胃ポリープは胃の内側に出っ張る病変に対し用いられますが、正確には胃粘膜の表面から発生する、腫瘍ではない良性の隆起性病変を指します。胃ポリープは主に、胃底腺ポリープ、過形成性ポリープ、そして特殊型(炎症性、症候性、家族性)の3つのタイプに分けられ、中でも頻繁に見られるのは胃底腺ポリープと過形成性ポリープです。胃底腺ポリープであるか、過形成性ポリープであるかは、内視鏡検査でのポリープの見た目や周りの粘膜の特徴から診断できることがほとんどです。
胃底腺ポリープは図1のように周囲の粘膜と同じような色調のポリープで、ヘリコバクター・ピロリ(以下、ピロリ菌)感染などによる炎症の影響のない胃粘膜に発生します。日本においてピロリ菌に感染している患者さんの率は低下していることから、今後も胃底腺ポリープと診断される患者さんは増加していくと考えられます。最近では胃底腺ポリープからのがんの発生が報告されており、ポリープのサイズが大きいことや、表面の凸凹が目立つことが、がんの発生を疑う指標と考えられていますが、その頻度は極めてまれであることから、経過観察で問題はなく、基本的には治療を要しません。
図1 胃底腺ポリープ |
過形成性ポリープは、主にピロリ菌感染による炎症を起こした胃粘膜に発生する、赤みの強いポリープです(図2)。ピロリ菌感染と関連が非常に強いポリープであることから、胃過形成性ポリープと診断された患者さんは、ピロリ菌感染の有無を確認することが望まれます。過形成性ポリープと診断されピロリ菌に感染している場合には、ピロリ菌を除菌することにより約80%の患者さんでポリープが小さくなる、あるいは、消えてなくなることが分かっています。10mm以上の大きさの過形成性ポリープからがんが発生する頻度は約2%といわれており、過形成性ポリープと診断された患者さんは1年に1度程度の内視鏡検査をおすすめします。ピロリ菌を除菌しても大きくなる、がんの発生が疑われる、貧血の原因になる、大きさが2cmを超えるなどの過形成性ポリープは内視鏡治療を検討することがあります。
図2 胃過形成性ポリープ |
胃ポリープと診断された患者さんは、ポリープのタイプ、経過観察の方法やその間隔、治療の必要性について主治医との相談を通じて確認することが望ましいと考えます。
東京女子医科大学 消化器内科
中村 真一
(2014年4月11日掲載)
東京慈恵会医科大学 内視鏡医学講座
玉井 尚人
(2024年3月25日更新)