に渡される説明書に従って準備してください。施設によって下剤を自宅で服用していただく場合と、検査日に施設に行ってから服用していただく場合があります。
    検査前日の夕食は軽くする場合や決められた検査食を食べていただくことがあります。当日の朝食は絶食です。午後からの検査の場合は昼食も絶食です。

    例1. ニフレック®法(検査当日服用)
    例2. ラキソベロン®(検査前日就寝前服用)+ニフレック®法(検査当日服用)

    ただし、排便状態が十分ではないときには下剤の服用を追加したり、浣腸を追加することがあります。
  3. 検査当日の手順

    • 名前が呼ばれたら、指定された場所で検査着に着替えます。
    • 検査室へ移動したら、検査台の上で横になります。
    • 腸管の緊張を和らげる薬や鎮痛薬、鎮静薬を注射する場合があります。
    • おなかに力を入れず楽にしてください。検査時間は患者さんにより多少違いますが、およそ15分から1時間です。
    • 途中で体の向きを変えたり、おなかが圧迫されることがあります。
    • X線透視を用いて内視鏡の進み具合や腸の形の様子を確認することがあります。
    • 検査中に病変が疑われた時には色素を散布したり、特殊な光で観察したり、病変を拡大して観察することがあります。生検で組織を一部採取したり、ポリープを内視鏡的に切除して顕微鏡で調べる場合もあります。

図1 茎を有するポリープ

 

図2 側方発育型腫瘍

 

図3 インジゴカルミンによる色素内視鏡

 

図4 狭帯域光観察(Narrow band imaging)による拡大観察

 

  1. 検査後の行動、注意事項

    • おなかが張ってきますので、ガスをどんどん出してください。時間を追って楽になります。 
    • 最初、水を少しのみ、気分が悪くならなければ食事しても結構です。
    • 組織やポリープをとった方は、医師の指示により一定期間消化の良い食事をしてください。刺激物、脂っこいもの、アルコール類は避けてください。
    • 検査後、便に少量の血が混じることがあります。出血量が多くなかなか止まらない場合や、痛みが続く場合には担当部署(外来または検査室)へ至急連絡してください。
    • 組織やポリープをとった方は、医師の指示によりしばらく激しい運動をひかえていただきます。また、お風呂も長風呂を避け、シャワー程度が無難です。
    • 最終検査結果は後日となりますので、次回外来診察日をご確認ください。
    • 鎮痛薬や鎮静薬を使用された場合には、検査当日の車やバイク、自転車の運転は控えてください。

b. ポリープまたは早期大腸がんの内視鏡治療

  • 良性のポリープや、早期がんの中でも粘膜だけにとどまっているもの、粘膜下層へわずかに広がっているものが内視鏡治療の適応となります。
  • 方法はポリペクトミー、コールド・ポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、浸水下EMR(UEMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)にわけられ、病変の大きさや形によって方法を選択します。
  • ポリペクトミーは、茎のあるポリープに対して、輪の形のスネアを茎の部分でしめ、高周波電流を用いて切除します。
  • コールド・ポリペクトミーは小さなポリープに対して高周波電流を用いないで大きな鉗子やスネアでそのまま切除します。
  • UEMRは腸管のなかに生理食塩水をためて通常は局注しないでスネアでしめつけ、通電して切除します。
  • EMRは病変の根もとに生理食塩水などを局注して病変を浮きあがらせてから、スネアでしめつけ、通電して切除します。
  • ESDは大きな病変などにたいして根もとに局注して病変を盛り上げてから、ナイフを用いて病変の周囲の粘膜を切開し、その後に病変の下の粘膜下層にもぐって病変を少しずつ切り離していく方法です。手技に熟練を要し、時間もかかります。
    大きな病変のポリペクトミーやEMR、UEMR、ESDは入院が必要な場合があります。
● ポリペクトミー  
    
図5 ポリープにスネアをかけてしめつけ、通電して切除します

 

● 内視鏡的粘膜切除術(EMR)

 
    
図6 病変の下(粘膜下層)に局注して盛り上げ、病変周囲にスネアをかけてしめつけ、通電して切除します 

 

● 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

 
     
図7 側方発育型腫瘍 図8 病変の下(粘膜下層)に局注して盛り上げます
     

図9 周囲の粘膜をナイフで切開します

 

図10 粘膜下層にもぐりこんで剥離し、病変を切除します

 

c. 大腸内視鏡検査の偶発症

ごくまれに出血や穿孔などの偶発症を起すことがあります。また、下剤のために腹痛や出血、穿孔を起こすこともあります。出血がみられたり、腹痛を認めましたら、施設にすぐに連絡してください。入院や緊急の処置・手術が必要になることがあります。なお、大腸内視鏡検査および治療に伴う偶発症発生頻度は全国集計(2008年から2012年の5年間)で0.011%(9,091人に1名の割合)でした。

 

Ⅱ. 大腸カプセル内視鏡

  • 小腸カプセルは画像を撮影するレンズが1か所ですが、大腸用のカプセル内視鏡は画像を撮影するレンズが両方向に2か所あり、大きさは長さ31mm、幅11mmです。カプセルが進むスピードに合わせて、ゆっくり進む場合には両方向のレンズで1秒間に4枚撮影し、速く進む場合には35枚撮影し、腰に取り付けたレコーダーに記録します。これをあとでコンピューターで動画として解析します。ポリープのおよその大きさを計測することもできます。
  • 以前に大腸内視鏡検査の挿入が困難な患者さんやおなかの手術歴があり、挿入困難が予想される患者さん、慢性便秘症で大腸が長いと判断される患者さん、難治性の高血圧や慢性閉塞性肺疾患、心不全のある患者さん、高度肥満で糖尿病や高血圧症、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群のある患者さんが適応となります。
  • 組織の一部を採取したり、治療することはできません。
  • 消化管がとても狭い患者さんや、腸閉塞をきたしたことのある患者さん、おなかに放射線をあてたことのある患者さん、ペースメーカーのある患者さん,飲み込みに問題のある患者さん、妊婦さんなどは検査を施行できません。
     

図11 大腸カプセル(画像提供:メドトロニック株式会社)

 

図12 大腸カプセル(画像提供:メドトロニック株式会社)

 

 

図13 大腸ポリープ(画像提供:慶應義塾大学予防医療センター 細江直樹先生)

 

 

a. 大腸カプセル内視鏡検査の受け方(下剤ののみ方は施設によって異なります)

  • 検査前日の夕食は、午後9時までにすませます。それ以降の飲食は控えてください。水など水分の摂取は構いません。
  • 検査前日の午後9時に下剤をのんでいただきます。
  • 検査当日の食事は控えてください。水は結構です。
  • 朝、来院されましたら、まず下剤をのんでいただきます。
  • 2時間後におなかにセンサーを装着し、レコーダーを腰のベルトに固定します。
  • 水とともにカプセルを飲みます。
  • 施設によっては、消化管の動きをよくする薬や消化液の泡を取り除く薬などを服用していただくことがあります。
  • 1時間後にカプセルをはやくすすめるために、下剤を追加して飲んでいただきます。
  • さらに1~2時間後に下剤を追加して飲んでいただきます。
  • カプセルが排泄されましたら検査は終了です。
  • どうしても排泄されない場合には、下剤を追加したり、坐薬や浣腸をかけたり、自宅に持ち帰っていただき、次の日にもってきていただくこともあります。

b. 偶発症

まれに、消化管の狭いところを通過できないことがあります。下剤のために腹痛や出血、穿孔を起こすこともあります。

 

埼玉医科大学 消化管内科

今枝 博之

(2017年6月29日掲載、2024年3月29日更新)