上部消化管とは食道・胃・十二指腸を指し、口または鼻から内視鏡を挿入し、これらの部位を一連の検査で観察します。昔から「胃カメラ」と言われてきたものです。 経口内視鏡(口から入れる内視鏡)、経鼻内視鏡(鼻から入れる内視鏡)と特殊検査・治療(超音波内視鏡、内視鏡的切除術など)に分かれます。
検査を安全に行うために、全身状態の把握や感染症の有無について、採血、尿検査、心電図検査などを行う場合があります。
1)通常は前日の夕食後から検査終了まで絶食となります。それ以降の食事は控えてください。水などの水分摂取は構いません。
2)検査当日の食事(牛乳、ジュース、お茶なども)は控えてください。水のみは結構です。(降圧剤などの内服薬に関しては、事前に主治医に相談ください。)
3)当日の服装は身体を締め付けるものは避けてください。(和服、腹巻、ボディスーツ、ガードルなど)
4)お薬として脳梗塞、心疾患予防のため、血液をさらさらにする薬(抗血栓薬など)を内服している方でも、内視鏡検査を受けるだけ(観察だけ)の場合には基本的には休薬は必要ありません。休薬の可否に関しては主治医とご相談ください。
①前処置室でガスコン®(消泡剤:白い液体で胃をきれいにします)を飲みます。
②次にキシロカインビスカス®(のどの麻酔)を3-5分間、のどに溜めたのち、ゆっくり飲み込みます(施設によっては、吐き出すこともあります)。
③必要に応じて胃の運動を止める薬(ブスコパンやグルカゴンといった鎮痙剤など)、緊張を和らげる薬(鎮静剤など)を注射することがあります。
④検査室に移動したら、ベルトを緩め検査台の上で、左側を下にして横向きに寝ます。
⑤キシロカインスプレー®により、のどの麻酔を追加することもあります。
⑥マウスピースをくわえます。
⑦内視鏡が口より挿入され、検査が始まります。
⑧肩・首・のどの力を抜いてください。唾液は呑み込まずに口から外に出してください。げっぷはなるべく我慢してください。通常検査は5-10分前後で終了します。
①前処置室でガスコン®水(消泡剤:白い液体で胃をきれいにします)を飲みます。
②鼻の通過をよくする薬(プリビナ®など)を点鼻・噴霧します。
③鼻の中をキシロカイン®にて麻酔します。この方法は施設により異なり、スプレーを使用する方法と、スティックを使用する方法があります。
④キシロカインスプレー®・ビスカス®により、のど麻酔を追加することもあります。
⑤検査室に移動したら、ベルトを緩め検査台の上で、左側を下にして横向きに寝ます。
⑥細い内視鏡が鼻から挿入され、検査が始まります。
⑦肩・首・のどの力を抜いてください。げっぷはなるべく我慢してください。通常検査は、5-10分で終了します。
1)鎮痙剤・鎮静剤を使用した場合、その種類によっては検査当日検査後の車の運転を避けてください。
2)飲水、食事は各施設で指示をうけて(通常検査終了後1時間後より、経鼻内視鏡では30分から1時間後より)摂取してください。
3)組織やポリープをとった方は、当日の激しい運動はおやめください。またお風呂も長風呂を避け、シャワー程度がよいでしょう。さらに刺激のある食事、飲酒、コーヒーなどは2-3日なるべく避けてください。
4)色素内視鏡検査(インジゴカルミンなど)を受けた方は、便が青くなることがありますが心配要りません。
5)最終検査結果は後日となりますので、次回外来診察日を確認してください。
6)検査終了後、吐き気、腹痛、タール便(黒い便)が生じた場合には、各施設(クリニック、病院)の担当部署(内視鏡センター、外来など)に至急連絡してください。
上部消化管内視鏡検査の偶発症としてまれに、消化管出血、穿孔などが生じることがあります。入院や緊急の処置・手術が必要となることがあります。上部消化管内視鏡検査の偶発症割合は0.171%(日本消化器内視鏡学会誌 2017 年 59 巻 7 号 p. 1532-1536)と報告されています。
胸焼け、腹痛、食欲低下、貧血などの原因を調べるため、食道・胃・十二指腸に発生した潰瘍、炎症、腫瘍、ポリープなどを診断するために行います。その際組織検査(顕微鏡で細胞を確認する)のため病変の一部を摘み取ってくることがあります(生検といいます)。
最近細径内視鏡を用いた経鼻内視鏡検査(鼻から入れる内視鏡)が普及しています。検査中の嘔吐反射が少なく、楽な検査ですが、ポリープ切除などの内視鏡的な治療を原則として行いません。近年細径内視鏡のハイビジョン化により、画像は経口内視鏡とほぼ同等に改善されています。
内視鏡を用いてポリープやがんを切除する方法です。主に食道や胃に生じた早期癌に対して内視鏡を用いて切除を行う方法です。方法はポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)に分けられます。従来手術が必要だった早期癌も、身体に負担の少ない内視鏡治療により切除が可能となりました。ただし病変部の大きさ、深さ、癌の種類によって適応を厳密に決定してから行いますので担当医に相談してください。切除後は病変部に人工潰瘍が発生します。まれに出血や穿孔を伴うことがありますので、原則入院して行います。
内視鏡先端に超音波振動子を取り付け、食道・胃の中から超音波検査を行う方法です。原理は体外から行う超音波検査と同じです。食道や胃にできた潰瘍や腫瘍がどのくらいの深さまで浸潤しているか、またリンパ節などの周囲臓器の状態を診断するために行います(内視鏡的治療を行う前にも行います)。さらに超音波内視鏡を用いて腫瘍へ直接針を穿刺し、組織の一部を取ってくることもあります(EUS-FNA)。
東京医科大学 消化器内視鏡学
河合 隆
(2018年3月29日掲載、2020年11月17日更新)